1話〜出会い〜
「ねぇあなた、私のものにならない?」
不意に少女はそう言い放った、そういった少女は愛らしい笑みを浮かべている...しかしエリアはあまりに突然の出来事に唖然としていた
「私のものに...?一体君は誰なんだ...?」
そう少女に告げると少女は答えた
「そうね、私はあなた達の間では«精霊»と呼ばれる存在、君がずっと祈りを捧げていたものよ」
その少女は自分のことを精霊だと言う、たしかにその少女は人間と言うにはどことなく違って不思議な雰囲気が漂っている
そして呆気に取られていたエリアは尋ねた
「...その精霊である君がなぜ僕を?」
少年には精霊に目をかけられる覚えは全くない、そして精霊という存在も初めて見たぐらいだ
「そうね、理由なんてたいしたことじゃないわ、言うなればあなたがずっとこの神殿に祈りを捧げていたから、だからあなたに興味があるの、あなたは何を祈っていたの?」
話を聞く限り精霊の気まぐれのようにも聞こえるし戯れのようにも思える
「...身長」
「...え?」
「...身長を伸ばしたかったんだよ」
エリアは精霊に対し自分の祈りの理由を正直に答えた神に祈りを捧げれば身長が伸びるのではないか、と
「ふふ...あははははは」
理由を聞いた精霊の少女は小さな口を大きく開けて笑っている
「そんな...ふふ...ことをずっと...ふふふ...祈っていたなんて...」
精霊は笑いをこらえつつそう言った、たしかに人が聞けば笑われるようなことだ
「笑うことないだろ!僕だって本気で悩んでいるんだ!」
エリアは怒りが混ざった大きな声で言い放った
「...ねぇ、あなたはどうして大きくなりたいの?」
そう聞いてくる少女の声は真剣なものだった、それに対し自分も真摯に答えた
「...僕は自分に自信が無いんだ、この低い身長のせいで周りにバカにされそのせいで冒険者になるっていう憧れも叶えられないんだ...」
「そうね、あなたはたしかに小さいわ、だって私よりも小さいもの」
自分の思いに対して少女はそう答えた
「でも、そんなこと私は些細なことだと思うわ」
少女が続ける
「だって身長が低いことを馬鹿にしてくる人は確かにいると思うわ、でもこの世界で冒険者に憧れるのは皆同じことだしこの街にはギルドも多くあるはずよ。あなた自身がそのことをコンプレックスだと思い続けているから自信が出ないのよ、自分の憧れを叶えるためにそんなこと気にしなければいいのよ」
少女はズバズバと言い放つ、しかし間違っていないことに何も言い返すことはできない。
「じゃあ...僕に足りないものって...」
精霊は答える
「一握りの勇気...ってとこかしら、あなたは弱くはないわ、でも前に進むことを恐れているの、だから恐れず進むことを選ぶことね」
「そうか、そうだったんだね」
...精霊の言葉にエリアの中で何かが切り開けた
ずっと自分の足を引っ張っていたものがなくなっていた
「ありがとう、君のおかげで自分が変わりそうだよ、さっそく片っ端からギルドを当たってみるよ」
少年は喜々とした表情でそう言った
...そのとき少女はエリアを引き止める
「待ちなさい」
その言葉にエリアは足を止めた
「最初に言ったでしょう?私のものになりなさいと、ギルドを探しにく必要は無いわ、あなたと私で新しいギルドを作ればいいのよ」
そうだ、僕はこの少女に私のものになれ、と言われていたのだ
「あなたといれば楽しそうだもの逃がしはしないわよ」
少女はにこやかに笑っている...その可愛らしい笑顔にはどんな思いが秘められているのだろうか