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「ダンジョン」と生きていく  作者: 春 シオン
1章【始まりと冒険】
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12話〜憩い〜

煤だらけになったエリアは二人に担がれて《月詠の泉》に戻ってきた。ロビーの受付で座っていたクレールがその姿を見て心配しているようだ


「お!お前らおかえり...ってなんでエリアは焦げてんだ?」


「魔法の暴発で...」


「そうか...とりあえずお疲れさん。エリアはそんな汚れてるとさすがにあれだから大浴場行ってきな。湯は沸かしてあるぜ」


クレールに促されてエリアはふらつきながらも大浴場に向かって歩いていく。


「そういや通りの店は見てきてくれたか?」


「あ...忘れてた...シーアは見てた?」


「しっかり見てましたよ。大通りはなんでも揃うと思ってたのですがよく見ると錬金術のお店が見当たりませんでしたね。それと魔法道具店が小さなものしかなかったのでもう少し品揃えがいいところがあるといいと思います」


「錬金に魔法道具か...それならすぐに始めれるな、ありがとなシーアちゃん!」


「シーアよく見てたわね?」


「見てほしいと言われてましたので」


「さすがね...それにしてもクレールさっきすぐ始めれるって言ってたけどほんと何でもできるのね」


「そんなことねぇよ、俺は不器用だからこそなんでもできるように練習して今の俺があるんだぜ」


「練習の成果ってやつね」


改めて二人はクレールの凄さを思い知る。するとクレールが受付の奥に入っていき、その数分後何かを手に持って戻ってきた。右手には黒と白の釜のようなもの、左手にはなにやら豪華な装飾がついた台座を持っている


「それは〈錬金釜〉と〈魔具台〉ですよね?」


「シーアちゃんも物知りだな!」


〈錬金釜〉複数のアイテムをこの釜で入れ火をかけることで新たなアイテムに作り替えることが出来る魔法道具。これを扱うにはコツがあり製作するアイテムによって分量、温度、火をかける時間など細かく調節しなければいけないのでこれを使いこなせるものは少ない


〈魔具台〉こちらは複数のアイテムや触媒に魔力を込めることによって魔法道具を作ることが出来る魔法道具。これは錬金釜と比べ細かな調節が必要ないものの、道具を製作する際は製作者の魔力で大きく左右される。魔力が多く込められた魔法道具は高価なものが多い


「両方持ってるなんて凄いですね...」


「なーに、これは古い友人から譲り受けたものさ。使ってみるかい?」


「また後日にでも詳しく教えてもらいます」


「わかったよ。リリーナちゃんはどうだい?」


「いや...私はやめとくわ...壊すの嫌だし」


「そうか」


クレールは少し残念そうな顔をしている。そのときリリーナがふとあることを思った。


「そういえば『命選の精霊』...アーウェルンクスってどこにいるの?私一度も会ったことないから会ってみたいんだけど」


「ん、あいつか?あいつも今大浴場にいると思うぜ。お前らが帰ってくる少し前に帰ってきてな、なんか全身汚れてたから風呂に行かせたんだが...」


そう聞いたシーアがクレールに問いかけた


「そういえばエリアさんも先ほどお風呂に行きましたがたしかここって混浴とかじゃないですよね?」


「一応混浴もあるけどしっかり男女に分かれてるぜ」


シーアは複雑そうな顔をしている。しかしそれを聞いていたリリーナがさっきのことを思い出す


「でもエリアふらふらだったわよね?間違って他の風呂に行ってないかしら?」


「「......」」


「まぁ大丈夫だろう」


そんなことが話されていることを知らないエリアは大浴場に向かって歩いていく。シーアとリリーナの心配はよそに、ぼーっと混浴の方に入っていった。このときのエリアは魔法暴走による魔力の消費に眠気と疲れがピークまで来ていたのだ


エリアは浴室の中に入っていく...


