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「ダンジョン」と生きていく  作者: 春 シオン
2章【邂逅と王都】
22/65

21話〜道中〜

王都に向かうため街を出て二日目、シーアが倒れてしまったため一同は道中にある宿屋で一晩を過ごしていた。そして朝になり再びシーアが茹で上がって目を覚ましたところだ


「...ん、私はいったい...っ!?」


「よかった、やっと目を覚ました」


寝起きで再び倒れたためエリアが介抱していたようだ。今回のシーアはなんとか倒れるのをこらえているようだが顔は真っ赤だ


「は、はい...ご心配をおかけしました...」


「シーアが具合が悪かったらすぐ言うんだよ?」


「...わかりました」


「じゃあ僕は外で待っているから準備が出来たら来るんだよ」


そう言ってエリアは部屋をあとにする。


「...いつからこんなにエリアさんのことが...このままじゃまともに顔も見れない...いったいどうすれば...とりあえず心を落ち着かせてしっかり話できるぐらいには...」


シーアは心に平静を保とうと精神統一を試みる。一面のどこまでも続く海を想像する、波はなく、どこまでも穏やかな海だ


「...ふぅ、よし!」


なんとか心を穏やかにすることができたシーアは荷物を準備して外に出る。外には三人が待っている、リリーナは退屈な表情をしている


「遅いわよ、起きたのならすぐ来なさい」


「リリーナさん無茶言ったらだめですよ、シーアさんは倒れて寝ていたのですから。少しぐらいは勘弁してあげてください」


「だって昨日中に途中の街まで行くつもりだったのよ?大幅の予定変更よ、少しぐらいは愚痴らないとやってられないわ」


「すいません姉様...」


「...まぁちゃんと体調直して起きてきたから許してあげるわ、これからは倒れちゃダメよ?もし倒れたら置いていくからね」


「...善処します」


話を終え四人は旅を再開する。シーアはなんとか精神を落ち着かせているのでエリアの顔をみても倒れずにいるようだが相変わらず頬を赤くしている、不思議なのはこんなにわかりやすく顔に出ているのに三人とも一切気づかないことである。そんな様子で道を歩いていく


しばらく歩いていると道が二つに分かれているようだ


「分かれ道か、シーアどっちに行けばいいか覚えている?」


「すいません...あの街に行った時は無我夢中に走る姉様を追いかけるのに必死だったので細かい道は覚えていないんです...」


「リリーナは...覚えてないよね?」


「もちろん覚えてないわ!」


「なんでそんなに自信満々に言えるの...」


四人は足を止めてそれぞれの道を確認する。右は薄暗く鬱蒼と茂った森、左は崖に挟まれた明るい草原の道、どちらを選べば進むことが出来るのかを考える。そんな状態に紫苑はある提案をする


「とりあえず右に行きましょう」


雑な一言だった


「どうして右?」


「昔から爺様に言われていた言葉があるんです。困ったら右に行け!とりあえず右に行けばなんとかなる!と」


「大雑把な爺さんね」


「何を隠そう私も困った時に右に行くと何故か不思議と目的の場所についているのです!だからこの言葉は信じても大丈夫です!」


「とりあえず当てもないからその言葉を信じてみようか」


紫苑の言葉を頼りに右の道に入っていく、一歩足を踏み入れると木々が揺れ風が吹き荒れ始めた。このときの四人は後で知ることになる、この森が【人食いの樹林】と呼ばれる迷宮であることに


【人食いの樹林】

この場所は空を覆い尽くすほど大きな樹林で形成されている迷宮の一つ、広さこそは無いものの抜け出すのに膨大な苦労が必要になる。ここから生きて帰ったものは バケモノに仲間を食われた と口を揃えて言うのだが実際にそんな生き物に遭遇した人は一人もいない。ここに入った者は歩くど永遠に変わらない景色に感覚を狂わされるのだ


「それにしても大きな木だな、僕の何倍あるんだろう」


「小さいエリアと比べたらその辺りの木なんてみんな大きいわよ」


「...うるさいなぁ」


「それにしても暗いですね」


「見た感じ上にある樹木の葉が屋根になり光を遮っているようですね」


「前が見ずらいです...」


それもそのはず、ほとんどの光を遮られているため十メートル先がギリギリ見えないぐらいの暗さである。それに加えずっと変わらない木々の群生、自分がどれぐらい進んだのかもわからなくなる


「...皆さん、先程からなにかに見られています。この気配と視線は邪悪なものです、警戒してください」


「邪悪なもの...盗賊かなにかかな...」


背中を合わせ武器を構える四人、こちらを見る視線は数を増していく...そのとき全ての方向から何かが飛んできたのだ


「いったいなんなのよ!」


「わからないけど敵対されているみたいだね!」


「とりあえず全部撃ち落としますよ!」


エリア、リリーナ、紫苑は持っている剣で飛んでくるものを次々と撃ち落としていく。だが時間が経つにつれの数は増していき受けきれないほどになっている


「なによこれ!結構痛いんだけど!」


「これは...木の実?なぜこんなものが」


「油断すると危ないですよ!今は目の前のものを潰すことに集中してください!」


そうは言うもののしだいに押されていき落とすことも困難になる。そんな中シーアは魔力を杖に集中させている、溜めるほどに魔力は大きくなっていき準備が出来たところで呪文を唱える


