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「ダンジョン」と生きていく  作者: 春 シオン
1章【始まりと冒険】
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9話〜戦闘再び〜


魔法 模索(サーチ)、それは基本ものや人を探す時に使われる魔法である。この魔法で表示されるものは方向とだいたいの距離だけだが実はもう一つ効果がある、それは周囲のモンスターの居場所を感知することが出来るのである。このことを知っている冒険者はあまりいないのでダンジョンではあまり使われない魔法。そして今、シーアはモンスターの気配を察知したのだ


「エリアさん...あまり良くない知らせが...」


「どうしたの?」


「モンスターに囲まれているようです...数はおよそ三十...」


「っ!?」


伝えられた言葉にエリアは周囲を見渡す。しかしそれらしき姿は見当たらない


「どうやら隠れて私たちを狙っているみたいです」


「タイミングを見計らっているのか...」


「どうしますか?」


「...落とした場所まで走ろう。ずっとここでにらめっこしてるって訳にもいかないからね...」


相手は茂みに身を隠しているためその姿を確認することはできない。しかしこちらを観察し、すぐに襲ってこないということは知能があるのだろう。多分動くと襲ってくるであろう、そう思いながらもエリアは魔法道具を落とした池のほとりまで走ることを提案した


「エリアさんがそう言うなら私はそれに従います」


「合図をしたら一気に行くよ...武器は構えといてね」


二人は武器を構え身構える


「1...2...行くよ!」


その合図に二人は池の方に向かって走り始める。その動きを見ていたモンスターは姿を見せないように二人のあとを追いかけてくる。結構な速度で走っているにも関わらずふり切ることができず、ついには先回りしてきたモンスターに挟まれてしまった。茂みから出てきたのは額に三日月の模様がある狼たちだった


「こいつらはサテラウルフ...!」


「どうりで逃げきれないわけですね...」


サテラウルフ、牙狼種と呼ばれるものの一種で大きなたてがみと額に浮かんだ三日月模様が特徴的である。集団での狩りを得意とし、相手をじわじわと削っていく戦法を好む


「こいつらを倒していかないと帰れないってことか」


「見る限りでも数はおよそ五十体...さらに茂みにも潜んでますね...」


「厳しいね...」


「......」


自分たちを取り囲む大量のモンスターに神経を尖らせつつもどうやってこの場をくぐり抜けようかエリアは考えを巡らせている。そのときシーアがとあることを提案してくる


「エリアさん、私が魔法で一掃します。だからエリアさんは時間を稼いでください」


「...わかった、君を信じるよ」


シーアが詠唱を始めると何重幾重にも魔法陣がシーアの周りに展開される


「術式展開!設定を始めます!」


エリアは腰につけているもう一本のダガーを引き抜き構える。獲物が逃げないとわかったサテラウルフは一斉にエリアに襲いかかってきた。一匹、また一匹と、息を合わせて攻撃を仕掛けてくる。それを二本のダガーを使い受け流し、反撃をいれていく。あまり耐久はないようで、一撃を喰らったサテラウルフはすぐに消滅していく。


「さすがに数が多いな...」


相手の力量を見たサテラウルフは空に向かって遠吠えをあげる。その咆哮に呼応するように辺りからさらにサテラウルフの集団が現れたのだ


「まだ増えるのか!」


エリアはさすがの数に攻撃を受けきれず少しずつ牙撃を受けていく。足、体、手、と次々に攻撃が入っていく。その間もシーアは詠唱を続ける


(イメージは相手を一掃する...あいてを完全に封じると考えると炎じゃなく氷、そして形状は一気に制圧できるように波を基礎に地を這うように敵を狙い打つ...出来た!)


「エリアさん下がってください!」


その呼び声にエリアはシーアの後ろに下がる


「術式複合[(アイス)(ウェーブ)追尾(ホーミング)]術式統合!」


シーアの周りに展開していた魔法陣が一列に重なっていく


「深淵より来たりし静かなる魔氷よ!荒ぶる海原の力を纏え!その大いなる怒りをもって敵を穿て!大氷華の波撃(フルブリザードウェーブ)!!」


その掛け声とともに魔法陣からはおびただしい量の氷が現れ、地面を波打つようにサテラウルフの群れに向かって地を這っていく。その氷の波は加速しながらもその大きさを増して巻き込んでいき、一匹、また一匹と氷に包まれていく。恐怖を感じたのかその様子を見ていた残りのサテラウルフはその場から逃げていく。その通った跡には氷の華が咲き乱れている。


