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神代勇人は懇爛常態!  作者: 忍龍
積み上げる(仮題)
118/144

04

 眼が……今までよりも、よく、見えない


 見えるのは、一人の顔だけ、大叔父に瓜二つの、その顔だけ


 その傍には、他にも二人ほどいるのだが、ぼやけて、見えない


 もっと、気にしなきゃいけないことが、ある筈なのに、見えない


 ただ、……排除しなければ

 母を、守る、為に――あの男を


 気持ちのままに、男を目掛けて、力を振るう

 狙って、避けられる、狙って、避けられる、狙って、遮られる、遮られる、遮られる


 視界を、壁のようなもので塞がれる


 遮られる、退ける、遮られる、退ける、遮られる、邪魔、邪魔、邪魔



「眼玉に頼ってんな」


「仕方ありません、見たことが無かったんですから」


「どういう……ことだ」


「見たままです」



 勇人とシリウスの会話にラドゥが割り込むが要領を得ない


 シリウスが避ける動きに合わせて振れるラドゥの視界では、相変わらず土や岩がシリウスに向けられるが、不意にシリウスの……否 寧ろ、どちらかと言えば王太子の視界を遮るように土壁が現れ、次の瞬間には目の前の障害物を薙ぎ払うように岩や土によって土壁が退けられる


 岩土によるシリウスへの攻撃が王太子によるものだろう、ということは察したが、自らの攻撃を遮るように現れる土壁については、上手くその能力を操れない為のミスだと、ラドゥは最初は思っていた


 だが、その頻度が上がり、明確な意図を感じさせるように王太子の視界を遮るのを見れば、それが誰の意思によるものか、否応も無く察せられる



「……植物を操る能力者ではなかったのか」


「誰が何時 貴方にそんなことを言いました」



 確かに、ラドゥに対してシリウスは一度として自分が植物を操る能力者だとは言っていない、確実に、少なくとも彼の記憶では



「殿下は、何か、特別な能力者なのか」


「……体質のようなものです」


「体質」



 そんな表現で済むのか



「そんな軽い話しで済むものではないだろう」


「後で貴方の伯父夫婦に聞けばいいでしょう」



 ラドゥの伯父夫婦というと、シリウスの祖父母だが、遠回しな表現はまあ仕方ない

 シリウスは達観しているように見えるがまだまだ若輩者だ


 ラドゥの目の前では未だ攻防は続くが、どう見ても王太子が軽くあしらわれているようにしか見えない

 少なくとも、最初の暴挙は単なる脅しであり、現状こそがシリウスの目的であろうと思わせられるには充分だ



「……陛下は知っておられるのか」


「ええ」


「父上や伯父上たちは」


「知りません」



 国王が遅れてくるというのは時間が合わせられなかったからではなく、一人、何かが起こると知っている国王が挙動不審になり、それによって周囲の者に違和感を感じさせない為だ


 現状に持ち込む前に平時と違う空気に気付かれては、目的どころではない

 下手をすると、シリウスの暴挙に反応したアーディグレフとその弟ラウディル-ドによる徹底抗戦が開戦される可能性の方が高かった


 では二人にもどういうことをするつもりなのか事前に……とラドゥは一瞬考えはしたものの即座に否定する

 彼らは軍属であり、例え毛先程の勝ち目すら一切無かろうとも主の為に即座に命を捨てる覚悟で打って出る、勿論 自分だってそうだ

 いくら何らかの重要且つ重大な目的があるのだとしても、この状況に持ち込むまでのシリウスの暴挙は、予め知っていたとしても演技に乗ることが無いどころか絶対に看過できないだろう、間違いない

 だからこそ、シリウスが得物を手にした瞬間ラドゥを始め衛兵たちは一斉に斬り掛かった、直後に反撃を喰らったが……


 そこまで考えて、ふ、と気づく


 反撃を喰らい、臓腑を損傷した筈なのに、今はなんともない

 ……いつの間に癒やしたのか、恐らく他の者達も既に癒やされているのだろう

 そうなると先程見回した時に彼らの姿が見えなかったのも頷ける

 恐らくどこか別の場所へと移されたのだ、勿論 邪魔だから



「……時間切れですね」


「十分も保たなかったな」


「それも仕方ありません」



 時間切れというシリウスの言葉に反応し よくよく見てみると、王太子の息が上がり、明らかに体力の限界を表わしていた


 確かに、日頃寝台の上で生活している王太子が自分自身の体を動かすわけではないとは言え、ここまで抗ったのだから充分と言えるだろう


 それに、明らかに攻撃の意図を持たず誘うようにただ避け続けるだけのシリウスの様子から何かを悟ったのか、王妃の顔からは焦るようなものは消え失せ、思案気な眼差しが此方へと注がれている


 そして王太子本人も、体力の低下により頭に上っていた血が降りてきたようだ、美味いとも不味いとも言えないおかしなものを口にしたような、そんな顔をし始めた

 自分の意思に添って動いていた岩土に疑問を持ったのだろう、その動きが明らかに鈍りだす


 そろそろ潮時……と言ったところだろう


 シリウスが避けるのをやめ足を止めると、岩や土も力を失ったように地面に落ちる



「気は、済みましたか」



 問われたが、王太子には応えようが無かった

 何を言えばいいのか、どう考えればいいのか、状況を上手く飲み込めない、そんな顔で途方に暮れている



「ちちぅえは……ぼくのこょ、こりょすんら、にゃかったの?」


「誰が、何時、そんなことを言ったんです」



 言っていない、誰も、そんなことは

評価して下さった方々の中でID削除された方の痕跡が修正されたらしく一気に八人も……_| ̄|.......○ コロコロ....il||li(ヒギャァアア!)

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