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神代勇人は懇爛常態!  作者: 忍龍
ゆっくりと沈む(仮題)
101/144

01

 場所は酒の品揃えに重きを置いた昼は大衆食堂 夜は酒場のありがちな店である、って言うかほぼ昼間っから酒場である、別に珍しくもなんともない全国チェーンしてそうなくらいに既視感を感じる一般的仕様の店である

 時間はもう、飲んだくれてべろんべろんのへべれけになって、ゲロまみれになっていようとも、しょーがねーな、という時間帯である

 レプスは、十代のうら若きお嬢さんをそんなところに連れていくなんて許しませんよ! という気品溢れるご夫人の有無を言わさぬ一喝によりおうち待機である

 もう既に連れてっちゃったことがあるとか口が裂けても言えません、ごめんなさい


 そんなところで勇人とシリウスはちょっと遅い晩御飯である


 わざわざそんなトコでしょっぺぇメシなんぞ食わんでも御貴族様の豪勢でお上品なメシがナンボでも食えるべ? と思うかもしれないが、まぁ理由あってのことだ


 別にマナーに気を使うとか、気が付いたらマナー教室みたいになってるだとか、上品なメシばっかだとジャンクなものが恋しくなるよね とか、やっぱ家庭料理が最強やろ? とか、ドレス? ナニソレオイシイノ? だとか、ダンスって何の役に立つんスかね? このステップで何か魔法でも発動しちゃうの? 隙丸出しで狙われ放題じゃね? それともこのステップは敵の攻撃を華麗に避けながら魔法を発動できちゃうアレでソレなナニなワケ? とか、主夫妻がゾンビになってしまった経緯を聞いたレンディオム家の使用人たちから、嬉しいやら哀しいやら感謝なんだか恨みなんだか如何ともし難いという最早本人たちにもどうしたらいいのか分からない、と言うような複雑な視線を向けられるだとかソレ系の理由からではない、断じて無い


 まぁそんな重要ではない話しは置いておくとして、だ


 彼らがわざわざこんな場所で食事をすることにしたのにはそれなりのワケというものがある、アレ? このくだり二度目じゃね? とか思うかもしれないが気にしてはならない


 国王が軍部を召集し、役者さながらにぶちまけてから数日を経た


 既に流れた噂がどのように変化したか、それを知る為に二人はこういった店で顔を晒しながら食事をする、という状況にある

 シリウスの"眼"と"耳"を以ってすれば、わざわざこんな場所に赴かなくとも情報を集めることは可能だ、……が

 勇人曰く、自分やシリウスの"顔"を知るものがいるかどうかを確かめる必要がある、と大公夫妻に熱弁を披露し外出に漕ぎ着けたというワケだ、顔が知られていたからって別に意味などないのだがナイフとフォークの食事が続くというのも辛い


 食事を少なめで済ませて、自室でこっそり自分の作った料理を……などとやろうとすると、普段の食事量を知っているラドゥから心配する声を聞いた夫人が更に心配するという悪循環

 なまじ勇人対応の食事をわざわざ用意してもらっている身としては、それを残すのもそれはそれで気が引けるという微妙な居心地の悪さにより、情報収集という名の息抜きに出た次第だ

 ちゃんと目的がある、現実逃避ではない、断じて



「やっぱさ、庶民には敷居が高すぎると思うんだよ俺は、お前はどうか知らんけどお・れ・は!」


「わたしも庶民育ちですが」



 血筋だけは生粋の貴族であるシリウスが言う

 流石、顔が良いのは仕様だと言い切るだけあって、貴族というものに対して何の価値も感じていない


 領民の税によって育ったわけでもないシリウスには、血は貴族であってもノブレス・オブリージュの柵も無いのだ

 ここで血を理由に義務を求める輩が現れたとするならば、その輩はとんでもない額の金を請求されることになる

 何の金かって、それはシリウスが大公家の嫡子として育った場合に消費されたであろう養育費や教育費、更には公費を、だ

 今まで使わなかった分を今ここで一括でよこせや、というわけである

 金を払えないものに発言権は無い


 豊満な胸の女を膝に抱えて飯を食わせてもらっているというけしからん状態の三つ眼の男に酔っ払い達がちらちらと羨ましそうに視線を向ける中、これ見よがしの雑談を交わしながら勇人たちの食事は続く


 既にシリウスが胃袋に収めた量は普段の倍以上になっており、まるで時間稼ぎの如く追加を頼み、依然として終わりは見えてこない

 彼らは待っているのだ


 レンディオム邸を出てそろそろ一時間、随分と待たせるな、と思い始めて更に二十分と言ったところか



(来ました)


(あいよ)



 カウンターに追加の料理を受け取りに立った勇人に、シリウスが念話で話し掛けた、直後



「これはこれは、魔女殿とその僕殿ではございませんか、まさかこのような鄙びた場所におられようとは思いもよりませんでしたよ」



 騎士の制服を纏った者達が狭い店内に次から次へと入り込んでくる

 居合わせた客達は一気に酔いが冷め、道を譲るかの如くテーブルをバリケードにする様にして後ろへと下がった


 この騎士たちは、ここ数日 王都貴族街のレンディオム邸を張り込んでいた者達であり、更に詳しく言うならば、レンディオム以外の大公家に連なる貴族の子弟である

百話超えると管理ページに二頁目が発生するんですね、びっくりしました(延々スクロールバーが伸びてくもんだと思ってましたYO!)

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