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【連載版】高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果 作者:ケンノジ
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一往復


 もぞもぞ、と毛布の中を温かい何かが動いた。

 猫か何かが入ってきたのかと思ったけど、俺んちは猫なんて飼ってない。他の動物も。

 顔にスベスベした柔らかい何かが当たっている。

 朝から何だ……?

 ぱっと目を覚ますと、おっぱいがあった。

「は?」
「んん……」

 寝息をこぼしているのは、まぎれもなく柊木ちゃん。

 なんだ、何がどうなった――!?

 って、俺も真っ裸じゃねえか!

「ん……あ。誠治君、起きたんだ? おはよう……」
「うん、おはよう……」

 裸の俺たち。

 カーテンから入り込んでくる朝日が眩しい。
 爽やかな朝。

 なわけねえ! どういう状況だ?

 周囲を見渡してみると、見知らぬ寝室で、少し大きめのベッドに俺たちは眠っていたらしい。

 まさか……。
 やっぱりあった。スマホ。日時を確認すると、一〇年後の七月下旬だ。

 タイムリープが解除されてる。

 てことは、この状況………………。
 夜戦を終えた翌日の朝じゃねえか!

 大事なシーンの記憶がねえええええええええええええ!
 戻ってきた俺と現代で生活している俺の記憶が共有できないことが、こんなに悔しいとは!

「そんな驚いた顔をして、どうしたの?」

 するり、と裸の柊木ちゃんが俺に抱きついてくる。

「わああああああああああああああ!? 俺は俺であっても昨日の俺じゃないのでどうか服を着てくださいいいいいいいいいいいいい!」

 この感じ、絶対に昨晩がはじめてじゃないだろ!
 な、何回したんですかねえええええ!?

「ここ、誰の家?」
「誰の家って……ふふ。誠治君とあたしの家だよ? 寝ぼけてるの?」

 うふふ、と貞淑な笑顔で俺の乳首をつんつんとつつく。
 ……一〇年後でもやっぱりつつくのは好きらしい。

「昨日の夜、あんなにバッチバチだったのに。それも忘れちゃったの?」
「ば、バッチ、バチ……!?」
「うわ。真顔だ」

 目のやり場に困るので、大人度の上がった柊木ちゃんにはTシャツを着てもらう。

 俺は若干記憶喪失という設定で、状況を説明してもらうことにした。

「今は、二人でこのマンションに住んでるんだよ? 思い出した?」
「そ、そういえば、そうだった……」

 内心まじかよ、と思いながら調子を合わせておく。

 前回タイムリープが解除されて戻ってきたときは、同棲すらしてなかった。
 教師になった俺の家に、柊木ちゃんが朝ごはんを作りに来てくれていて……。

 そうだ。同棲できなかった原因のひとつが、柊木ちゃんパパに俺を認めてもらえなかったからだ。

「同棲するときって……やっぱり大変だった?」
「えー。それも忘れちゃったの? っていっても、もう三年も前か」

 もう同棲して三年。結構長いな。

「お父さんと何回も話してダメだったけど、夏海もお父さんの説得を手伝ってくれて、それでようやくオッケーが出たんだよ?」

 おお……夏海ちゃんが。
 夏海ちゃんと知り合って俺たちの関係をバラしたのは正解だったんだ。

 またタイムリープしたら、夏海ちゃんになんか買ってあげよう。

「じゃあ、今は結婚を前提に同棲を?」
「結婚はまた別の話って言われたでしょ、お母さんに」
「今度は柊木ちゃんママのほう!?」

 んー。同棲したらその流れで結婚するっていうイメージだったんだけど、別なのか?

「でも、この前茶道室にこもったあと、先生、エッチは結婚してからって……」
「この前ってすっごい前の話だね。ふふ。…………そんな話は、先生、覚えてませんので……」

 ぷい、と顔を背けた。
 とぼける気だ。
 すっごい前の話って覚えてたくせに。

「我慢できなかったんだ?」
「そ、それはお互い様だからっ。あたしだけじゃないからっ」

「へえ。じゃあ俺はともかく、春香さんも我慢できなくなった、と……」
「もおおおおおおおお、からかわないでええええええ」

 枕でボスボスと俺を叩いてくる柊木ちゃん。
 大人度が増しても可愛い人である。

 それはともかく、状況をまとめると、同棲はお許しが出て現在一緒に暮らしているけど、結婚まではまだってことか。

「結婚、できそうかな。俺たち」

 柊木ちゃんが少しだけしょんぼりしてしまった。

「夏海が、お父さんを説得するとき、あたしたちがどれだけ純愛してるのか力説したんだけど……そのときに、いつから付き合っているのか訊かれて……答えるしかなかったみたい」

