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神代勇人は懇爛常態!  作者: 忍龍
選びし道行き
26/144

03

「これが、昨日までいたセラスヴァージュ、船は今この方向に進んでる、レッディアンダ大陸、ファルバ諸島、リリティグラ大陸と遠洋を大陸や島に沿うように航海しているんだそうだ」



 ファティニから購入した、大商人の間で重宝される高価だがその分詳しい地図をテーブルの上に広げ勇人が説明する



「探し物については覚えてるな?」


「はいだす」


「昨日、シリウスが調べた時点で、もしかしたらそういった物があるかもな……っていうのは無かった」


「な、ながったんだすか?!」



 いきなり暗雲が立ち込める

 レプスは不安になった、果たしてこの旅に終わりはあるのか、と――まだ始まって二日目だろ、という突っ込みは哀しいかな、存在しない



「まぁ上っ面の文面だけでの判断だけどな……そこで、だ、流石に闇雲に当ても無く探し回るなんて馬鹿らしい真似も出来ないしな、神頼みをしようと思う」


「か、かみだのみ?」



 せっがぐ船さ乗っだんにもう戻るんだすか? と困惑顔のレプスに対し 違う違うと勇人は手を振って否定する


 基本的に宗教に属するというのは神頼みの部分が大きい

 というか、運を天に任せるとか、何か悪いことがあっても「これは試練云々……」とか、死ぬ思いで苦労や努力した結果に得られたものなのに本人ではなく「神様のお陰だ」とか(ふざけんな)、ぶっちゃけると宗派によって多少の差異はあれどその多くが"総て神様の所為"という暴論で片付けたも同然な側面を多分に含んでいる


 だから勇人は宗教とは深いお付き合いをしたくない派だ


 まぁ叶わない現状は置いておくとして、神頼みというのはあくまでも比喩的な表現であり、実際には予知だとか予言だとか未来視とか、馴染みの言葉で言うと占いとかそういった女子が大好きな系統のアレである



「うらない……すでもらうんだすか?」


「うん、この船には残念ながら占い師は乗ってないみたいだから、どっか大き目のギルド窓口で紹介してもらおうと思ってるとこだ」



 この船の出張窓口で依頼を出してもいいが、占いというのは地球とは違い それなりに重い役目を担っていることが殆どだ


 占い師は占術師ギルドに所属してはいても、能力のある者の大半がお抱えになっており、例え高位でもフリーの術師はあまり期待できないことが多い

 ピンからキリまでが大き過ぎるのだ、わざわざ高位に限定して募集を掛けて来てもらっても……というところだろう


 そこで規模の大きい窓口で能力の確かな術師に繋ぎを取れる者を紹介してもらおうというのが第一の目的だ


 繋ぎを取れるような人物ならばお抱えである可能性が高く自由に出歩ける可能性も低い

 その為、此方から赴く必要が出てくるだろう、と予想したためだ


 規模の大きな窓口というのも、窓口の大きさが都市の大きさに比例する関係からで、そういった大きな都市には多くの金持ちが集まり、腕の良い占い師を抱えている家や組織もそれなりにあるだろうという考えから選んでいる

 人が多ければ多い程ギルドへの依頼も相応に増え、需要と供給は大きくなり、そして情報も自然と集まっていく



「探し物ば占える占い師さまを知っでるお人ば紹介すでもらうんだすな!」


「そういうこと、とりあえず明々後日くらいには次の大陸のレッディアンダで一番大きな港に寄港できるって話しだから、そこで繋ぎを付けられる占い師に当たれればいいんだが、運もあるしなぁ」




 占い師に頼めたとしても"運"というものの存在は避けられない

 良い占い師に当たるかどうかという点で既に運の良し悪しが関わってくるが、良い占い師に助言を貰ったとしてもその後に運の良し悪しが影響してくる


 幼いシリウスが、義母親の為に旅に出た時もそうだった

 求めるものの漠然とした方角すら分からない、占い師を必要とする多くの者が挙げる理由の一つだろう


 シリウスの場合、探し物の為の探し物がまず第一にあったが、第一の探し物を見つけた時点で義母親の様子を確かめる為に一度故郷に戻ったとき、本来の探し物を探す意義を失っている



「ま、とりあえずの予定が決まったところで、次にレプスに覚えてもらうことがある」


「お、わ、わだすがだすか?」


「そう、これだ」




 勇人が地図を畳んでひょいとシリウスに渡すと、受け取ったシリウスが代わりに別のものを取り出す



「それ……みしゃんがの」


「うん」


「え、こ、これをだすか?」



 色とりどりの糸の束と勇人の顔をレプスの視線は顔ごと挙動不審に行ったり来たりする



「お、おら、あの……」


「うん」


「ぶ、ぶぎようなんだす」


「ちょっとそそっかしいくらいだ」


「で、でも」


「大丈夫大丈夫、やってるうちに慣れてくるって」


「な、なれ、なれるだすか?」


「慣れる」



 女神さまに断言されると、何故だかその通りになると確信を得られるから不思議なものだ



「これを覚えてな、レプスの収入源の一つにする」


「え」


「糸と、ちょっとした宝石未満のくず石があれば、どこでだって作れる」


「お、おらのため……?」


「おう、早く金貯めないとな、それから料理」


「りょ、料理」


「さっきレプスは手伝えなくてって謝ってたろ? 次からしっかり手伝ってもらうからな、俺の料理と、レプスのお袋さんの料理を覚えて、余裕があったらセラスヴァージュ以外の郷土料理とかも覚えて、それで食堂を開いてもいい、何か他に色々出来ることがあれば臨機応変にいけるだろ?」


「は、はいだす!」


「よし、良い返事だ、これ、レプスの分の調理器具な」


「へ?」



 勇人垂涎の台所環境は、自宅の分と旅用のもの、そしてレプスの分が購入されていた

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