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「ダンジョン」と生きていく  作者: 春 シオン
1章【始まりと冒険】
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13話〜ショッピング〜

昨日の風呂場での騒動の翌日、エリアは今日も疲れが抜けきらずぐっすり眠っていた。気づけばもう日も真上に登るような時間になっている。そんなエリアの上になにやら小さなものが乗っている。自分の上にある何かの重みに眠りは浅くなり、眠い目を擦りながらそれが何かを確認する


「にゃー」


そこにいたのは真っ白な一匹の子猫だった。なぜ僕の部屋に猫が?と思いつつも擦り寄ってくる子猫の頭を優しく撫でる。その子猫は嬉しかったのかエリアの肩に飛び乗ってきた


「それにしてもどこから入ってきたんだろう」


そんなことを考えながら自分の部屋を出て食堂の方に向かっていく。子猫もしっかりと肩に捕まっている。食堂にはなにやら大量の道具があり、その山の真ん中の方にクレールがいた


「何やってるんですか?」


「おう、今日は遅いお目覚めだな。今は魔法道具を作ってるとこだ。お前もやってみるか?意外と楽しいぞ...ってなんで肩に猫乗せてんだ?」


「起きたらこの子がいて懐かれちゃったみたく肩に乗って下りないんですよ。クレールさんここで飼ったらだめですかね?」


「いいぜ。可愛いお客さんが増えるのは大歓迎だしな」


「ありがとうございます!」


飼う許可を貰うことができたエリアは子猫を高く持ち上げて微笑む。そして今日は冒険に必要な物資と猫のための備品を買うために街に買い物に行くのだった。シーアとリリーナも誘おうと思ったのだが寝ているあいだにダンジョンの方に行ってしまったらしい。なので今日はエリア一人...ではなく子猫と一緒に買い物に出かけた


「まずは武具屋かな...」


最初にエリアが向かったのは武具屋、クレールに修理を頼んだダガーだがその修理に予想外に苦戦しているらしく、直るまでの間代わりの武器が必要になったのだ。《月詠の泉》で買ってもよかったのだがさすが神の作った一振りだけあってその値段は恐ろしいものばかりだった。エリアは大通りにある武具屋を見つけ入っていく。そこはさすが大通りに並ぶ店、初心者用から上級者用まで多くの装備が販売されていた


「すごいや...」


入口から奥まで壁一面の武器や防具が並んでいる。この中から目的のものを探すのは大変だと思い、なにか目印になるものがないかと探していると一人の男性店員が声をかけてきた


「なにをお探しですか?」


「えっと、両手用の小型剣を探してるんですけど...」


「それなら二階、右側の奥の方にあります」


教えてもらったとおり二階右側の奥に行くとそこには両手用の武器が沢山並んでいた。シックル、ダガー、レイピアと目を引くものがたくさんあったがその中で特にエリアが魅入られたものがあった


「不思議な模様の剣だ...」


ナイフにも見えるその剣には不規則な溝が彫られており、輝く刀身が美しく思える両手剣だ。一目で気にいったエリアはその剣を購入することにした


「こちらは銀貨三枚になります」


「三枚?そんなに安いの?」


「こちらは買われてく人はときどきいるんですがどの方も使いにくいと返品していく人ばかりで...あ、こちらはちゃんと新品になっておりますよ」


「そうなんだ...ありがとう」


「またのお越しを」


エリアは代金を払って店の外に出てくる。


「それにしても不思議な模様だな...」


その剣を陽の光に当てるとまばゆく輝いている。角度を変えると不規則な溝に光が入り乱反射している。あまり街中で出しとくのもダメだと思いその剣を腰の鞘に収める。


次にエリアが向かったのは道具屋、まだ怪我が多い自分には回復アイテムが必要だろうと思ったのだ。道具屋は武具やから歩いて数十メートルの場所にある。こちらもまた立派な建物だ。いざ中に入ろうとした時、何やら店の中が騒ぎが起こっていることに気づく。エリアは中に入り入口付近にいた男性に話を聞く


