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「ダンジョン」と生きていく  作者: 春 シオン
1章【始まりと冒険】
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14話〜猫神〜

煙が完全に晴れ、さっきまで子猫がいた場所には見たことのない女の子が座り込んでいた。全員が不思議そうにその子を眺めている。その子は黒髪で髪が短く、頭には猫耳、そして尻尾もついている


「あれ、この子はいったい...子猫はどこいったんですか?」


「この子がその子猫よ」


その言葉に驚くエリア、するとさっきまで子猫だった女の子が口を開く


「アーちゃんいきなりひどいニャ!」


「あら、この方が面白いでしょ?」


「それにしても〈強制魔法解除玉〉なんて使わなくてもいいにゃ!あれくらうと結構痛いし目眩もひどいのにゃ!前にも言ったにゃ!」


「そうだったかしら」


どうやら二人は知り合いのようだが、それを見ている四人はいきなりのことについていけてないようだ。


「アー様...これはいったい...?」


「紹介するわね、この子の名前はバステト。見ての通り、猫よ。この子は私の昔からのペットの一匹なのよ」


「ペットって言うにゃ!せめて友達って言うにゃ!...一応自己紹介しとくにゃ。私の名前はバステト、一応神をやってるにゃ」


神と知ってまた驚く一同、しかしリリーナはすぐにバステトに抱きついた


「可愛すぎると思ってたけどまさか神だったなんて、んーふさふさー」


「やめるにゃー!お前は力が強いから痛いのにゃー!」


人型になって逃げられないとわかったリリーナはバステトの頭を撫でる。バステトは逃れようとしているがその力に抜け出すことができない。それに加えさきほどの〈強制魔法解除玉〉の弊害でくらくらしているため力が入らず、じきに抜け出すことを諦めた


「その...バステト様はなぜ猫のフリをしてエリアさんのところに?」


「話せば長くなるにゃ...」


リリーナに撫でられながらも語り出す


「あれは三日前...四日前だったかにゃ?まぁその辺はいいとして私は天界で仕事に明け暮れる日々を送っていたのにゃ。そんなある日私はとあるミスをしてしまったのにゃ。周りのみんなは笑って許してくれたけどイシスっていう私の上司がずっとガミガミとそのミスのことを言ってくるのにゃ。お前は学習しないーとか上達がないーとかでずーっとグチグチ言われたのにゃ。それが三日続いたのにゃ。それで嫌になった私は魔法を使って猫の姿になりこの街に逃げてきたのにゃ。そしてどこかに匿って貰おうと街をぶらぶらしてたらなにやら落ち着く香りがしてにゃ、それがどこか探していて見つかったのがその少年だったのにゃ」


「僕?」


「そうにゃ。君は私が住んでいた場所と同じ匂いがするのにゃ、だからその匂いにつられて君の部屋に入り寝てしまったのにゃ。まぁそこからは君と今日一日行動を共にしているからその辺はわかるはずにゃ。...私はこのまままったりと暮らすはずだったのにゃ。でもそこにいるアーちゃんに見つかってしまったのにゃ。アーちゃんは面白いことが大好きだから真っ先に私の変身を解いてくると思ったにゃ...」


バステトが涙目でアーウェルンクスを見る。それを見ているアーウェルンクスはくすくす笑っている


「何事も面白いことがいいでしょう?ねぇエリア」


「はは...」


「で、このバスにゃんどうするの?このままここで飼うの?」


リリーナが撫でながらどうするか尋ねる。エリアとアーウェルンクスはいいんじゃないかと答え、シーアは仕方ないとしぶしぶ認めた。全員がわいわいしているところにクレールがやってくる


「お前らなに騒いで...ってなんでバステトがいるんだ?」


「おじさんお昼ぶりにゃ」


「昼ってお前もしかしてエリアの方に乗ってた猫か?まさかバステトだったとはな...うーんこりゃどうしたもんかな」


クレールが頭を抱える。


「クレールさんどうしたんですか?」


「バステトって言ったら天界でもいたずら好きのお転婆で有名なんだよ。こいつはいろんな所に現れては何かをしでかしてきたんだよ。まぁ最近は上司に捕まって真面目に働いてるって聞いてたんだけどな...まさか逃げてくるとは、んでこいつもここに住むのか?」


「話の流れ的にそうにゃ」


「まぁ住むのはいいんだけどよ、さすがにこれ以上無銭滞在が増えるとな...」


最初にアーウェルンクスは手伝うという名目でここを使う約束をしていたのだ。しかしアーウェルンクスは毎日どこかに行って手伝った試しがないのだ。そしてあろうことにアーウェルンクスはとんでもないことを言い出す


「じゃあこの猫に手伝いさせてもいいわよ。どうせこの猫も無銭滞在になるんだしそれぐらいさせてもいいわよ」


「にゃ!?」


当然バステトは驚く。それに対しアーウェルンクスはバステトを撫でながら微笑む


「いいわよね?」


「はいにゃ...」


その微笑みに半泣きでバステトは震えている。それを慰めるようにリリーナが撫で続けるが、いい加減嫌気がしたのかバステトは顔を引っ掻き脱出する。そのままエリアの服の袖を掴む


「まぁそういうことで明日から働いてもらおうか。服は...」


「私に任せて!取ってくるわ!」


食い気味にリリーナが話に割り込んできて自分の部屋に走っていく。数分後、リリーナは数着の服を持ってきた


「姉様...なんでそんな服持ってるんですか...」


「そんなことはいいの!さーバステトちゃーんお着替えしましょうねー」


「来るにゃ...こっちに来るにゃー!」


バステトは再びリリーナに捕まり奥の部屋に連れていかれる。それを見ていたエリアとシーアは笑うことしかできなかった。そこに一部始終を見ていた紫苑が話しかけてきた


「エリアさん達って変わっているんですね...」


「そんなことは...あるかもね...」


「一部の人たちのせいです...」


「...苦労しているんですね」


なんとなく意志が伝わりあった三人であった...




