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「ダンジョン」と生きていく  作者: 春 シオン
2章【邂逅と王都】
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22話〜迷い森の主〜

勢いよく剣を振り下ろすリリーナ、その一撃は動く巨木に深く刺さり半分に引き裂いた。引き裂かれた巨木は勢いよく倒れ地鳴りを起こす


「なによ、手応えがまったくないわね」


あまりに呆気ない決着に残念そうなリリーナ。そのとき不思議な出来事が起きる、その巨木は割られた状態で起き上がり再び一つに戻ったのだ


[その程度じゃ我、キングトレントを倒すことはできんぞ!]


その巨木は自分のことをキングトレントと呼んでいるがその声は目の前でなく空から聞こえている、が戦闘に集中してそのことには誰も気づいていない


「くっついたわね...」


「恐ろしい生命力です...これじゃ斬撃で倒すのは無理そうですね...」


「最近斬撃効きにくいの多いわね!しょうがないからシーアに譲ってあげるわ、私じゃどうにもできないみたいだし」


「そんな横暴な...それなら時間を稼いでください。詠唱中にやられたら元も子もないですから、五分はお願いします。術式展開!」


「わかったわよ!」


リリーナは再び巨木に向かっていきシーアはその間に魔法陣を展開し魔法を組み立てていく。その一方でエリアと紫苑は周りの木々を倒していく。こちらは巨木と違い再生はしないようだ


「キングトレント...となるとこの木たちはトレントというとこかな...」


「それにしても数が多いですね!」


「この森全体が動いているかもしれないからね、どんどんくるよ!」


体を休ます暇もなく次々とトレントがなだれ込んでくる。二人はなんとか応戦するがその数の多さに疲労を隠せない


「この数...受けきれませんよ!」


「一掃できればいいんだけど僕はそんな芸当はできないし...紫苑さんはまとめて打ち倒せるような技とかあったりする?」


「私の流派は単体戦に重点を置いているので集団に相手になると...」


「となるとやっぱり一体ずつやるしかない...そうだ、あれを試してみるか」


エリアは自分の体に力を込める、しばらくすると魔力が体から溢れ出してきた。そしてイメージする、自分を覆い尽くす無限の炎を...エリアの体からは炎が揺らめき始めるがやはり前のような魔装(マジックスキン)にすることができない


「やはり無理か...」


「エリアさん、それは全身に炎を纏わせようとしているのですよね?なら腕だけならどうですか?こいつらから打撃を受けることはなさそうですし全身よりはイメージしやすいと思いますよ」


「腕だけか...やってみるよ」


紫苑に言われたとおりイメージを全身ではなく両腕のみに魔力をを集めていく、すると全身から揺らめいでいた炎が腕に集まっていき、腕のみ魔装(マジックスキン)状態にすることができた


「一部だけならできるみたい...でもこれならまとめていける!」


エリアは右の魔法剣に魔力を集中させる、すると剣が炎を吸い模様が少しずつ光っていく。しばらくすると剣についた模様が煌々と輝きを放っている。完全に力が溜まったところで剣を振り下げる


「焼き払え!煌炎王剣(レーヴァテイン)!」


振り下ろされた剣から灼熱の炎が放出される、その一撃は次々とトレントを飲み込んでいき一面を火の海にへと変える。飲み込まれたトレントは炎により燃え上がり炭と化し消滅していく。炎が消える頃には西側の森は消え去っている


「はぁ...はぁ...」


「すごい一撃...しかし体にかかる負担も相当みたいですね、今のエリアさんだとあまり使わない方が良いと思います...」


エリアは今の一撃で約半分の魔力を放出し、その反動で体の力が一気に抜け膝をついてしまう。トレントたちはそれを見ていたのか隙をついて大量にエリアの上に飛び乗ってくる


「ぐっ...!」


そのことに気づいた紫苑が助けに行こうとするがトレントの軍勢に阻まれて進むことが出来ない。その間エリアはだんだんと押しつぶされいく


「エリアさん!この...道を開けろ!」


「苦しい...だがこれはチャンスかもしれない、まとめて吹き飛ばしてやる!」


エリアは体全体に力を込めイメージを固めていく、再びその体には炎が揺らめき始めている。さらに力を込めると炎は激しく荒ぶり火花が出始める


「吹き飛べぇぇぇぇ!!」


エリアの叫びとともに大爆発が起こる。その爆発は乗っていたトレントだけでなく近くにいたトレントも巻き込んで吹き飛ばしていく。その一撃でトレントの五割を倒すことができたようだがエリアは全ての魔力を放出したため意識はあるが体を動かすことができない


「エリアさん!大丈夫ですか!?」


「なんとかね...でも体が動かないや...」


「よかった...エリアさんは休んでてください。私が雑魚をやります!」


紫苑は残っているトレントの一団に飛び込んでいく。その一方リリーナはキングトレントを何度も切り裂き続けるが再生するため疲れだけが溜まっていく


「いったいどれだけ再生するのよ...さすがに飽きてきたわよ!」


「待ってください...もう少し...」


(あの巨体を焼くには大きな...竜巻、そして周りのトレントも巻き込めるように風の力を加算、再生力を考慮して粉々にできるように...)


