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柊木ちゃんのお悩み相談室

柊木ちゃんポンコツ回です。衝撃に備えてください。


 それはとある休憩時間のことだった。


 視聴覚室の前を通りがかると、柊木ちゃんの声が聞こえてきた。


 誰かとしゃべっているらしく、話声がする。

 相手は女子のようだった。


 何しゃべってるんだろう。


 こっそりのぞいてみると、顔の前に手を組んでいる柊木ちゃんと、そのむかいに二年の女子がいた。


「先生なら、恋愛経験も豊富だと思うから、聞いてほしくて」

「うん、任せて! コイバナなら先生みたいなところあるもんね!」


 どうやら恋愛相談を受けるところらしかった。

 てか、柊木ちゃんは恋愛経験豊富なのか?


 ちょっと興味があるから、のぞいていこう。


「で、どんなことでお悩みなの?」


「彼氏と最近セックスしてなくて、もしかして私に飽きちゃったのかなって」


「………………」


 かちーん、と柊木ちゃんが固まった。

 さっそくフリーズ!

 さっきまでの自信が一瞬にして吹き飛んでる!?


 コイバナなら先生みたいなところがあるってドヤ顔で言ったばっかりなのに!


「浮気してるんじゃないかなって心配になって……」

「……」

「先生なら、色々と経験豊富そうだから、どうしたらいいかわかるかなと思って。……先生?」


「う、うん……めしべとおしべが、合体して……だから……」


 柊木ちゃんが超焦っている。


「先生、植物の話はしてないよ?」


 ……柊木ちゃんにわかるはずもない。

 俺たちはお互い、はじめての恋人。

 で、キスから先には進んでない。


 つまり、この手の話題は、柊木ちゃんも知らない未体験ゾーン。

 相談に乗れるはずもなかった。


「そ、それ、浮気じゃないと思うよ」

「じゃあ、どうしたら彼は私に興味をまた持ってくれるんだろう……」

「…………」


 目を泳がせながら、必死こいて柊木ちゃんが考えている。


 何も知らないのに、何言うんだろう。


 任せて! って、でかいことを言った手前、引っ込みがつかなくなってるだけなんだろうけど。


「鼻、とか使ってる……?」


 鼻!?


「鼻? においを嗅ぐってこと?」

「……もうちょっと、ぶ、物理的に……?」

「え!? そういう使い方は、してないかな……先生は、使うの?」

「うん、使うよ」


 女子のほうはまるで見ないで、柊木ちゃんは即答した。


 有識者ぶって知ったかぶりするから……。


「どう使ってるの? 参考までに、ちょっと……今なら誰もいないし」

「え………………えと…………あ。ごめん、これ、高校生にはまだ早いやつだっ」


 高校生どころか人類に早いんだよ。


 さっさと実はよく知らないって言っちゃえばいいのに。


「ごめんね」


 てへぺろをして、可愛く逃げをうった。

 現状、何の解決策を見出せてないけど、大丈夫か……?


「じゃ、先生が私の立場だったらどうする?」

「え。か、彼氏と……その、えっちなこと、したらってこと?」

「いや、そんな手前じゃなくて、セックスをしなくなったら、ってこと」

「ど、どうなんだろう……い、嫌、かな……」


 もう、顔真っ赤。


「気持ちじゃなくて、対策とか予防の話を聞きたいんだけど……」


 赤い顔のままうつむいてしまった柊木ちゃん。


「うぅ……そ、そうだよね……」


 もうやめたげて!

 自称経験豊富だけど、知ってるのは、俺と経験してきたことだけだから。

 目の前の先生、ただの処女だから。


「あ、じゃあ。き、きちんとお互いの気持ちを確認してみよう!」

「先生、中学生みたいなこと言うんだね」


 くすくす、と女子に笑われた。


 かぁぁぁ、と収まりはじめたのに、また柊木ちゃんは赤くなった。


 ダメだ。

 女子力は柊木ちゃんの圧倒的勝利だろうけど、『女』のレベルが違いすぎる。


 高校生のうちからそういうことはよくない、なんてお堅いことを言わなさそうだから柊木ちゃんに相談してきたんだろうし……。


 どうするんだろう。


「逆に、浮気してみたらどうかな……?」


 何すすめてんだ。


「盲点!」


 盲点! じゃねえ!


「さ、寂しいなら他の男子で埋め合わせ――」

「彼氏の気を引く作戦でしょ!? 先生頭いい!」

「うん、でしょ!」


 ちょっと待て。

 最初、明らかにゲスいこと言おうとしてただろ!


 何生徒の意見に軽やかに乗り換えてんだ。


「先生は、どこまでオッケーでどこからが浮気?」

「あーこの手の議論ねー。やるやるー」


 ほぼ初心者なのにベテラン感出すんじゃねえよ。


「先生は……、異性と楽しそうにおしゃべりしたときから、かな?」


 厳しいっ!?

 俺、そのライン上を反復横跳びしてるんですけど。


「先生、厳しくない? クラスが同じならわかるけど、クラスや学校が違えばわからないよ、そんなの」


「わかるわかるー。制服のうちポケットに盗聴器仕込んでおけば」

「盗聴器!?」


 盗聴器!?

 俺の制服の内ポケットは……あ。ない。よかった。


「録音したものを発信してパソコンとかに飛ばせるバッテリータイプのやつがあって」


 詳しい!?


「私は、そこまでしないかな……。寂しくて浮気を疑ったけど……何だかんだで信じてるから」

「うん、先生も。何だかんだで信じてるから、実行には移さないよ」


 ほう、と俺は胸を撫で下ろした。


「ありがとう、先生。私、ちょっとエッチな下着でもつけて、アピールしてみるよ!」

「……!?」


 その手があったか、みたいな顔をしないでください、先生。


 女子がこっちにやってきたので、俺も退散する。


 後日、柊木ちゃんの下着のラインナップに、レースで透け透けのエロい下着が増えたのだった。(柊木ちゃんが嬉しそうに見せてきた)

 こんなのを着て迫られたら、俺はきっと理性が壊れるだろうなーと思った。


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