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神代勇人は懇爛常態!  作者: 忍龍
ゆっくりと沈む(仮題)
106/144

06

 大公夫妻が一旦自室へ戻っている合間に、勇人たちは色々と準備をすることにした


 夫妻が戻ったのは、使用人たちに今夜は部屋に戻らないので先に就寝するように、と伝えることと、入浴を済ませ着替えを用意するためであり、勇人たちもその間に手早く入浴を済ませ準備に取り掛かる


 テーブルや椅子の類いを片付け、コの字型コーナー付きのローフロアソファを配置、そこへ更に大人数用の炬燵("こちらの通販"で購入した電源の要らない優れもの)、コーナーソファーを補強するように勇人が拘りに拘り抜いたクッション(人をダメにするやつ)を配備した



「んー……」



 爺と孫の体格を考えると少し狭い気がした勇人は、一度全部退かすと床に奮発したかなり大判の低反発ラグを敷き、その上に先程と同じように設置し直し、ローソファのコーナーをコの字から一辺倒してL字状にしてみる


 因みにこれらの作業は勇人指揮の元に総てシリウスがやらされた



「よし、寝落ち対策はこんなもんだろ」


「寝落ち前提ですか」


「後は酒と肴だな、夫人はノンアルコールのチューハイとかカクテルでいいだろ、大元帥は食前酒飲んでるのしか見たことねーけど、強いのか弱いのか分からんな、ラドゥは強かったようだがどうだろな」


「わたしは参考になりませんからね」



 そもそもシリウスはアルコール成分をすぐに分解してしまう、たった一口ですら致死域の酒を飲んでも水を飲んだのと同じ反応になり本人の言う通り参考にはならない


 まぁ本人に選ばせればいいだろう、とクーラーボックスを作り置きの氷で満たし、倉庫から取り出した日本酒や缶飲料を入れる


 あとは肴だが、酒がメインなのでお徳用のチョコや裂きイカだとか、チータラやナッツ類であるだとか、それ系のやっすいやつで構わないだろう

 因みに予め出してある酒も肴も大人数でパーティーですか? という量だが、在庫量について言うと倉庫内にはどこの災害時配布用救援物資の備蓄ですか? という感じであった

 直接 業者からの箱買い(勿論一箱程度では済まない)なので、お値段はわりとお安くなっている



「よし、……いや、……んー……でも飯食った後だし……んー……」


「胃薬なら出しますが」


「よし、じゃあ缶詰も奮発するか」



 缶詰も業者から箱が(以・下・省・略!)


 因みに缶詰も徳用菓子もこの世界では手に入らない為にレプスには出していないが、手作りの似たものは一緒に作っている

 では何故これらの嗜好品をわざわざ大公夫妻に出すのかと言えば、それは夫妻を安心させる為に他ならない、孫息子は生活面でも何不自由無く過ごしている、……と


 小手先の手だが、こういった物を今まで見たことがないであろう大公夫妻には効く筈だ

 日本で同じことをやると、自炊できない貧相な食生活の露呈に直結してしまうが……


 その後、無言に曝されるのも厳しいからプロジェクターでも設置して鉄板な長編映画でも流すかー、とか勇人のベクトルが目標から大分逸れ始め、シリウスとしては映画鑑賞会になっても別に構わなかった(というか寧ろ推奨する)為に止めることもせずに黙っていたのだが、散々設置場所を吟味したところで勇人が ふ と我に返ったことにより、プロジェクターが設置されることはなかった


 上下スウェットに半纏という、もろ部屋着姿の勇人が他に何か必要なものはないか、とシリウス(同様の装備)の前を冬眠前の熊の如くうろうろとしていると、そこへノックが水をさす



「あれ、思ったより早いな」


「軍人ですからね」


「それもそうか、はーい!」



 シリウスの静止が無いので、大人としてはダメな感じに確かめもせず無防備に勇人が扉を開けると、カートに衣装箱や木箱を積んだ夫妻がそこには待っていた



「遠慮なく御厚意に甘えさせていただきに参りました」


「中へどうぞ」


「邪魔する、これは我が領地のワインとチーズだ、受け取ってほしい」


「お心遣いありがとうございます、ではこれも今夜出させていただきますね」



 室内に招かれた夫妻は、室内で異様な存在感を放つ炬燵に眼が釘付けになっている



「まあ、……これは何かしら?」


「故郷のテーブルで炬燵といいます、これは冬仕様ですがこの城は石造りですから丁度いいかと、このラグとテーブル下の上掛けの間に足を入れて温まりながら食事を楽しんだりできるんですよ、酒を過ごして眠くなってもそのまま横になることも可能です」


「なるほど」


「斬新ですわね」



 但し、炬燵で寝ると鼻や喉が乾燥し風邪の要因になるので推奨はしない

 勇人の場合は勿論、加湿効果のある百均アイテムを配置しているが、こちらで購入した炬燵にはなんとスリープモードまでついており、その威力は体験済みである



「ですので、そちらに用意したお二人の寝室でナイトウェアに着替えて下さい、その間に先程いただいたチーズやワインを用意しますから」


「……なんだかわくわくするわ、子供の頃に還ったよう」


「あ、これをお二人にプレゼントします、俺とレプスの手作りですので作りは職人並とはいきませんが」


「まあ、ありがとうございます」



 受け取った布包にリボンの掛かったかなり大きなソレと衣装箱を持ち、夫妻は奥の部屋へと入っていく


 暫くの後、ゆったりとしたネグリジェに先程勇人がプレゼントした半纏を着た夫人が出てきて、次いで上着を脱いで着崩した軍服に同じく半纏を着たアーディグレフがそのすぐ後に出てくる

 大元帥がナイトウェアでないのは仕方がない、休暇とはいえいざという時には素早く現場に出なければならないからだ



「カミシロさんどうもありがとう、どちらもとても暖かいわ」



 一緒に入れてあったルームシューズをふみふみしながら夫人がふんわりと笑う



「洗い替え用まで気を使ってもらいすまない、手入れ方法や洗い方のメモは後で必ず使用人に渡しておく」


「お気に召していただけたようで良かったです」



 練習の為に大量に作った半纏やルームシューズが多少なりとも捌けて本当に良かった

勿論セーター、マフラー、ニット帽、靴下、腹巻き、毛糸のパンツも大量の在庫を完備しています

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