表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果  作者: ケンノジ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/173

マンガ再現ごっこ


「……春香さん、何買ったの?」


 本屋からの帰り。

 俺がマンガの新刊が出たから買いに行くと言うと、柊木ちゃんもついてきたのだ。


「え。あたしは、何も買ってないよ?」


 あれ? レジに並んでるのが見えたんだけど、買うのをやめたのかな……?


 さっそく柊木ちゃんちに帰って新刊を読んでいると、柊木ちゃんも何かを読みだした。


 しかも、いつもベッタリくっつくくせに、今日に限って俺はソファにいるのに、柊木ちゃんはダイニングのテーブルにいる。


 ……怪しい。


 そおっとのぞいてみると、料理本を読んでいた。


 なんだ。別に隠すほどの物じゃないだろう。


「あ。もうこんな時間。夕飯作るね? 何かリクエストある?」

「中華っぽい感じの何かで」

「りょーかい♪」


 柊木ちゃんがエプロンをして、キッチンに回る。


 ぱたん、と本を閉じると俺はおかしいことに気づいた。


 料理本がこんもりと膨らんでいる。


 ……まるで何かを挟んだみたいに……。


 あ。料理本を読んでいると見せかけて、別の何かを読んでたんじゃ……?


 料理をはじめた柊木ちゃんに見つからないように、テーブルまで行き、手を伸ばし、料理本を掴む。

 やっぱり、おかしな厚さがある。


 開くと、案の定別の本が出てきた。


 書店でもらえる茶色のブックカバーがしてあるので、表紙がわからない。


 ま、いいや。読めば何かわかるだろうし。


 中を開いて見てみると、どうやら少女マンガの五巻らしかった。


 別に恥ずかしいことじゃないだろうに……どうして……?


 首をかしげながらページをめくっていくと、どうして隠そうとしたのか、わかった。

 少女マンガっていっても、ハイティーンむけ? っていうやつらしく、若干エッチなシーンがある。


 なるほど。春香お嬢様は、若干エッチなマンガを読んでいるはしたないお嬢様だったわけだ。


 待てよ? 寝室に同じブックカバーの本が何冊かあったぞ? もしかして……。


 こそこそ、と見つからないように寝室に入って、仕事用の本だったり、自己啓発本が二、三冊入っている棚を発見。

 それとは別で、ブックカバーを外さないままになっている四冊を見つけた。


「……これだ」


 小説か何かだと思っていたけど、中身はハイティーンむけの少女マンガだったとは。


 ぱらぱらー、とめくっていくと、思った通りだった。けど、付箋が貼ってある。


 一、二、三、四……。全部で七か所。


「マンガに付箋って……参考書じゃあるまい……」


 苦笑いしながら、付箋をつけたページを開く。


 ややエロいシーンだった。


『ドキドキ♡』


 コメントも付箋に書いてあった。


「ああ。好きなシーンは付箋貼って、ひと言感想を書いている的な?」


 まあ、楽しみ方は人それぞれだ。


 次の付箋のコメントは、『誠治君にされたら死ぬかも♡』ってあった。

 ……あれかな。現代でいう壁ドン的な?


 ページを開くと、ややエロいシーンだった。


「…………もしかして」


 他の巻の付箋ページを確認していくと、全部ややエロいシーンのところばかりだった。


 きょ、興味津々だぁあああああああああ!


 中学生男子が、辞書のセックスにマーカー引いちゃうみたいな感じになってる!