「あの...いったいどうしたんですか?」


「俺も来たばっかりで詳しくわかんないけどよ、どうやら女の子がガラの悪い連中に絡まれてるみたいなんだよ」


そう言われてエリアは人混みを掻き分け前に進んでいく。すると目つきの悪い男性三人組が一人の女の子に絡んでいるようだ


「だからよぉ、それは俺達が欲しいと言ってるんだからさっさと渡しちまえばいいんだよ!」


「それはあまりに横暴です!これは私が先に見つけたもの、だからあなた方に渡す理由なんてございません!ほかを当たってください!」


その女の子は長い黒い髪を一つ縛りにしていてフリフリの服...あれは東の国の着物という服だろうか。腰には長い刀を帯刀している


「このガキ...おいお前ら!こいつに大人の怖さを教えてやれ!」


「「へい!」」


三人組が女の子を取り囲み、そして一人が殴りかかってきた。それを紙一重でかわし投げ飛ばす。その動きを見ていたリーダー格が驚きつつもナイフを取り出す


「あんまり舐めてると痛い目を見るぜ」


それに対し女の子も刀を抜く。二人は距離を取りつつ相手の動きに警戒する...そのときエリアの肩に乗っていた子猫が飛び降り、リーダー格の顔に飛びついた


「ぶはっ!?なんだ!?」


「!!」


それを見逃さなかった女の子は刀の溝で腹に一撃を加える。そのダメージでリーダー格の男性は白目をむいて倒れる。そして残っていた一人が倒れた二人を担いて逃げていく。


「おぼえていやがれ!」


「あれ...どこ行ったんだ」


飛び降りた子猫をを探すエリア、するとさっきの女の子が近づいてくる。その手には白い子猫がいた


「この子は君のですか?」


「あっ!そうです」


「そうですか、この子のおかげで周りの被害も少なくて済みました、ありがとうございます。私の名前は九重(ここのえ)紫苑(しおん)、東の国の出身です。あなたのお名前は?」


「僕はエリア・グラディウス、この街で冒険者をやってるんだ」


「エリアさんですか、どうぞよろしくお願いします」


「そういえば紫苑さんはどうして絡まれていたの?」


「私にもよくわからないのですが私がこの〈ポーション〉という薬を買おうとした時に横取りしようとしてきたのです。世の中物騒ですね...と、そろそろ時間ですね。私は修行がありますのでこの辺で失礼します。またどこかでお会いできるといいですね」


そう言って紫苑はさっそうと店を出て去っていった。エリアは自分の目的を思い出し自分も〈ポーション〉を買おうとしたのだが、店員にさっきの子で売り切れだと言われた。だから紫苑は絡まれていたのだとわかった


仕方ないのでエリアは最後の目的地、猫用の道具を買いに行くことにした。猫用品の店は街に中心にあるため来た道を戻っていく。歩いて三十分、エリアは猫用品専門店《猫パラダイス》にやってきた。ここは猫関連の道具が売っている他に猫との触れ合いスペースまで設けられた猫好きにはたまらない店である


「いらっしゃいませー!今日はどのようなご要件ですか?」


「えっと、この子用にいろいろ道具が欲しいんだけど」


「子猫用品ですね、少々お待ちください」


「それにしてもこの店もすごいな...」


エリアが驚くのも無理はない。さっきの武具店ほどの大きさがある上、店全てが猫専用、この街一番の猫専門店なのである


「お待たせしましたー、とりあえず子猫用に必要なものを一式揃えてみました」


「ありがとう、これでいくらぐらいかな?」


「銀貨六枚になります」


「意外とするんだな...」


先ほどエリアが買った剣が銀貨三枚に対して猫用品は銀貨六枚、この街の猫用品は結構値が張るものが多いのだ


「ありがとうございましたー」


一式を買ったエリアは店を出る。するとそこにダンジョンから帰ってきたリリーナとシーアに偶然遭遇した


「エリアじゃない、こんなところで何を...」


エリアの肩に捕まっている子猫を見た瞬間リリーナの目の色が変わった。そしてものすごい速さで走ってきて猫を抱き上げた


「なになに!なんでエリアこんな可愛い子と一緒にいるの!?」


リリーナは猫を抱き寄せ、ほっぺをすり寄せている。その光景を見ていたエリアは突然のできごとに驚いている


「すいません...昔から姉様は可愛い動物、特に猫が大好きでして見るとすぐこうなっちゃうんです...」


たしかに猫を抱くリリーナの顔はすごく満足気だ


「その子は朝起きたら僕のベットにいたんだ。それで懐かれちゃったから買い物ついでにその子を飼う道具を揃えようと思ってね」


「そうだったんですか...姉様、その子嫌がってますよ」


子猫はリリーナの手を振りほどきエリアの肩に戻っていく


「飼うってことはこれからはその子も一緒に住むってことよね?」


「そういうことになるね」


「ということはこれからは毎日子猫をなで放題、さわり放題...ふふ」


「そんなに猫が好きなんだね...」


そんなこんなで三人一緒に《月詠の泉》に帰っていく。すると受付に道具屋にいた女の子、紫苑がいたのだ


「あれ、紫苑さんどうしてここに?」


「あ、エリアさん。私は修行のために身を落ち着ける宿を探していましてそれで偶然ここを見つけたのです。エリアさんもここに宿泊しているんですかか?」


「いやここは僕達がギルドの拠点として使わしてもらってるんだ」


「ということはここに住んでいるんですか、つまりしばらくは同じ屋根の下で生活を共にするんですね。改めてよろしくお願いしますね、エリアさん」


「こちらこそよろしくね」


握手をする二人、そのときアーウェルンクスも帰ってきた


「ただいま...あら?エリアその子猫...」


「おかえりなさい、この子は朝僕の部屋にいたんですよ」


「...ふふ、また面白いものを持ってきてくれたのね」


そう言ってアーウェルンクスは丸い何かを取り出す。それを見た子猫は一目散に逃げていくが、それを逃がさぬように回り込み、子猫にその何かをぶつけた。子猫に当たったそれは子猫の姿が見えなくなるほどの白い煙をあげている。しばらくして煙が晴れるとそこには小さな女の子がいた

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