表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神代勇人は懇爛常態!  作者: 忍龍
腐り堕ちる(仮題)
136/144

10

「……おまえ、なんだよその額、さっきまで……そんなモン、なかったろ」



 よろよろと起き上がったランヴェルドが、シリウスの額に第三の眼を見つけ驚愕に眼を見開く

 シリウスが眼を隠す為に使う術は、理の違う地球でも問題なく作用するように特別な構築がなされている、この程度の結界では問題が無かったが、今は術を行使する為のそもそもの力が削がれ、その第三の眼を顕わにしていた



「あにうえ……まさか……まさかっ」



 土の能力者の力を削ぐ……というのは、理論上は可能だが、あまり現実的ではない


 そもそも四元素の能力者とは何か

 一般人が思いつく限りでは、術を使う時に偏る適正のある方向性のことだろう

 魔術師が水の系統の術が得意だったり、或いは火の系統が得意であったり、認識としてはそんなものだ


 だが、能力者というのはそもそも術師とは違う、一般的な四元素の扱いに限っての話しではあるが力を振るうのに魔術の構築なぞ必要としない

 空気中に漂う魔素や木石に蓄積し魔力へと変質したそれらを灯油やガソリンに例えるなら、魔術師はそれを魔術という名のライターや火炎放射器を使って火を起こすのに対し、火の能力者は地球で言うところのパイロキネシス、発火能力を持つ超能力者という括りになる


 その燃料は空気中に漂う魔素や蓄積した魔力ではなく、別種のエネルギーだ


 火の無い処にも火の気が、水の無い処にも水の気が、風も、土も、四元素は目視できなくとも、環境に拠って多少の偏りがあろうとも、そこに存在する

 それらは世界を構築する基本的なものの一部、結界で隔離されようとも、結界の内にも存在するものだ


 そしてそれらは水源地や砂漠地など環境によって偏り、濃度が濃くなることによって極稀に意思を宿す

 その状態は俗にいう精霊という存在であり、彼らの多くは こうして発生する

 精霊との交信能力を持つ者は、そうした濃度や意思を感じ取れる者であり、四元素の能力者は濃度が希薄だろうが意思が無かろうが感じ取り、それを取り込むことの出来る者だ


 四元素は取り込むことで力として発散することが可能だが、内に留めることによって身体を保つことも可能になる

 故に、四元素の能力者は本来なら食事を摂る必要が無い


 火・水・風の能力者は環境によって大きく左右され能力を使った場合は優位な環境でなければ大抵消耗が激しいが、単に生活するだけならば問題なく身体を賄うことができ、対して土の能力者ならば常に共にある大地によってけっして飢えることは無い

 人が生活する為には大地が必要であり、それが無いということは滅多に無いからだ、強力な火の気を発する熔岩ですら、大地の根源となるものであり、個体差の優劣を踏まえても土の能力者には優位に働く

 だから土の能力者は消耗の激しい能力を使っても無尽蔵とも言える力を振るい続けることが出来る


 では何故食物を摂取するのかと言えば、それは"人"を保つためである


 人である行為をとらず元素を制限無く取り込み続ければ、ある者は人としての意識が元素に馴染み過ぎて拡散し、やがて肉体を残して消え去り

 さもなくば取り込んだ元素の濃度が上がり続けることにより、いずれ肉体を持った精霊に成り果てる


 そうなれば最後、個体によっては思考が精霊に傾き続け、人とはけして相容れなくなる、乖離が決定的なものになってしまえば、物の考え方が違い過ぎる為に人里で生活なぞできなくなるだろう


 シリウスがエルに食事を摂らずに済む方法を教えず、いざという時の為に髪を伸ばして魔力を蓄えるように言ったのは、その為だ

 四元素の能力者は、大きな傷を受けた時、無意識に元素を取り込み身体を修復する、それも本能でやってしまう為に、際限無く過剰な程に


 力として振るい発散させるのではなく、身体を保つ為に四元素を吸収する、人で在り続けたいのならば、これはなるべく避けなければいけない

 だからこそ、いざという時の為に、元素ではなく魔力を使えとシリウスは教えた


 その部分さえ気をつければ、力を振るい続けることのできる四元素の能力者、特に殆ど環境を選ぶ必要の無い土の能力者は常に強大な力を無尽蔵に振るい続けることができる


 四元素とは世界を構成する一要素であり、四元素の存在しない空間を作ることはこの地上に場所を定める限り、極めて難しいことだと、大概の者はそう思う


 ……だが、四元素を排除できなくとも、能力者を無力化することは理論上可能なのだ


 その方法が、どんなに非人道的で、机上の空論であり、実行に移すには現実的で無いとしても、確かに存在する


 自分たちが力を削がれる可能性、それを当然エルも教えられていた



「まさか、あにうえっ」


「穢れたいんですかエル、貴方では死にますよ」



 周囲を確認しようとした王太子に、シリウスは再び警告を発する


 実体無く常に流れている風の能力者には効かないが、それ以外の能力者、特に留まり続ける土の能力者には殊更良く効く方法がある


 四元素とは良くも悪くも無い、単に無垢なものだ、言わば人にとって必要不可欠な水と言えるだろう

 水はどんなに清く聖なるものであろうとも、飲む者が穢れたり咒われたりしていない限りは飲んだ者に対し喉を潤す以外に特にこれと言った影響を与えるものではない


 だが、汚水はどうだ?

 飲めば腹を壊し、最悪の場合は命すら危ぶませる


 つまり、四元素が穢された時、それを取り込む能力者は穢れ、力を殺がれ、……そして最悪の場合は死ぬ


 では、一体何をすれば四元素は穢れるのか




――それは凡そ現実的ではない、無慈悲な行いによって為される

というわけで吐血の理由は汚水……じゃなくて穢れを取り込んでまで横倒しになる砦や叩き付けられない為の蔦の維持だったり、王太子に力を使わせない為にシリウスが周囲を支配したためという


穢す方法は次回★

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