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神代勇人は懇爛常態!  作者: 忍龍
積み上げる(仮題)
123/144

09

「レプス殿、どちらへ行かれるのですか?」


「ちょっぐら街さ行っでくるだす」


「街ですか、お一人では危ないですよ」


「心配ねぇべな、カミシロさまど一緒だすがら」


「ぇ……、兄上と姉上と?」


「んだなす」



 ……で。



「……なんでそんな格好?」


「母上が、危ないからちゃんとした格好をしなければいけない、と」


「ちゃんとした……格好」



 いつも通りシリウスに抱えられた勇人の視線は王太子の姿を頭からつま先までを何度も行ったり来たりする



「ちゃんとって言うか……(女装だろ)」


(女装ですね)



 紛うこと無く女装だった


 何故こんな格好をしているかと言えば、海より深いようで別に大して深くない理由がそれなりにあったりする

 まぁつまり、お忍びには変装だろ、……ということらしい


 一応、理屈は分かる

 王太子が城下へ出掛ける? 駄目だろ

 でも行きたい、レプス殿たちだけズルい! よろしいならば変装だ

 まてよ、国民に親しみやすさをアピールして顔バレしているんだから服装や髪色を変えたくらいじゃ駄目だろ……そうだ!


 そうだ! ……じゃ、ね・え・だ・ろ!



「あー……とりあえず、王妃さまが服を選んだんだな?」


「はい姉上」


「姉上じゃねーって」



 取り敢えずレプスの気不味そうな顔色からして、王子様が街へ出掛げるとかマズいべ、と考えた彼女が親に丸投げしたことだけは分かった

 レプスとしては許可が下りる筈がないと思っていたのだろう

 だが予想外にその許可が下りた、今まで色々と我慢してきた息子の数少ない稀少なおねだりである、同行者にシリウスがいることもあって国王夫妻に不安は無いのだろう、いいのかソレで


 兎も角、それでもせめて変装を、ということでこうなったのだろう

 やけに力の入った女装ぶりだが、いっそ哀しい程に似合っている

 カツラを押さえる為と思われるツバの広いレースとリボン付きの帽子を被り顎の下でちょうちょ結び

 輪郭と瞳の色を誤魔化すための赤い巻き毛がいい感じにマッチしており、性差を感じさせない十一歳の体はオレンジ系統色のドレスを上手く着こなしていた

 勿論、顔は母親似で化粧要らずの美形である、仕上がりは一見してただの可憐な美少女だ、逆にヤバいだろ



「あー……えっと、王妃さまはその姿を記録してたか?」


「はい姉上、花を持ったり笑顔になったりするように言った後、魔具を持って僕の周りをぐるぐる回っていました」


「そうか……(可哀想にポーズまで、今はまだ世間知らずだけど将来的に黒歴史確実な案件だろコレ……)えーと、その格好だとな、お前の正体は兎も角として、身代金目当てとかの誘拐の可能性は消えないんだ、記録がとってあるなら多分いいだろうから、もう一回 着替えよう、……な?」


「はい姉上」



 そんなわけで、急遽予備の着替えの中から何着か貸し出され庶民的な服装の王太子にクラスチェンジした

 しかし……



(なぜまた女装……)



 王太子をお見送りする侍女の報告を受けてか、勇人たちの部屋へ向かう一行に何故だか王妃も合流

 そしてレプスの着替えと勇人の着替えを引っ張りだして庶民風少女のコーディネートが完成していた


 勇人の服に至っては、男女どちらが着ても、まぁ無くは無いかな、というラインナップだったにも関わらず、王妃の組み合わせで完全に女物へと変貌しており、王太子にポーズを指定して魔具を持ちながら息子の周りをぐるぐる回る彼女の姿に何か執念のようなものを感じずにはいられない勇人である


 因みに国王は、貴族子女の時にはいたらしいが、庶民子女の時には外せない用があったらしく、王妃の撮影した映像を暫く無言で眺めていたらしい


 不安になった勇人は王妃が満足して去っていった後、王太子に両親からお小遣いを貰わなかったか聞いてみた



「はい姉上、二人から頂きました」


「んー……それは、置いていこうか」


「何故ですか姉上」


「それはな、庶民が持っているはずのない物だ、折角の変装も台無しになるし、狙われることになる」


「分かりました姉上」



 一応、金目の物だという認識は辛うじて持っていたらしく、服の下に隠されてはいたが、王太子の襟元から引き出されたチェーンには指輪が二つ通っていた

 総括ギルドは依頼料の円滑な遣り取りを兼ねて銀行業も行っているが、そこからギルド登録していない者向けに発行している指輪であり、クラスは地球で言うところのプラチナカードに相当する

 子供に持たせることを気にしてブラッククラスを避けたのだろうとは分かるが、気を使うところが違う


 そもそも庶民の子供は持つどころか知りもしない代物だ

 っていうか、庶民が出入りするような店じゃ、つ・か・え・ね・ぇ・よ!


 何故勇人がその指輪を知っているかと言えば、ギルド証が銀行カードの役割も含んでいる関係でシリウスは持っていないが、勇人は職員から地球で言うところの家族カードに相当する指輪の保有を勧められたことがあったからだ

 シリウスの情報書き換え申請の時、勇人にシリウスの口座の使用権を付与した所為だろう


 分かっていますよ、という職員の生暖かい営業スマイルが今も思い出されてぶん殴りたくなるが、まあ仕方ない



「取り敢えず、折角外に出るんだから実際に流通している通貨で買い物をする、けどお前は持っていないから、今から仕事を任命する」


「仕事ですか?」


「そうだ、お前の力試しでもある」



 力試しという言葉に、王太子はきりっと表情を変えると神妙に頷いて言葉を待った

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