4話〜探索〜
【聖者の森林】
そこは豊かな木々に溢れかえった自然の楽園、そこは動物達が暮らし果実が生い茂る場所。一見脅威はなさそうなその場所も、一度足を踏み入れるとこちらを敵と認識し姿を変えてくる。穏やかな森は人を襲う怪物が潜む場所となるのだ...
そこの一階層にエリアは足を踏み入れたのだった
「ここがダンジョン...見る限り木々の生い茂った森と変わらないな」
豊かな自然や流れる小川を見た彼の心は安心していた
なぜならここに来る前に聞かされていたダンジョンのことと言えば
(ダンジョン...そこは多くの人が夢を求め命を落としてきた場所じゃよ...)
なんて祖父は言っていたし
(ダンジョンのこと?聞きたい?行きたくなくなるかもよ?)
とかアー様も言っていたからである...しかし実際訪れてみて自分の目で見たエリアはその穏やかな様子に安堵している
「危険...か...まぁ用心するに越したことはないよな」
と呟きながらも奥へと進んでいくうちにここには様々なものがあることに気づく
〈クルシェの葉〉ダンジョンにのみ群生する植物の一つ、高い治癒効果を持ち煮詰めることによって冒険に必要な回復薬となる
〈繁茂の苔石〉大量の苔によって覆われている石。一見ただの石だが、この苔は鉱石にのみ繁殖するという性質があり、その苔を剥がすと中からは武具に使われる鉱石が現れる
その他にもこの場所でしか手に入らないというものは多くあるのだ
エリアは本でしか見たことないものばかりで玩具を与えられた子供のように無邪気にはしゃいでいる
「すごい...どれも実際見るのは初めてのものばかりだ...」
彼は心踊りながら採取を始める
そして一通り採取したエリアは腰を下ろし辺りを見渡すと危険と呼ばれるその場所は風の音に包まれていた
「やけに平和だな、モンスターは見当たらないし」
この時彼は一階層の中心地付近まで来ていた、それなのにモンスターと一度も遭遇していないのだそのことが気にかかったエリアはダンジョンから出ることを決めた。そう思った時、背後の草むらが揺れ始めた。そのことに気づいてダガーを抜き構えた
「......」
その草むら一点に意識を集中させる。すると草むらの中からは一匹のゴブリンが現れた
「グリーンゴブリンか...!」
先手を取るようにゴブリンに対して突撃していった。ゴブリンもそれに反応するように持っている棍棒を振りかざしてきた
「はあぁぁぁぁぁぁ!」
殴りかかってきたゴブリンの攻撃を避け脇腹をダガーで切り抜けた
グギャアァァァ、ゴブリンは悲鳴をあげながら倒れ、消滅した
「初めてにしては上手くいったな」
ダガーを収める。ゴブリンがいた場所には牙が落ちていた。ドロップアイテム、ダンジョンにいるモンスターを倒すと入手できる素材である。採取で手に入る物と組み合わせることで能力の高い武具を作ることができる
一概にドロップアイテムと言っても手に入れるには条件があり、あるものは一撃で心臓を突くことで手に入ったり、またあるものは魔法で倒したり、他にも眠らせたり、毒にしたりと様々な条件があるのだ。エリアはその牙を拾い入口の方へと戻っていく
「何か起こる前にここを出よう...」
つかつかと足を進めていくエリアの前にまた一匹のゴブリンが出てきた
「...赤いゴブリン...!?」
目の前にいるのは先程よりも大きく、角が長く、体が赤いゴブリンだった。本来ゴブリンとはグリーンゴブリンと呼ばれる種とブラックゴブリンと呼ばれる種しか存在しないはず。しかしエリアの前に現れたのは赤い個体だった。
ゴガアァァァァァ
ゴブリンの咆哮が森林に鳴り響いた。彼はその存在に驚きつつもダガーを構え距離をとる。敵の動きに合わせるように小刻みに足を動かす。そして先に動いたのはゴブリンだった。さきほどのゴブリンよりも俊敏に走ってくる
「早い!?」
避けようと思っていたが予想外の動きに攻撃をダガーで受け止めたが重い一撃がエリアを襲う
「ぐっ...!?」
もう一度打ち付けてこようとゴブリンは棍棒を振り上げたあの威力のをそう何発も受けていられない、そう思った彼は振りかざしてくる棍棒をかわし背後に回り込み背中に飛び乗った。ゴブリンは振り落とそうと暴れている。そこにダガーを首に突き立てる
「ここだ!」
うなじにダガーが刺さったゴブリンはその痛みに叫びをあげている、しかし傷が浅いのか振り落とされ木に叩きつけられてしまった。さらに追い打ちをかけるように棍棒の一撃が入った
「...っ!」
まともに打撃をくらい意識が飛びそうになった。ゴブリンはダガーが刺さっているにも関わらず戦意は高いままだ。近づいてくるゴブリンに対して距離を取ろうとするが足が動かない、このままじゃやばい、やられてしまう。そう思ったその瞬間
「炎槍弾!」
どこからか風を切る音と共に炎が飛んできた。ゴブリンは頭に直撃しふらついている。すると二人組の女性が茂みをかき分けて現れたのだった