「姉様!離れてください!」


「任せたわよ!」


「術式複合[(フレイム)(ウィンド)竜巻(トルネード)(ブレード)]術式統合!揺蕩う炎獄より来たりし地獄の業火よ!全てを切り裂く力を纏え!踊れ!廻れ!野を駆ける風精よ!汝の力を持って今!吹き荒れる嵐となりて敵を撃て!風炎(ファイブラスティング)剛嵐刃撃(シュトローム)!」


シーアの足元に展開された魔法陣から無数の小さな竜巻が炎の刃を巻き込んでいき大きくなっていく。強烈な風が炎と竜巻の激しさに威力を重ねていき、その大きな竜巻はキングトレントを根から包み燃やしながら切り刻んでいる。さらに周りを吹き荒れる風に引きずり込まれてトレントたちも竜巻に巻き込まれていく


「なかなかえげつないことするわね」


「再生させず一掃するならこれが最適です」


しばらくして、吹き荒れていた竜巻の勢いが弱くなっていき消失した。キングトレントがいたところにはバラバラになった木炭が散らばっている。観察するも再生する様子はないようだ


「焼けて木炭になっちゃったわね」


「さすがにここまですれば...」


一息つく二人だったが突然地面が揺れ始めた。すると目の前の地面が盛り上がっていきそこから何かが生えてくる。それは先ほどの巨木よりもかなり大きな大樹であった。


「...どう思う?」


「再生というよりは新たに産まれたという感じでしょうか...この規模のが動くと私たち潰されるかもしれません...」


大樹の出方を見る二人、しかし動く気配はなくただ時間が流れていく


「これ普通の木じゃないの?」


「...そのようですね」


「てことはこれで終わったようね、エリア拾ってさっさとこの森を抜けましょう」


「そうですね...って森!?」



森という言葉を聞いて驚くシーア、リリーナにはさっぱりわけがわかっていないようだ。この森はさっき全ての木がトレントになり焼けて消失したはず、大樹が生えたときはその目でしっかり見たのだが、周りを見渡すと再び一面の樹海に戻っていたのだ


「私たちが気づかない早さで木が再生してる...!?」


そのことに気づいたシーアは急いでエリアたちのもとに行く


「エリアさん!」


「うん...僕も気づいたよ、この木々の再生の早さはてっきりあのキングトレントがやっているものだと思ってたけどあいつは焼けて再生していない。つまりもっと別の大きな力がこの現象を起こしているみたい...」


「なんにせよ襲ってこないなら今のうちに逃げちゃえばいいんじゃない?」


「逃げられればいいんだけど最初みたいにまた同じところに戻ってくるかもしれない、それにあの新しい大樹...嫌な予感がするんだ」


「そういえばあの木だけやけに大きいですね」


「見た感じ...五十メートルぐらいかしら」


四人は大樹を観察する。ほかの木と比べ圧倒的に存在感と威圧感が違う大樹、少し空いたところから見上げてもその大きさは一目瞭然だ。よく見ると上の方に魔法陣らしきものがいくつか展開されている


「魔法...誰か上にいるのでしょうか...」


「誰かいるならそいつがこの現象の犯人ってことよね?」


「もしいたならそいつが犯人だと思うけど...誰もいないこんな森に人が住んでいるとは思えないよ。もしかすると人じゃないなにかかもしれない...」


再び大樹を見るエリア、そのとき根本に入口らしきものを発見する。先程まではなかったのだが現れたということは上にいる何かが誘っているということだろうか...


「どうしますか?」


「普通に森を出られない以上行くしかないよ、上にいるのが何かわからないけど進む以外道がないみたいだからね」


「でも大丈夫でしょうか...?罠かもしれませんし...」


「それでも行かないと先に進めないみたいだからね、僕も休んで魔力は回復したみたいだし全員で行けばなんとかなるさ」


「何が来ようと私がなぎ倒してあげるわ!...斬撃効くやつわね」


進む決断をした四人は大樹の根本に空いた入口から入っていく。中には大きな螺旋階段があり中腹ぐらいまでは続いていそうだ。階段には手すりや灯篭がついており明らかに知恵のあるものが作ったものだと一目でわかった


「上にいるのはモンスターではなさそうだね」


「それならなんでこんな気味の悪いところに住んでるのかしら」


「ここが好きなのか隠れているか...そのどちらかでしょうか」


「どちらにしても森を使って人を襲わしているのですからまともな輩ではないでしょう」


四人は長い螺旋階段を上がっていく、一時間...二時間と時間をかけて少しずつ上に向かう。そして三時間が立つ頃だろうか、やっと階段の終わりが見えてきた


「さて...鬼が出るか蛇が出るか...」


階段を登り辺りを見渡すとそこには広い空間が広がっていてその部屋には銀色の鉱石がいたるところに転がっている


「これはミスリル...?」


エリアが足元にあるミスリルの欠片を拾ったとき部屋全体に大きな揺れが発生し、どこからか声が響いてくる

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