エピローグ
パチ……パチ、パチパチ________
……焚き火を囲む様に、カオル、アイラ、世壊しが座っていた。
「お前、なんであんな殴っても死なんねん」
「あ、すいません。多分、俺……私が、元『神の使い』だからだと思います」
「なにそれー、マジウケルー」
どれだけ殴られたのだろうか、世壊しの体は傷だらけになっていた。
「てゆーか、カオちー相手に1対1とか無謀すぎー」
「はい。身の程を知りました」
あの後、世壊しは能力を全て無効化され、為す術なくカオルにボコボコにされたのだ。
必死に抵抗を見せた世壊しが『必殺、幼児泣きわめきグルグル・パンチ』なる必殺技を繰り出したのだが、……お察しの通りです。
結局、一方的な暴力に世壊しが降参し、仕方ないので焚き火でも囲みながら彼の話を聞くことになったのだ。
「まーあれや、お前の言い分もわかるでー。けど、他人に迷惑掛けたらアカンやろッ」
「はい。その通りで」
「えー。それ、カオちーが言うー?」
…………。
アイラの水を差す一言に、その場の空気が凍りついた。
「そ、そもそも、私がこの世界に来なければ、朝比奈さんや池淵さんに迷惑を掛けなかった訳で……」
その状況を何故か、敵であった世壊しが取り持つという不思議な状態になっていた。
「ゴホンッ。まー元の世界に帰ったら、ちゃんと話し合いで解決するんやでー」
「はい」
「ほな、そろそろ行きや。私らも早くこの森を抜けんとアカンし」
「はい。それでは失礼しますッ」
「じゃねー『よっちん』」
立ち上がり、カオル達に頭を下げた世壊しは実体を夜に変化させると、スーッと闇夜の中に消えて行った。
彼が消えた後の森は、木々の隙間から時折星空が見える元の鬱蒼とした森に戻っていた。
…………。
「ほな、行くか」
カオルは魔導バイクを取り出し、それに跨った。
「えっとねー、多分明日の朝には街に着くよてー? かな?」
当たり前の様に魔導バイクのサイドカーに座ったアイラは、地図の様な物を広げて首を傾げた。
「テキトーに進んだら、どっか街に着くやろッ!」
「それもそーだね」
…………。
「アイラ、飴ちゃん」
魔導バイクの動力は運転手の『魔力』である。
世壊しとの戦闘で、魔力を殆ど使い果たしたカオルは当たり前の様にアイラに『魔力飴』を催促した。
「…………」
「ほな、行くでーッ」
ブウォンブウォンッ!
アイラから魔力飴を受け取ったカオルは、嬉しそうに魔力飴を咥えると魔導バイクのエンジンを入れ走り始めた。
「おいッ! これめっちゃ不味いヤツやんけッ!」
「ぷぷぷ。黙って運転してね〜」
魔導バイクのライトは、彼女達の行く道なき道を指し示す様に先を照らしていた。
***
え? 私ですか?
私はタダのナレーターですよ?
ん〜そうですね。強いて言うなら『観測者』ですかね。
…………。
それでは間も無く幕が上がります。
今後とも、彼女達の『花道』をごゆっくりとお楽しみ下さいませ。
《ボスキャラ大移動》企画 第7部
幕間劇の侵入者『脳筋乙女の異世界花道:番外編』
これにて、終焉です。
第8部は
【暁月夜 詩音】様の世界に世壊しが移動します。
URL: https://ncode.syosetu.com/n9059eh/
カオル達のお話は
本編【脳筋乙女の異世界花道】第125話「流浪人、道に迷う。」へ続きます。
URL: https://ncode.syosetu.com/n2224dw/125/
お付き合い、ありがとうございました!