 柊木家の内情をぽつぽつと教えてくれた。
 どうやら、夏海ちゃんの力説に免じて同棲までは許すけど、結婚となると話は別で、とくに柊木ちゃんママは世間体がどうしても気になるそうだ。

 自分の娘が現役の高校生と付き合っていた、というのが衝撃だったらしい。普通に考えれば誰だってそうなるだろう。

 俺が現在成人しているとはいえ、どうしてもその点だけは譲れないという。

「同棲までは許してるんだから、お母さんを説得させられるのも時間の問題だとは思うんだけど……」

 そう言って、柊木ちゃんは俺を安心させようとするけど、当の本人が不安そうだった。

 同棲してるんだから、たとえばデキちゃったとしても、それは不可抗力のようなものだと思う。けど、そんな強引に結婚したところで、柊木ちゃんと家族の間に溝を作ることになりかねない。

 やっぱり、俺は柊木ちゃんを幸せにしたいから、結婚だって、満場一致で背中を押してもらうくらいの結婚じゃないと。

 駆け落ちっていう選択肢もあるのかもしれないけど、結局それは逃げてるのと一緒だ。

「……ごめんね……あたしが、誠治君が大学生になるまで待つことができていたら……」

 ぐす、と柊木ちゃんが涙をこぼした。
 そんなことないよ、と抱きしめる。

「そのおかげで、俺は今すっげー楽しいよ。好きな人と高校生活送ることができて幸せだよ」
「誠治君んんん……」

 ふみぃいい、と相変わらず変な泣き方で、柊木ちゃんは俺の胸で泣いた。

 ……俺が告らなければって一瞬思った。

 けど、そんなことをすれば、俺はまたいつかのように遠目で柊木ちゃんを見ているだけの日々を送って、卒業式に想いを伝える勇気すら持てないヘタレになっちまうかもしれない。

 卒業式に告白できたとして、状況が変われば、柊木ちゃんの返事だって変わる可能性も高い。
 柊木ちゃんに好きな人がいたり、違う誰かと付き合っている可能性だってあるんだ。

 道徳や倫理的に、俺たちは間違ったことをしたのかもしれない。

 けど、お互い嘘はついていないし、真剣にまっすぐ恋人として付き合いを続けている。
 現代では、なんだかんだで一〇年も恋人を続けられていて、別れていない。

 そんで、いまだにこの通りラブラブ。

 だから、俺が告白して、柊木ちゃんがOKしたあの日に、間違いはない。

 ――お。来た。タイムリープの感覚。

 パチっと目を開けると、柊木ちゃんの顔が目の前にあった。

「うわ!?」
「わ。びっくりした……」

 エアコンの効いた、見慣れた柊木ちゃんちだった。
 外でセミが鳴いている声が小さく聞こえる。

 よし、また戻ってこられたらしい。

「なんか、寝言言っているなーと思って、耳を近づけてたの」
「あ、そうなんだ?」

 よく聞き取れなかったけど、と笑って、俺に膝枕をしている柊木ちゃんは、頭を撫でてくれた。

「どんな夢見てたの?」

 あの感覚は何度も経験したタイムリープの感覚だから、夢じゃない。
 今日の一〇年後がああなってるってことだ。

「んー春香さんのお母さんに、結婚を反対される夢」
「えー、何それー」

 つまらなさそうに、柊木ちゃんは唇を尖らせる。

「ちょっと真面目な話するよ」
「うん」

「俺は、先生に告ったあの日のことは、一生後悔しない。だから……」
「うん。あたしも、OKしたことは後悔してないよ」

「もしかすると、俺たちのことを反対する人が出てくるかもしれないけど」
「年の差も少しあるし、先生と生徒だったって事実はもう変わらないもんね。だから、これから頑張っていこうね、二人で」

「プロポーズの予約とか、しててもいい?」
「そんなの要らないよ? 他にしてくる人いないんだから。だから……待ってます。ずっと、待ってます」

 照れながら微笑む柊木ちゃんは、やっぱり可愛い。

 ぎゅっと抱きしめると、細い体はすぐに俺の胸に収まった。

「春香さん、愛してる」
「うん。あたしも。愛してるよ、ずっとずっと」

 現代と過去を一往復したことがきっかけで、また少し俺と柊木ちゃんの絆は強くなったのだった。

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おっさんに変身した世界最強のバハムートが、愛娘と一緒にFランク冒険者になるようです
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