「...ふぅ」


「あれだけの数を一瞬で...」


「エリアさんが時間を稼いでくれたおかげです...」


「それにしてもさっきの魔法すごいね、シーアはあんなこともできるんだ」


「いえ、あれは正確には"魔法"ではなくて"魔法によって作られた魔法"なんです」


「作られた魔法?」


「私がさっき使ったのは加算式大魔法術(プラスマジックスキル)という私だけが使える魔法でして、いくつかの要素を組み合わせることでその要素を組み合わせた魔法が発射されるというものなんです。そうですね...今一つやって見せますね。術式展開!」


そう言ってシーアは再び魔法陣を展開する


「まずは使用する魔法の属性を指定します。今回は炎にしときますね。そして次に形状でして、これは槍としときましょう。そして最後に追加オプションを足していきます。例えば追尾(ホーミング)だったり拡散(スプレッド)など、魔法の慣性に変化を追加するんです。ではいきますね」


「術式複合[(フレイム)(スピア)拡散(スプレッド)]術式統合!」


「揺蕩う炎獄より来たりし地獄の業火よ!すべてを貫き通す力を纏え!その大いなる灼熱をもって敵を穿て!拡散炎獄槍(ブラスターニードルフレア)!」


魔法陣からは扇状に何百もの炎の槍が飛んでいく


「と、こんな感じですね」


「戦況に合わせて自在に組み立てることができる魔法...か」


「でもこの加算式大魔法術(プラスマジックスキル)は消費が大きいので一日三回までという制限もありますし...それに組み立ててる間は無防備なのでさっきみたいに守ってくれる人がいないと...」


「...その魔法ってさ、僕も使えたりしないかな?」


「多分無理だと思います...これは私用に作られているので...」


「そっか...じゃあ僕専用の魔法は作れる?」


「それならエリアさんが調整、設定することで作りあげることができます。明日にでも魔法の基礎からお教えしますね?」


「あっ...」


このときエリアには一つ思い出したことがあった。シーアは魔法のことになると人が変わるということを...早まったかなとエリアは胸の奥で少し後悔していた。なんとか危機を乗り切った二人はゆっくりと池のほとりに向かって歩いていく。そして歩き始めて数十分、先程休んでいた場所まで戻ってくることができた。


模索(サーチ)だとだいたいこのあたりに...あっ!ありました!」


「よかったー...これで帰れるね」


二人は緊張が溶けその場にゆっくりと座り込んだ。


「そういえばその飛翔の舞羽(リターン・フェザー)...だったよね?それって誰にでも使えるものなの?」


「はい、魔法道具というものはそれじたいに魔力が込められていまして起動用の呪文さえいえば誰にでも扱える代物のなってます」


「そうなんだ...使ってみてもいい?」


「いいですよ」


エリアはその魔法道具を空にかざす、そしてシーアに教えてもらった呪文を唱える


帰還(リターン)!」


二人の体は光に包まれ気がつくと《月詠の泉》の前に立っていた


「魔法ってすごいね...」


「ええ、魔法はとっても偉大で素晴らしいものなんですよ」


街に帰ってきた二人はクエストで採ってきた《虹色果実》を管理所の受付に渡し報酬を受け取った。その額は銀貨で25枚、初心者には充分な報酬であった。報告を終えた二人は自分たちのホームに向かって歩いていく。


「それにしても今日は大変でしたね...」


「管理所で依頼書を見てみたらあの辺りはサテラウルフの縄張りみたいでね、だから報酬もあれだけもらえたみたいだね」


「今度クエストを受ける時はしっかり依頼書を見るようにしましょうか...」


「そうだね...今日みたいなことはこりごりだよ...」


そんなことを話し合ってるうちに《月詠の泉》に帰ってきた。さすがに疲れている二人は足早に中に入っていく。入ってすぐに受付にいたクレールが声をかけてきた


「おうエリアにシーアちゃん、おかえり!」


「クレールさん...ただいま!」


「ただいま戻えりました」


「初クエストはどうだった?ま、さすがにあっさりと行っただろう?」


「いえ、それが...選んだクエストがなかなか大変なもので...」


「危うく死ぬとこでしたね...」


「お前らそんな危険なことしてたのか...とにかく無事に帰ってきてよかったよ。疲れてるだろ?飯作ってやるよ。食いたいもんを言え!なんでも作ってやる!」


「いいんですか!?じゃあ僕はハンバーグ!」


「私はミートパスタをお願いします」


「おう!待ってな、すぐ作ってやるよ」


クレールは奥の厨房に入っていった。ようやく二人は落ち着いてロビーにある椅子に腰をかけた


「シーア、今日はお疲れ様。助かったよ」


「いえ、こちらこそエリアさんがいてよかったです」


「また一緒にクエストに行こうね。今度は簡単なヤツ」


「はい、是非また。しっかり依頼書を見ましょうね」


ロビーには笑いが響いている。そしてそのタイミングでクレールさんから料理ができたと伝えられる。明日は楽しく冒険できればいいな。二人はそんなことを考えながら料理が待つ食堂へと足を運んでいった。

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