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神代勇人は懇爛常態!  作者: 忍龍
生まれ変われない(仮題)
140/144

03

「……まだ意識を保ってやがんのか、くそ、書き換えが終わるまでまだ時間が掛かるってのによぉっ」


「時間は、既に無意味です」


「なに?」


「おいっ、見ろ!」


「……ばっ、くそが!」



 敵が何を見て騒ぎ出したのか、勇人にも分かった

 シリウスの肌を埋め尽くさんとしていた紋様が、その侵食を静止し、動きが無くなっている

 だが、勇人はそんなことよりも、この身を襲う違和感に縫い止められたように、シリウスの顔を瞬きもせずに見続けていた



「大分身を切り崩して用意したようでしたが、総て無駄に終わりましたね、仲間も、命も、覚悟も」



 ぎり、と

 誰かの歯が軋む音が聞こえた



「たかだか一本、杭を穿ったところで、焼け石に水にすらなりません」


「……たかだか一本じゃねぇ……、ウルフィルアニム、エンナグガラ、ヴィッドヒュリム、ウィオスラフス、エリューファ、グラーヴァジェルム、ヒーリーユグナ、ヴァルグドゥガ、ルシャリャエアフ、レドゥファルスク、まだまだこんなもんじゃねぇ……」


「貴方方手作りの生き神たちですか、作り始めて大分経つようですが、それで"どうにか"なりましたか?」



 手作りの生き神、つまり、話を総合すると、この者達はシリウスを生き神に作り変えるのが目的だと推測できる

 殺すつもりで、という言葉を思い起こせば、恐らくそれは生きていなくても目的を達成することはできるのだろう



「……まだ数が足りねぇだけだ、もっと、もっと作りゃあ、必ずっ」


「おめでたいですね」


「なに?」


「おめでたいと言ったんです」



 瞬間、頭に血が登った男が得物を振り抜くが、ソレは粒子となって霧散する



「テメェに、何が、俺達の何が分かる、せめてこの生命を賭けて、親兄弟に報いてぇと思う俺らの、何が分かるってんだ!!」


「そんなもの、わたしの知ったことではありません」



 どんなに罵声を浴びせたところで、柳に吹き付ける風のように、この男には何にも影響を与えはしない

 ごりり、と また誰かが、歯を軋ませた



「貴方方曰く崇高な目的なぞ、何の意味も成しはしません、この世界は、その程度でどうにかなるような可愛らしいものではありません」


「いいや、なるさ、してみせるさ、じゃなきゃ、何のために仲間を犠牲にしてきたんだ」


「犠牲にしたのは仲間だけではないでしょう、貴方方が守りたかった家族のように、何の罪過も無い者達の命も犠牲にしたでしょう」


「必要なことだ!」


「何の意味もないことです、……いえ、もっと悪いでしょうね、自らせっせと悪化させているんですから」


「悪化だ? 陳腐な脅しはやめろ、そんな筈ァ無ぇ!」


「そうだぜっ、例え誰からの感謝も理解も無く、憎まれようが、蔑まれようが、俺たちのやってることはっ」


「最低の悪手です」


「でまかせを言うな!」


「そうだっ、大体俺たちが何をしようとしてるかなんて、どうしてテメェに分かるっ」


「でまかせ? いいえ、まさか、そんなことを言う事に、何の意味があるというのです、わたしが、貴方方がやりたい事を把握もせずに陽動させようとでも?」


「そうだ!」


「なるほど、では信じたくなるように色々と話しましょう」



 シリウスが話せば話す程に、勇人の違和感は強く、深くなっていく



「なんの前触れもなく、突然大地が割れ、熔岩の海に沈み、或いは山が迫り上がる、もしくは恵みを齎す筈の森が毒の霧を吐き出し続ける、谷に在った国が閉じた谷に押し潰される、突如大陸が浮き上がり凍りつく」


「「「?!」」」


「そう、みんな貴方方やその先祖の遠い故郷の話しです、この世界はあまりにも強い力を持つが故に歪み、突如襲う理不尽な天災によって呆気無く国はおろか大陸までもが一瞬で消滅する、そんな世界を安定させようと、貴方方は何百世代にも渡って力ある者を杭として大地に穿ち、世界に安寧を齎す為に荒ぶる力を縫い止めようと苦心している、当っていますか?」



 杭に成った者は、この星に縛り付けられ、死ぬことも出来ず、親しい者達を黄泉へと見送り続けることになる



「頭の……中を……っ」


「読むまでもありません、しかし浅墓ですね、そんなことをすればどうなるか、分かりきっているではありませんか」


「な……に……?」


「球体を余るほどの大きな布で覆い、鋲で留めたらどうなると思いますか?」



 それは当然、布が余る

 何の暗喩かと言えば、球体はこの星を、布は有り余る力を、そして鋲は杭と成った生き神を指していた


 布が余る、増やした鋲で留めても、布は余り、より偏って深い皺になる、つまり



「余った力は、どうなると思いますか?」


「…………っま、さか」


「皺寄せが行った先が、一体どうなると、思いますか?」


「そんなっ」



 あまりに布が偏れば鋲が抜ける程に皺は盛り上がり、鋲が抜ければ、布は元に戻る



「鋲が抜けた反動は、どうなると思いますか?」


「うそだ! うそをいうな!!」


「テメェは温和しく杭になってりゃいいんだ!」



 動揺が走り、己を支えようと口々に否定の言葉を喚き散らす

 自分たちの正しさを証明しようと、武器を構えた時だった



「お……まえ……だれだ?」


「おや? 気付いたんですか」



 勇人が恐る恐る口に出した疑問に、"誰か"が応える



「貴方に会うのは二度目ですか、"コレ"以来ですね、"魔導師"と名乗れば、分かりますか?」


「「「?!」」」



 コレ以来と言いつつ目元を拭う動作をした"魔導師"により、空気は凍りつく

 それは、シリウスが魔導師から眼を受肉させられた時の動作だった

魔導師が喋るのものっそいお久しぶりですね、いえ、このお話終わったらそっちへ戻る予定ではあるんです、すいません、ホントすいませんorz

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