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神代勇人は懇爛常態!  作者: 忍龍
腹の奥底(仮題)
83/144

04

「……城だべか?」


「んー……いや、強いて言うなら……強いて言うなら……」


「寝台列車でしょう」


「デカすぎだろ」



 途中船を乗り継ぎエレアス大陸で船を降りた一行は、大陸中央へ移動する為に乗り換えることになった


 港で下船手続きを済ませた勇人たちは、そのまま乗り換えの手続きまで済ませたが、ラドゥが指差した次に乗る予定の乗り物を見たレプスと勇人は反応が鈍い


 遠目に見るソレは、外観はレプスの言う通り城だった、より詳しく表現するなら城砦都市といった感じだろう

 そして機能としてはシリウスの言うことが正しい……否、含まれる、と言ったところか


 船が空を翔けるのに対し、城は地を駆ける


 物理的な規模は中規模の港程度、内部はその大半が倉庫の役割をなしているが一部は町になっており、酒場も宿泊施設も市場もギルドの窓口も備えているこれは大陸内を大国から大国へと列車のように決められた路を巡回する、大国と言ったがそれは国土の面積の話しではなく経済規模の話だ


 大半が倉庫という点でお察しだろうが、勿論 商人ギルドが国々と協賛で運営している

 船から降ろされた積荷の多くは この城砦都市に運び込まれ、盗賊対策に雇われた護衛たちに守られながら国家間を渡り、各所で荷の積み降ろしをしながら巡回するという

 つまり町の部分はこの護衛たちが主に利用することを想定して設けられている、当然のことながら有料で


 勿論、金を払えば一般人でも乗ることは可能だ、船に比べれば遥かに安いとはいえそれなりのお値段だが


 この城砦都市が移動する為の広大な道は普段は開放されており、普通の商人は商隊を組んでこの道を荷馬車で通る

 見通しの良いこの道はこちらを狙う敵の存在を素早く察知することにも適している為に、商隊は護衛を雇って幅広い路の真ん中を通っていく、勿論 通行料を払った上で


 そしてその通行料こそが空路でなく陸路を敷いた最大の理由だ


 乗船券やその他諸々を支払うとなると敷居はとんでもなく高いが、通行料だけなら遥かに安くなる、そしてその通行料を払うのは商人達だけではない

 船を利用するよりも遥かに多い数の人々が船と違って時を選ぶことも無く貴賎に関わらずこの路を利用するのだ、運用費は船と大差なくとも得られる利益には雲泥の差が在る


 まぁそんなこんなで世の中の世知辛さだとか汚さだとかそういったものを感じずにはいられない交通機関を利用する為に勇人たちは乗合馬車に乗り込み城砦都市へと向かう



「っつーかさ」


「うん?」


「道を利用してる人とか、あの城が通過する時ってどうすんだよ?」


「ああそれか、心配ない、アレは三階建ての建物程度の高さを保って上空を移動していくのだ」


「え、折角わざわざ道作ってんのに?」


「妨げになる樹木を排除していった結果に過ぎない、小さなものでも成長すればいずれ妨げになるからな、そういったものも総て抜かれる、道は いわば副産物というわけだ」


「へーえ」



 因みに言えば、浮いているのも賊の進入を防ぐことが目的の為だ

 ラドゥから説明を受けた勇人は何から何まで合理的にできてんだな、としみじみと感じる


 三時間程掛けて城砦都市に着いた一行は乗り込むと早速宿へと向かう

 ラドゥによって既に部屋は人数分(というか三部屋……)押さえてあり、支払いも済んでいて楽といえば楽だが、気は重く楽しい旅ではないことだけは確かだ


 部屋を確認すると、勇人はレプスたちに別行動を申し出る



「俺達は一度ギルドの窓口へ行くから、いつもの夕食の時間に落ち合おう」


「調べもんだすか?」


「うん、混み具合によってはどのくらい掛かるかわかんないからな、時間近くになったら調べられなくても見切りをつけるから、レプスたちは好きな場所で始めててくれ」


「はいだす!」



 居場所はシリウスがいればすぐに分かる為に探す手間もほとんど発生しないも同然だ


 窓口に向かった二人は早速ギルド証を提出し閲覧魔具の申請をするが、ギルド証を提出した後の反応は大体どこも同じだ、職員が盛大に脅え、他の順番待ちの客を差し置いて優先的に対応される


 取り敢えず可哀想な職員からはなるべく早く離れてやるしかないのでその後の対応もお約束という流れだ

 閲覧魔具を受け取った二人は部屋の隅の席を陣取って魔具を起動する



「……たった数時間でこれだけの流れがあったようですね」


「三時間でコレかぁ……」



 船でも下船前に一度確認していることを、二人はもう一度確認していた


 何を確認しているのかといえば、これから向かう目的地であるシャンガル国……ではなく、その周辺諸国について調べている

 ラドゥの故国であるシャンガル国は三つの国と隣接しており、そのうちの一つにきな臭い動きがみとめられていた


 ギルドに依頼された兵士や魔術士 回復術を扱える者の斡旋、武具防具、医療用品、偏った用途の魔具、食料は長期保存のきくようなものばかりを大量に発注している

 まるで隠す気などさらさらないと言わんばかりに、不自然な程に、あからさまに、わざとらしく



「さながら火薬庫だな」


「後は火種を待つのみ、といったところですね」


「……フラグはやめろ」


「先に立てたのは貴女でしょう」


「うぐぅ」

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