「ふぅ...魔法ってあんなに難しいものなのか...僕に使いこなせるかな」


一番大きな湯船に浸かり上を見上げる。そこはガラス張りになっており、そこからは一面の星空が広がっていた


「綺麗だな...」


「あなたも意外とロマンチストなのね」


「意外ってそんな...っ!?アー様!?」


いつの間にかアーウェルンクスが隣で湯船に浸かっていた


「い、い、いつのまに...」


「いつの間にって最初からかしら、私が浸かっていたらあなたが入ってきたのよ?」


「あれ!?もしかして間違えて女湯に入ってましたか!?」


「ここは女湯じゃないわ。混浴風呂だからいても問題ないわよ」


「問題ないことはないと思うんですけど...それにしてもなぜアー様は混浴風呂に?」


「混浴風呂は基本入る人がいないみたいなの。だから静かにゆっくりできると思ってね」


「そうなんですね...」


エリアはアーウェルンクスがいることは諦めてゆっくりすることにした


「それにしてもエリア、最近ボロボロね」


「なかなかダンジョンも厳しくて...」


そのときアーウェルンクスがエリアを包み込むように後ろから抱きつく


「アー様!?」


「頑張るのもいいけどもう少し自分を大切にすることを覚えた方がいいわよ。進む勇気はもちろん大事よ?でも逃げる勇気だって生きてく上ではとっても大事なことよ」


「......」


「あなたにはそれがわかるはず...私が気に入ったあなただもの」


「...アー様には敵いませんね」


穏やかなやりとりに笑う二人。そんなとき風呂の外が騒がしくなっている。その音はどんどん近づいてくる。何事かと思っていると浴室の扉が勢いよく開けられた


「エリアさん!大丈夫ですか...なっ!?」


飛び込んできたのはシーアだった


「エ、エ、エリアさんいったいアーウェルンクス様とここで何を...!?」


「あのこエリアと同じ反応の仕方するわね。面白いわ」


「えっと...偶然アー様と一緒になって...」


「...アーウェルンクス様がたぶらかしたんですね」


「たぶらかした...?いったいなんの...」


「そうよ、私がエリアをここに連れてきたの」


「やっぱり!いくら気に入っててもやっていいことの限度があります!エリアさん今助けますからね!」


「面白いわね、かかってきなさい」


「二人ともいったいなにを言って...」


エリアがよくわからないうちにシーアは臨戦態勢をとっている。それに応対するようにアーウェルンクスも湯船からあがり構えていた。そして二人は同時に魔法を打ち出した


「「氷槍弾(アイススピア)!」」


同時に放たれた高威力の魔法はぶつかり合い相殺される。エリアは目の前の状況に唖然としていた。そこにリリーナがやってきた


「大丈夫?」


「僕は大丈夫だけど二人が...」


「あのこアーウェルンクスが浴室にいるって聞いた途端走っていっちゃってさ、こうなるんじゃないかなとは思ったけど本当に始めちゃうとわね」


「シーアが?どうして...」


「んー、アーウェルンクスがエリアのこと気に入ってるって知ってたみたいで、そして公的モラルがなんとかって言って走っていっちゃったの」


「たしかに混浴にしても男女が一緒に入るって良くないことだよね」


「そうね...それにしてもこれいったいどうしようかしら」


二人はさっきから魔法を撃ち合っている。そして浴室はどんどんボロボロになっていく。そのとき走っていったシーアを心配して見にきたクレールがひょっこり顔を出した


「嬢ちゃんエリアはいたかい...ってお前ら何してんだ!?」


目の前に広がるのは壁や床がボロボロになった浴室。クレールは驚きを隠せなかったがすぐに魔法を唱え始めた


捕縛(バインド)


「きゃっ!」


「あら?」


戦っている二人が光の縄で縛られる。暴れていた二人は縛られたことにより床に転がった。そしてクレールは呆れて喋り始めた


「おいおい...うちの目玉をこんなにしちゃって...少し反省しな!」


「ごめんなさい...」


「せっかく楽しいとこだったのに」


シーアは反省してるようだがアーウェルンクスは遊びの邪魔をされた子供のように膨れていた。縛られているシーアにリリーナが近づいていく


「ねぇシーア、どうしてこんなことしたの?」


「それは...」


「まぁよくわからないけどあなたにはあなたの考えがあるものね。でもこんなことはもうしないこと!いいわね?」


「はい...」


そしてアーウェルンクスは捕縛(バインド)を解きクレールに文句を言っていた


「もう、なんで邪魔するの?」


「あのな...神以上の力を持ってるお前が暴れたらこの店どころかこの街そのものが壊れかねないんだよ!お前は我慢というものを覚えろ!」


「...つまんないわね」


「あと服を着ろ」


やっと戦闘が終わり唖然としていたエリアも落ち着いた


「ただお風呂に入っていただけのはずなのに...どうしてこうなったんだろう」


安らぎの時間だったはずがいつの間にか長い長い地獄のような時間になっていた。全員が浴室からでたあとクレールは魔法をつかい壊れた場所を修復し始めていた


「それにしてもシーアだったかしら、あなたなかなか強いのね」


「...ありがとうございます」


アーウェルンクスがシーアに近づき小声で耳打ちをする


「あなたエリアのこと好きなんでしょう?」


「っ!」


「見ていればわかるわ、私はあなたのこと応援するわよ?」


その思いがけない言葉にシーアは驚く


「えっ、でも...」


「確かにエリアは私のお気に入りよ、でもそれはloveじゃなくてlikeの好き、つまり恋仲になろうって考えはないわね」


「そうだったんですね...早とちりしてすいませんでした」


「いいのよ、久しぶりに楽しかったし。それと頑張るのよ。エリアは鈍感だから気づかせるのは大変だと思うけど」


「はい、ありがとうございます」


四人が食堂でゆっくりしていると疲れた様子でクレールが戻ってきた。さっき見たより少しやつれて哀愁漂う感じになっていた


「クレールさん...申し訳ありませんでした」


「あんまり気にすんなよ。さっきは俺も怒っちまったけどあれぐらいなら簡単に直せるからよ」


「クレール老けたわね」


「お前は反省しろよ!...たく...お前らすぐ晩飯用意するから待ってな」


怒りながらも厨房に入っていき料理を始める。そんな様子を見ていたエリアはやっぱり優しい人だなと思っていた。


今日で冒険者になって三日目、冒険者になってからは一日が長く感じるようになった。それだけ充実しているということだろう。明日は何をしよう、エリアはそんなこと考えながら晩飯を食べて就寝したのであった。それとシーアは何であんなことをしたのだろう、エリアにはさっぱり理由はわかっていなかった

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