2話〜冒険者に〜
「新しくギルドを建てたいのだけれど」
精霊の少女はずかずかと冒険者管理所に入っていきそう言い放った
「!...あなたは...」
受付の女性はその精霊の姿を見て驚きを隠せなかった
「なぜ『命選の精霊』であるあなたが...いえそれを聞くのはやめておきましょう、新しいギルドでしたね、ではこちらの書類に必要事項をご記入ください」
彼女は戸惑いながらも書類を差し出した
一緒に来ていたエリアは周囲のざわめきに動揺を隠せず彼は近くにいた屈強な体つきの冒険者の男性に尋ねた
「あ、あの...あの精霊って有名な精霊なんですか?」
すると男性はこう言った
「おまえ、知らないであの精霊と一緒にいるのか?冒険者の間であいつを知らない奴はいないぜ...」
「......」
「...あいつは『命選の精霊』って呼ばれているんだ。さすがにこれならお前も聞いたことあるだろ?」
「『命選の精霊』...あの25年前の緋色の神裁の...?」
緋色の神裁〜それは25年前に多くの神々が惨殺されたと言われるいわば悲劇そのもの。当時、神々は強大な力を持ちその1人1人が国を創り、滅ぼせるような力を持っていた。その神々が集まり飲み交わす(神祭)と呼ばれるその場所で神々の半分が消されたという、人々は神を殺せるものなんて神ぐらいしかいないと思っていた。しかし調べていくうちにそれが一人の精霊の手で行われたことであると判明したのだ。そして人々はその精霊を『命選の精霊』と呼ぶようになった
「あの子がその精霊なのか...」
告げられた事実にエリアは驚きとともに動揺を露わにしていた...
すると手続きを終えた精霊の少女が戻ってきた
「待たせたわね、さぁ帰るわよ」
彼女は笑いながらエリアの手を引き冒険者管理所を後にした
帰り道彼女はエリアに尋ねた
「エリア...と言ったわね、君は私の事を聞いたのでしょう?」
不意の言葉にエリアは返事ができなかった
「...まぁいいわ、君が聞いたことはすべて真実、緋色の神裁も私が引き起こしたこと」
「......」
「私が怖い?」
そこでエリアは口を開く
「あなたは...あなたはどうしてそんなことを?あなたを見ている限りそんなことをするようには!?」
そう言葉を荒らげてそう聞いた、それに対し精霊は
「ふむ...まぁ私が元凶なのは変わらない真実、君がどう思おうとね」
エリアは言葉を返すことが出来なかった
それを見かねた精霊はこう言った
「何はともあれ君は今日をもって冒険者になったのよ。君の憧れなのでしょう?明日からは君もダンジョンデビューよ?」
そうだ、僕は冒険者になったんだそのことは喜ぶべきことなんだと、そう思いそれ以上彼女を詮索することはやめることにした
そんな前向きに考える彼に一つの疑問が浮かんだ
「そういえば...あなたの名前はなんて言うんですか?」
僕は彼女とギルドを建てたのだが会ってから一度も名前を聞いていなかった
「私か?私の名はニアサス・アーウェルンクス、好きなように呼ぶといいわ」
「ニアサス・アーウェルンクス...じゃあ アー様...かなぁ?」
エリアは無意識に頭に浮かんだ呼び名を口にしたそれを聞いていたは彼女は
「アー様...か、ふふ、面白いわね。そう呼ぶといいわ」
アー様、そう呼ばれた彼女はどことなく嬉しそうに笑っていた
「エリア、ギルドは出来たわ。しかし私たちをどこを拠点にしようかしら?」
そうだ、たしかにギルドという「形式」は出来た。しかしそのギルドである拠点がないのだ。
「そうだな...あのクロノス神殿は?」
「あそこはダメね、あの神殿は住むにしては廃れ過ぎている」
「...となると新しい拠点となる場所を探さきゃいけないのか」
エリアは上げた案を即却下され考え込んだ
「まぁいいわ、明日にでも探せば。君も疲れているでしょう?今日はゆっくり休むといい」
そう言ったアーウェルンクスは神殿の方に帰って行こうとした
するとエリアは帰っていく彼女に向かって
「ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」
そう叫んだ、すると彼女は振り向かずに手を振る...エリアからは見えていないが振り向かない彼女の表情は嬉しそうだった