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高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果  作者: ケンノジ


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俺の成果


『今の俺は、HRG社の若手有望社員。会社は倒産するまでは至ってないが、傾きはじめているのは事実のようだ』


 タイムリープが解除され、日時を確認しようとすると手帳型のスマホカバーの中にこのメモが挟んであった。


 気づいたら家らしき場所のベッドにいて、隣には柊木ちゃんがすやすやと眠っていた。


 また俺は一〇年後の現代に戻っていた。


 で、このメモは、どうやら現代の俺から俺へのメッセージらしい。


『結論から言うと、俺が高二のときにHRG社でバイトをすることは間違いじゃなかった。けど、HRG社倒産は、他に大きな原因があるように思う。さすがに何が原因かはわからんが』


 早朝から、俺はベッドの上で体を起こしてシリアス顔。

 俺がデキるバイトとして入り込んでも、倒産を遅らせることしかできなかったようだ。


『社員二五〇〇人とその家族が路頭に迷うことになる。どうにかして止めてほしい』


 わかってるよ。んなこと。

 俺と柊木ちゃんさえ幸せならそれでいいのかっていう話だ。


 高校生同士の恋愛ならそれでいいのかもしれないけど、大人同士の大人の恋愛。

 色々と考えないといけないことは多い。


『柊木ちゃん……春香さんとのことだが、いつぞやのように夏海ちゃんの援護があって同棲までできたが、やっぱり結婚までは難しそうだ』


 朝っぱらからヘコませてくれるなぁ……。


『ひーパパは夏海ちゃんに任せておけるけど、お母さんのほうが、まだ俺たちの関係に納得してくれない。社内でもっと出世しないと、って、これは現代の俺頑張れって話なんだが……』


 頑張れって話だけど、傾きはじめている会社で出世も何もないだろう。


『内部でどうこうするより、柊木家の人間として立ち回るほうが正解かもしれない』


 いち社員ができることなんて、限られている。

 高二の俺がバイトをして、知識と経験を持った俺がHRG社に再就職することで倒産を避けられるかと思ったけど、いち社員に防ぐことは難しいみたいだ。


 けど、前回現代に戻ったときは、HRG社はすでに倒産していて、夏海ちゃんはフリーターで同棲している俺たちの家に間借りしている状態だった。


 だから、最悪は脱しているし、成果はあったんだ。


『だから、真田春香になってもらうんじゃなくて、柊木誠治になったほうがいいかもしれん』


 真田春香……。結婚がリアルに迫ってる感じがして、なんかいい。

 けど、柊木誠治って……あ、婿養子ってこと?


『それなら、社長令嬢の婿として、HRG社での権限や発言権が得られるはず』


 こういう言い方をされると出世のために柊木ちゃんちの婿養子になる、みたいに聞こえるんだけど。


『俺の出世のために言ってるわけじゃねーからな』


 さすが、俺。何考えてるかよくわかってるらしい。


『高卒時点で家族公認の婚約者。これくらいでないと。二七歳の今じゃ、会社は傾きはじめているし、結婚も遅い』


 メモに書いてあることはこれが最後だった。


 ハードルの設定高いなぁ。


 今回と前回は、会社の業績が悪かったけど、最初の最初、俺が高二にタイムリープする前はそんな話になってなかった。


 俺が紗菜と同棲していたときは、柊木ちゃんと別れていて職場は変わってなかった。

 教師になったときは、HRG社はやっぱり傾いていたんだろうか。

 もし傾いていたとすると……。


「いや、さすがに……俺と柊木ちゃんが付き合うとHRG社が傾いたり倒産したりする、なんて……」


 そうだとしても、別れるっていう選択肢はない。

 そのために別れたら本末転倒もいいところだ。


 早いうちに家族公認の仲になること。これが最優先だ。


「……誠治く~ん……何、怖い顔して……?」


 隣で寝ていた柊木ちゃんが起きて、俺の腰に抱きついた。


「うん。ちょっとね」


 なでなで、と艶のある髪をなでる。


 まったりしている朝の二人だけの時間。


 なんだかこれだけで十分幸せな気がしてくる。


 ……柊木ちゃん、上半身裸で……俺も服を着てなかった。

 昨晩はお楽しみだったようですねえええええええ!?


 白い背中に、うっすらとだけ痣があった。


「春香さん、背中、大丈夫?」

「うん。大丈夫って、誠治君がしたんでしょ?」


 俺!? まさか、DV……!?


「もっと強くてもいいって言ったのに……」


 ドMになっとるぅううううううう!?


「難しいこと考えなくても、きっと大丈夫だよ」


 何も言ってないけど、何かを察した柊木ちゃんが、俺を抱きしめた。


 やっぱり、柊木ちゃんにこうしてもらうと、癒される。


「うん。ありがとう。でも、俺にできることがあれば、頑張るから」


「誠治君で正解だったよ。昔からそうだったけど、もっと素敵な(ひと)になったもん」


 柊木ちゃんがよく言う「愛の力」ってやつを、このときは俺もちょっとだけ信じてみたくなった。


 ふわあ、とタイムリープの感覚が全身を包んだ。


 まばたきした次の瞬間、景色が柊木ちゃんちに変わった。

 時間は昼食時らしく、柊木ちゃんがキッチンで何かを作ってくれている。


 俺はその背中に回り込んで軽く抱きしめた。


「きゃ!? ……こら。お料理中は危ないから、め」


 め、と言いながら、ささっと俺にキスをした柊木ちゃん。

 早キスという変なスキルを覚えたらしい。


「俺、頑張って春香さんの婚約者になるよ」


 俺の腕をほどいてくるっとこっちをむき、両手を広げて「おいで」のポーズ。

「おいで」されることにして、柊木ちゃんに抱きしめられた。


「頑張らなくても、大丈夫だよ?」

「いや、それでも、俺が頑張りたい」

「……誠治君、それって……ほとんどプロポーズなんだよ? わかってる? 前々から、それっぽいことを言っているけど」


 んんん? とこっちをのぞきこんでくる。


 もちろんわかっている。


 というか、俺には柊木ちゃんしかいないし、他の誰かなんて考えられない。


「春香さん」


 まっすぐ見つめると、柊木ちゃんも持ち前の察しのよさで、何かに気づいた。

 緊張した面持ちで、一度喉を鳴らした。


「はい」


「まだ俺は、高校生でなんにもないけど……それでも春香さんのことが好きです」

「……はい……っ、あたしも……好き」


 唇を震わせながら何とか言うと、柊木ちゃんの瞳に涙が盛り上がった。


「結婚してください。これからも、俺とずっと一緒にいてほしい、です」

「……はい」


 ぽろぽろ、と涙をこぼしながら、精一杯の笑顔で柊木ちゃんは微笑んだ。


 そうだ。全然考えてなかった。こういうときは指輪を渡すものなのに、何も用意をしてない。

 そのことを言うと、「卒業してから、改めてでいいよ?」と柊木ちゃんはまったく気にしてないようだった。

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