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神代勇人は懇爛常態!  作者: 忍龍
泥をまさぐる(仮題)
78/144

09

「……半年?」


「そうさ、核の分割自体はそんなに難しいこっちゃないよ、あたしにはね」


「ルフィーナの腕は俺が保証する、伯母はこの国一番の腕前だからな」


(どう見ても二十代なのにジジイのオバ……いやもういいや、見た目は当てになんないんだよな、うん、分かってる分かってる)



 勇人が(この家の食材を使って)用意した昼食を摂りながら、やっとのことで依頼の話しになる

 こういうタイプの人間に対して、ひと段落ついたら、などと遠慮していては駄目なんだな、と勇人は深く胸に刻む

 どうでもよさそうに見えてワリと重要な処世術である


 流石に昨日の午後に茶菓子を食べて以降何も口にしていないのが影響しているのか、二人はよく食べた



「腕を疑ってるわけじゃない、半年ってのはどういうこったっていう話だ」


「属性を付けるのにそんだけ必要なのさ、急ぐと折角の核が台無しになる、並みの腕なら年単位の時間が掛かるところだが、あたしならざっと半年ってところさね、半年経ったら受け取りに来な、港まで届けさせるから入国税も払う必要は無いよ、ナンだったら送り先を教えといてくれりゃあ国外でも送ってやるさね」


「入国税払う必要は無いって、仕上がりに不満があったら修正を要求しにまたここまで会いに来る羽目になんだろーが」


「言ってくれるじゃないかい、まぁそん時ァそん時だよ、あたしが港までなら出張してやってもいい」


「そりゃありがたくって涙が出るな、で、支払いは?」


「そらっとぼけるんじゃないよ」


「あぁ、月晶石だろ」


「分かってんじゃないか、成功報酬でいいよ、目玉程の大きさのもん、二つでどうだい」


「おいおい、そりゃ価値が吊り合わないんじゃないのか?」


「そこは織り込み済みさ、中身は空洞で、加えて魔力の蓄積が無い状態なら価値はより近くなる、あたしの方は分割して属性付けるだけじゃなく他にも色々付与する、なんだったら他にも仕事を請けてやってもいい、どうだい?」


「んー……、まぁいいだろ、ただしこっちも簡単には用意できないぞ、この月晶石も前もって用意しておいたものだからな」



 一晩経って手元に戻った月晶石を手の平の上で転がして見せながら勇人は嘘を混ぜ込む

 今すぐにでも(大分どころじゃなく歪な球体にはなるものの)この場に用意することは可能だが、そうほいほいと出せることが分かれば余計な欲を抱かせることになる


 形を指定してくるあたり半ばバレていると見て間違いないだろうが、相手も此方が温和しくお人好しを演じるとは思っていないだろう



「よし、商談成立だね、付いてきな」



 案内されたのは家に入ってすぐのどうみても本物の女にしか見えないすっぽんぽんの例のアレが搭載された作業台前だったが、先に部屋に入ったルフィーナが作業台上のヒトガタに首の辺りまで布を掛けてくれたお陰で勇人でも若干の気まずさを感じる程度で済む



「こいつの目玉を誂えたいのさ」



 そう言ってルフィーナは精巧なその顔面の瞼の下から眼球らしきものを抜き取った



「一応、仕様書と予定する加工なんかを書いた紙、あとこいつを一つ預けるから、この大きさで二つ、よろしく頼むよ」


「……等身大のお人形か、どっかのエロジジイにでも頼まれたのかよ」



 思わず疑いたくなるような美し過ぎる容姿だ、ルフィーナはふんと嘲るように口を開く



「その方が遥かにマシだろうね」


「へえ」



 愛玩人形の方がマシとは、余程ヒドイものを連想させられる



「天から遣わされる神子サマの依り代にするんだそうだよ、そんなもんに胸だの膣だの子宮だの要るのかねぇ、おお嫌だ嫌だ、反吐が出るさね」


「おーい待て待て待て、客の趣味趣向とか取引内容バラすのヤメロ、俺ら他人なんですけどあーあーあーきこえなーいなーんもきこえなーいあーあーあーッ!」



 シリウスの耳元で自分の耳を塞いであーあー喚く勇人とルフィーナを他人事のようにシリウスはスルーする

 どうせ喚く理由は、取引内容がどうこうではなく、ルフィーナの口から吐かれた生々しい単語の所為だろう



「愚痴ぐらい吐かせな」


「吐く内容くらい吟味しろよ!」


「そんなもん愚痴になるかい、何にも知らない他人だからこそ吐けるんだよ」


「鬱積が溜まってんのは分かるが流石にそれ以上はやめろルフィーナ」


「分ァってるよ全く、愚痴を聞くぐらいの度量も持ってないのかいこの男共ときたら」


「終りの見えて来ねぇ同じ愚痴を毎日毎日 際限なく聞いてられっか!」


「俺らとばっちりかよ!!」



 ルフィーナは一日でも早くさっさとこの胸糞の悪い仕事を終らせて酒でも飲んだくれてキレイさっぱり忘れ去り心も体もリフレッシュしたいのだ

 ……が、女から男に対してだってセクハラである


 いくら鬱積が溜まるからと言っても、一度や二度程度なら兎も角として誰だってエンドレスでは聞きたくなどないだろう

 長命種として人生経験が豊富過ぎる図太いヴェルグの心だって荒む、そりゃあもう荒む

 ソレ程にセクハラとはぎっとぎとのタールのような毒に塗れたナイフなのである


 セクハラ、ダメ、ゼッタイ。


 まぁ、兎にも角にも商談は成立だが、それにしても半年……、セラスヴァージュへ戻るだけで半年以上過ぎてしまう、戻るという選択肢は無い

 ……となると、妙に空いた期間ができてしまうわけだ、"ちょっとした旅行"くらいならできてしまえる程度の


 だが、どこかで時間を潰すにしても、少なくともこの国ではない

 魔女の国ということも難点だが、問題はそこではなく、あれこれといい様に使いっ走りにされかねない、ということだ

 だからといって恐らく他所へ行ったところでその半年が快適なものになるわけでもない、というか行く先が選べるかというと非常に怪しい



(あー……戻るか)


(……)



 返事は無いが圧力は返る、ぷにゅぷにゅぷにゅぷにゅ止まらない



(そろそろ腹括れよおまえはもー)


(……)



 ごりりと勇人の旋毛に不満が訴えられた

このヒトガタもいつ書けるか分からないネタから持ってきました

ネタだけは豊富にあるんです、なかなかカタチになりませんが……orz

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