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水害とストーリーについて、よろしければこちらをご覧下さい。
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この回ではありませんが、予約済みの回に関わっています。
正幸が鎖を伝って戻っていくのを最後まで見送った後、シリウスは植物を使い足場を固める
「さて、どうすっかね」
「色々と手はありますがね、漫画を参考に空飛ぶ植物を利用してもいいんですが」
「絶っ対やだ! その状態で空中戦とか酔う、無理、吐く、せめて足場が欲しい」
「我侭ですね」
「これ我侭か? なぁ我侭か?」
「見解の相違でしょう」
「相違ってお前……兎に角ソレ以外の方法っ、天井という名の床を作るとか、ここら一帯の植物をこの高さまで異常成長させて道を作るとか、でもなかったら地面を隆起させて山作ってトンネル作る、それとかあの繭珠を形成する環境一帯をこっちまで引き摺り寄せるとか……んー、自分で言っといて難だが」
「派手ですね」
「まぁどれもド派手な環境破壊だわな」
「後で戻すことも可能ですが、逃げた動物はそう簡単には戻ってきませんからね」
「環境問題にも優しい息子でお袋さん鼻が高いぞお」
「それ、哂うところどこですか」
「おい、何か字が違わないか?」
「正しいチョイスだと思いますが」
「……とりあえず、一番穏便且つ影響の少ないのでいこうや」
ぐったりと項垂れる勇人を放置して軽く頷いたシリウスは片腕に抱えていた勇人を持ち上げて右の肩を跨がせ、それに勇人は慌ててシリウスの頭を抱え込むように齧りつく
甲斐甲斐しい世話の結果たわわに実った二つの成果がシリウスの頭頂部にもっちりと覆い被さったが、そんなことは気にも留めないシリウスは空いた手の中でビキビキと植物を成長させ大きな竹製の弓を形成した
所謂ところの、和弓というやつだがシリウスの身長に合わせたのか長さは標準よりもある
「お前、弓なんか撃てんの?」
「それも間違いではありませんが正しくは撃つではなく引くんだそうです、引き方は動画サイトで見ました」
「え、スマホで?」
「パソコンで、通信量が多いと貴女怒るでしょう」
「そりゃ怒るぞ、ってかお前よく弓なんか造れたな」
以前造った鉄パイプくらいの分かり易い形状程度なら兎も角として、造形力の無いシリウスがどうやって弓を形成したかといえば、それは普段使う木製のジョッキと同じ原理だ
幸い、造形系統の発想力は底辺をブチ抜けるものの物覚えは非常に宜しいこの男は、動物などの動きがありじっとしていない系統の物でさえなければ、実物をじっくり手にとって只管に眺め記憶することで形成が可能になるのである(つまり写真などの三百六十度見回すことのできないものは無理というとこになる)
ただし私的見解を一切挟まず無心に見たままを遵守することが絶対であり、少しでも些細なこと(模様とか手触りとか食べられるかどうかなどの見れば分かるだろ云々)が気になったりすると芸術的に爆発するというデリケートな側面を持っていた(デリケートに土下座して謝れ)
「――! お前まさか」
「そのまさかです」
「吐けっ 幾らしたんだこのやろう!!」
「オーダーメイドで四捨五入して六十万ほどです」
会話の最中にも形成した弓に弦の役目にか蔓が張り、もう片方の手には同じく竹製の矢が形成される、鏃の部位は何かの種子のようで金属ではない
「おまっ、……?! 待て待て待て、俺は見たこと無いぞそんな目立つもん、どこにやったそれ」
「引いたら折れました」
「はぁぁあああぁぁぁあああああッッ?!」
「大丈夫です、この弓はこちらの変種の竹でできているのでわたしが軽く引いたくらいでは折れません」
「問題はソコじゃね・ぇ・よ!」
必要に駆られて高い買い物はするものの金銭感覚は庶民の勇人がシリウスの額をべちんべちんと叩いて発狂するも、そんなことは気にも掛けないシリウスは頭の中の手本を元に射形を整え矢を番え弓を引いた
ピゥッ と高い音をさせ蔓を振るわせた矢は誰がどう見ても人力とは思えない程の非常識な飛距離を披露し、浮島に中った鏃が爆ぜて発芽すると爆発的な成長を見せるソレは瞬く間に土台の浮島を凌駕するまでに巨大な大樹になると、その枝を鎖にまで伸ばして絡め取ってくる
「あの巨体ですから島が沈むかと思いましたが、そうでもありませんでしたね」
「はぁ……次からデカいモン買う時はちゃんと言えよ」
「善処します」
「くっそ、政治家みたいなこと言いやがって」
説教を聞き流しながらも勇人を肩から下ろし片腕に抱え直して枝を渡ったシリウスは次の浮島に再び矢を射て道を繋ぎ、道中襲ってくる生物を適当に狩りながら(威圧して寄り付かなくすることも可能ではあるのだが逃げたまま戻らないと生態系が崩れる可能性を考慮して威圧はしなかった)あっという間に繭珠の目前に迫っていく
「あー、スケールがデカ過ぎて眼が疲れる」
「見なければいいのでは」
「ぐ、……まぁそうなんだけどよ」
途中、体力が尽きて眠っていた勇人が次に目を覚ました時、目的地は既に目の前だった
繭珠を形成する水源の内の一つである浮島に生やした樹の上から眺めること暫し、シリウスが手の内に水棲植物を生やすとその茎をぷつりと切って勇人に銜えさせる
「ソレを無くすと息ができなくなります」
「ん」
言われた勇人が耳栓をしてしっかりと茎を銜えるが、弾力が強く、勇人では食い千切ることなどできそうもない
勇人が自身の首に齧り付いたのを確認したシリウスは同じく自分も茎を銜えると、枝から飛び降りて巻き上げられる水に飛び込んだ
水流に揉まれ、瞬く間に中心部に流れ着き、その核に触れた、瞬間
――二人は呑まれ、消え失せた