 コメントも『はぅぅぅ』とか『きゅん♡』とか色々書いてある。


 こういうのを読んで勉強してるのか。


「誠治君? マーボー豆腐とナスならどっちが…………」


 あ。見つかっちゃった。


 俺と手元のマンガを何度も見て、柊木ちゃんがぽろん、と手にしていたおたまを落とした。


「ち、ちが……誠治君、ち、違うの……」

「え? 何が違うの?」


 ニヤニヤしながら、俺は付箋のページを柊木ちゃんに見せながら近づく。

 俺の中で、変なスイッチがオンになった。


「このシーン、『きゅん♡』なんだ? へえ。こういうの、春香さん好きなんだ?」

「だ、だ、だから違うのっ!」


 あわあわ、と顔を赤らめて、柊木ちゃんはじりじりと下がる。


「な、な、夏海が、面白いよって言うから、あたしも試しに買って読んでただけで……」

「夏海ちゃんは、エロいシーンには付箋を貼るようにって言ったの?」


「春ちゃんも勉強しなよって言うから! だから……付箋…………」

「興味津々だったんだね、春香さん」


 うぐぐぐ……、と口をへの字にすると、いつの間にか涙目になっていた。


 あ、やば。やりすぎた。


「そうだよっ! 興味津々だよっ! でも、実際まだしちゃダメだからマンガ読んで勉強してるんだよっ!」

「あ、開き直った!」


 ふしーふしー、と息を漏らしながら、柊木ちゃんは涙目で訴える。


「誠治君にこんなことされたら死んじゃうって思いながら、布団の中でニヤニヤしてるんだからっ! どうせはしたないよっ!」


「べ、べ、別に俺、悪いとか言ってないし……」


 窮鼠猫を噛む事態が発生した。


「じゃあ、やってみる?」

「ほえ?」

「お気に入りのシーンを、俺と春香さんで」

「やる! やる!」


 俺からマンガをひったくる柊木ちゃん。


「ぶふふ、ぶふ、ぐふ……ど、どうしよう、どのシーンにしよう……」


 不気味な笑い声を漏らしながら、ページをめくっていた。


「よし、決めたっ! ちゃんと着替えるから誠治君は出てって」

「え!? そんな気合入れること?」


 そのシーンのコマを指差しながら、俺にマンガを渡した。


「ここだからね。ここ! セリフきちんと覚えてね!」


 ガチだ……。

 軽~く真似する程度のつもりだったんだけど。


 そのシーンを読むと、落ち込んでいる主人公の下にヒーローが駆けつけ、後ろからぎゅっと抱き締めて耳元で愛をささやくというシーンだった。


 ……よかった。エロいシーンじゃなくて。


「もーいーよ!」と、柊木ちゃんの声がして、扉を開ける。


 すでにシーンははじまっているらしく、柊木ちゃんがベッドの上で膝を抱えていた。


 ちら、ちら、と俺を見て、展開を知ってるからニヨニヨしまくりだった。

 おい、落ち込んでる設定だろ。


 軽く咳払いをして、俺もヒーローを演じる。


「……こんなところにいたのか。探したぞ」

「なんで、探しにきたの。別に、気遣わなくてもいいのに」


 開けた扉にもたれながら、聞こえるくらい大きなため息をつく。


「はぁ……。そりゃ探すだろ。あんな顔で走って逃げれば」

「追いかけてこないでよ。どうせ誠治は紗菜ちゃんのことが好きなんでしょ!?」


 ぶっ!?

 なんで実名なんだよ。


「あたし、知ってるんだから……誠治と紗菜ちゃんがセックスしたって」


 ぶは!? セリフはその通りだけど、実名をあてはめんのやめろ。


「春香、何か誤解してねえか? あれは、紗菜のやつが勝手に言ってるだけで、そんな事実はねえよ」


「は、春香……」


 きゅうん、としたらしく、柊木ちゃんが胸を押さえた。

 素になってんぞ。


「お、おほん…………。本当に?」

「本当、本当」


 俺は柊木ちゃんの背中に近づいて、抱き締める。


 で、決めセリフ。


「俺が好きなのは、春香だけだから」


 なんちゅー恥ずかしいセリフなんだよ……。


 次は主人公のセリフなのに、柊木ちゃんが黙っている。

 キュンキュン具合が臨界点を突破したらしく、耳を真っ赤にして体がふらついた。


「セリフ、セリフ」


 耳元で小声で言う。


「そ……そうだった……。おほん。……まだ信じられない……信じたいけど、信じられないよ」

「これで、どう?」


 顎をそっと持ち上げてキスをする。


 これでこのシーンは終了だ。


「も、もう一回、春香って呼んで……?」

「オラオラ系が好きなの?」

「ふぐぅ……、そ、そういうわけじゃないけど……誠治君に『おまえは俺のもんだ、春香』って言ってほしい」

「さりげなくリクエストすんなよ」


 全然収まりがつかなさそうだったので、リクエストに応えることにして、耳元でささやいた。


「おまえは俺のもんだ、春香」

「はい……♡ 貴方のものです……」


 役を演じていたせいかわからないけど、柊木ちゃんのリミッターは解除状態に入った。


 電気をつけることもなく、暗がりでイチャイチャする俺たち。


 手作りの中華じゃなくて、適当に外食することになったのは言うまでもないだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作 好評連載中! ↓↓ こちらも応援いただけると嬉しいです!

https://ncode.syosetu.com/n2551ik/
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