反射(リフレクト)!」


四人の周りに白色のバリアが張られる。そのバリアに当たった木の実は飛んできた方に反射されていく、中から見ていてもすごい量の木の実が飛んできているのが伺える。反射された木の実は周りの木々や視線の感じる方に飛んでいく。やはり何かがいたのだろう、悲鳴をあげてその場を去っていったようだ


「今の声...何だったんだろう」


「森の先住民かなんかじゃないの?それで自分たちのナワバリに入ってきたから撃退しようとしてたとかじゃないかしら」


「それならまだいいんだけどなにか嫌な予感がするな」


「また襲われる前にここを出ましょう...」


「そうですね、いつ襲ってくるかわからない以上この森から抜けるのが得策ですね。一気に走り抜けましょう」


四人は走って森を抜けようとする。数分、数十分走り続けるが森を抜けることができない。それどころか同じところを回り続けているいるような感覚だ。一心不乱に走るがいっこうに出口が見つからない、そんなときシーアがあることに気づく


「この場所...さっきいた場所です...」


全員が立ち止まって辺りを見渡す、そこには先程飛んできていた木の実の残骸が落ちている。そのことに一行は驚きを隠せないようだ


「どういうことだ...!?」


「なんでさっきの場所に戻ってくるのよ!まっすぐ進んでたじゃない!」


「確かにおかしいですね...」


「あの...今気づいたんですけどこの森全体に魔法の力を感じます...それもとても大きくて強大なものです」


森全体を包み込む大きな魔力、だがその魔力がどこから発生しているのかはわからない。エリア達は自分たちに這い寄る違和感に気づき始めたようだ


「こんなことありえないと思うんだけどさ、この森自体が僕たちに敵対しているんじゃないかな?」


「それって...森が生きてるってこと?」


「あくまで可能性だよ、まっすぐ進んでいたはずなのにいつの間にか元の場所に戻ってきている。それに加えて森全体に魔力が漂っているんだよね、考えられなくはないよ」


「しかしそうとなるといったいどうすればいいでしょうか?モンスター相手なら倒せばいいのですが自然が相手となると...」


「そこなんだよね、相手の出方がわからない以上どう動けば...」


炎槍弾(ブラスト)!」


エリアの話を遮ってリリーナが目の前の大木に向かって炎槍弾(ブラスト)を放つ。着弾したところが爆発しメラメラと燃えている


「リリーナ!?僕たちの話聞いてた!?」


「まどろっこしいのは苦手だからね、よくわからないならまず一発かまして様子見すればいいわ!」


「姉様...流石にそれは...」


「どうなるやら...」


リリーナは強気にいるがほかの三人はその様子に呆れている。そのとき炎が広がっていたところにいきなり魔法陣が展開され炎が消えた


「これは魔法!?」


「そのようですね...しかしこれは誰かが唱えてるものではありませんね、やはり森全体に漂う魔力の影響でしょうか」


「二人とも呑気に話してる暇はなさそうですよ、なにか来ます!」


森全体に揺れが響き渡り四人は武器を出し警戒態勢を取る。揺れはしだいに大きくなっていき近づいてくる。何かが近づいてきていると思ったが衝撃の出来事が起こた。なんとさっきまで燃えていた目の前の木が地面から根を抜き出し動き出したのだ


「自然が敵って思ってたけどそう来る!?」


「さすがにこれには驚きますね...」


四人の目の前には十メートル越えの動く巨木、目の前で起こる想像を超えたできごとに唖然とした様子だ。さらにもっと驚くことが起きる、その木が声を出したのだ


[久しぶりの人間だ、皆の者!食事の時間だぞ!]


その号令とともに周りの木々も地面から這い出てくる。その数は数えられないぐらい、文字通り森自体が敵対している状態だ


「これはあれだね...わかりやすいピンチってやつかな...」


「そうかもしれませんね、相手の力量が分からないうえ数が数ですから...最初から本気でやった方がいいかもしれませんね」


「最初から全力で潰しに行けばいいなら楽勝よ!」


「そう言ってもあの感じ...周りの木々もある程度の力がありそうだし...それになんと言ってもあの巨木からすごい力を感じる」


エリアが危険を感じる巨木、周りの木々よりは一回り以上も大きい。そしてなんと言ってもその巨木が他の木々を操っているようだ


「とりあえずあの巨木に注意しながら周りの木々を減らしていこう」


「あの巨木最初にやっちゃダメ?」


「...死なないなら」


「上等よ!あんなやつ切り刻んで薪にしてやるんだから!」


「...シーア、リリーナの援護をお願い。紫苑さんは僕と周りを削っていくよ」


四人は動く木々との戦闘を開始する

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