リリーナがバステトを連れて行って三十分後、奥から満面の笑みでリリーナが出てきた。それに遅れてバステトが後をついてくる。その服は黒と白のフリフリの服、いわゆるメイド服というやつだ


「どう?いいでしょ?」


「可愛いじゃない、似合ってるわよ」


「悪くねぇな、これなら店で働かしても大丈夫だな」


「でしょ!やっぱりこれにして正解だったわね」


三人は和気あいあいとメイド服姿のバステトを見て楽しんでいる。しかし見られることに恥ずかしくなったバステトはエリアの後ろに隠れる。その顔は恥ずかしさと遊ばれてる辛さで泣き顔になっていた。それを慰めるようにエリアは優しく頭を撫でる


「ぐすっ...あんまり私で遊ばないでほしいにゃ...ひっく...昔と違ってもういたずらしないからいいこなのにゃ...」


「姉様...アーウェルンクス様とクレール様も...そろそろこの子で遊ぶのはやめてあげてください、泣いてるじゃないですか...」


「やりすぎちゃったかな...」


「そうね、今日はこれぐらいにしとこうかしら」


「悪かったな...」


バステトはエリアに抱きつきすすり泣いている。


「もう大丈夫だよ、みんなもういじめないって」


「ほんとにゃ...ぐすっ...いじめないにゃ...?」


「姉様たちも反省したようですし大丈夫ですよ」


「ありがとにゃ...君たちは優しいにゃ...」


涙を拭うバステト


「これからもよろしくにゃ、ご主人!シーア!」


「ご、ご主人!?」


「そうにゃ、エリアは私のことを守ってくれるのにゃ、そして一応私の飼い主ってことになるのにゃ、だからご主人なのにゃ!」


「うーん...まぁいいか、よろしくね、バステト」


「とりあえず夜も遅いですしお風呂にでも行きましょうか」


「私水浴びは苦手だにゃ...」


「バステトちゃん一緒に入りましょ!」


また食い気味にリリーナが割り込んでくる


「お前とは絶対嫌にゃ!お前と一緒に行くぐらいなら死んでやるにゃ!」


「そんな...」


恐ろしくリリーナは嫌われてしまったらしい。あまりの嫌われようにリリーナはへこんでいる。


「私ご主人と一緒がいいにゃ」


「僕と一緒に入ってもいいけど...シーア、お願いしてもいいかな?」


「わかりました。バステト様、私と一緒に行きましょう」


「ご主人がそういうならそうするにゃ」


シーアはバステトの手を引いて大浴場に向かっていく。そしてエリアはへこんでいるリリーナを慰める


「リリーナ...明日謝っといたほうがいいよ...」


「そうね...」


そうしてエリアも男湯に向かっていく。この《月詠の泉は》は基本客が少ないのでほぼ貸切状態みたいなもの、どうやら今日も人はいないようだ。エリアは浴室に行き、体を流して湯船に浸かった


「今日はダンジョンにも行ってないのに疲れたな...」


エリアは昼まで寝てて買い物に行っただけだったけどダンジョンに行ったぐらいの疲れがあった。そして今日は出会いが二つ、東の国の剣士紫苑。そして猫の神様バステト。


「それにしても紫苑さん...綺麗で強い人だな」


「エリアはあの子が気になるの?」


なぜか当然のようにアーウェルンクスが隣に座っている


「アー様!?ここ男湯ですよ!?」


「細かいことは気にしないの、それよりもあの東の剣士が気になるの?」


「そうですね...あの不思議な剣術が」


「あれは東の国特有の剣術ね。あれはあの〈和刀〉を使うことによって使用できる剣術らしいわよ。つまり両手剣のあなたにはできない事ね。でもあの独特の動きは真似できると思うから習うのもいいかもしれないわよ?」


「そうですね、明日ダンジョンにでも誘ってみます」


「そういえば今日あなたが買ってきた剣があるでしょ?あの形と刻まれた模様、あれは〈魔法剣〉って呼ばれるものらしいわよ」


「〈魔法剣〉...ですか?いったいどういうものなんですか」


「あの剣は...」


アーウェルンクスが説明しようとしたそのとき男湯の扉が勢いよく開けられ誰かが入ってきた。あの黒髪に猫耳...バステトであった


「ご主人助けて!怖い女に襲われるにゃ!」


「怖い女...?誰のこと...」


そしてなぜかリリーナが扉を蹴破って入ってくる


「バステトちゃん待って!謝りたいだけだからー!」


「にゃー!?来るにゃー!」


二人を追いかけるようにシーアも遅れて入ってくる


「すいません二人が...って!なんでアーウェルンクス様もいるんですか!?ここ男湯ですよ...やっぱりエリアさんを狙って!?」


また杖を構え始めるシーア、そして対して構えをとるアーウェルンクス、今日も二人の魔法の打ち合いが始まってしまった...


「はは...ははは...」


もう手をつけられない状況にエリアは立ち尽くして笑うことしかできなかった。

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