表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/173

柊木ちゃんと温泉旅行2

 海鮮料理を中心とした豪華な料理を堪能したあと、お風呂の時間と相成った。


「先にどうぞー」


 と柊木ちゃんが言うので、お言葉に甘えて先に入った。

 檜風呂にぼんやり浸かっていると、カラカラ、と扉の開く音がする。


「わっ。思った以上にいい感じ♪」


 振りむくと、タオル姿の柊木ちゃんがいた。


「うわぁああああ!? なんで!? 先にどうぞって言ったのに!」

「だってぇ。誠治君、あたしが先だと入ってこないでしょー?」

「当たり前だろ!」


 柊木ちゃんと付き合いはじめて、ブラジャーをぽいしたり、スカートをぽいしたり、パンツ丸見えだったりするような事態に遭遇することは多々ある。


 けど、タオル一枚ってのは、むしろ素っ裸よりもエロい……。


「背中流すよー? おいで」

「おいでって……」


 俺の大将、ノーガード状態なんだけどどうしたらいいの?

 防具ゼロなんだけど。

 誰か入ってくるなんて思ってなかったから、タオル持ってきてねえ……。


 ボディタオルは、今柊木ちゃんが手にして、全力で泡立てている。


 ……パン一までならあるけど、俺は大将を柊木ちゃんに見られたことはない。


「早く早く」

「自分で洗うからいいってば」

「えー。あたし、これが一番楽しみだったのにぃ……堂々と混浴して背中流し合いっこ……」


 くっそ……ズルくないですか。

 大変な仕事を超頑張ったっていうのを知っている俺に、そんなこと言うの。


「……そっち行くから……あ、あの……目、つむっててもらっていい?」

「やだ、誠治君可愛いー! 女の子みたい」

「だまらっしゃい」


 ばしゃ、とお湯をかけると、「きゃー!」と柊木ちゃんは楽しそうな悲鳴を上げた。


「タオル巻いてないんだよ」

「へえ、そっかそっか……え。丸出しってこと……!?」

「そ、そうだよ!」


 ノリノリだった柊木ちゃんは、かぁーと顔を赤くした。


「な……なんで巻いてないの? あたしがくるって、わかってたでしょ?」


「わかってたら、こんなに動揺してねえよ」

「わ、わ、わかった。あたし、絶対目開けないから」


 ぎゅむっと目をつむって、木製の高そうな小さな椅子をぽんぽん、と叩く。


『誠治君の大将を見るのはまだ恥ずかしい』より、『背中流し合いっこしたい』が勝ったんだ……。


 覚悟を決めて浴槽から出る。さささ、とカニみたいな敏捷性を発揮し椅子に座った。


「い、いいよ。開けても」

「はい……慎んで開眼いたします」


 慎みすぎてよくわからない日本語だった。


「わ。すごい。広くて綺麗な背中……」

「そう?」


 ごしごし、と柊木ちゃんは俺の背中を洗いはじめた。


「強くない? 大丈夫?」

「うん。ちょうどいい」

「かゆいところないですかー?」

「ないです。って、それ美容室のやつ」

「前失礼します」

「失礼すな」


 脇の下から伸びてきた腕をがしっと掴んでストップをかける。

 てか、背中。ほぼ密着してるんですけど……。

 大将が活気づくから離れてほしい……。


「前は自分で洗うから! タオル貸して」

「えー?」

「洗いっこってことになると、俺も春香さんの前を洗うことになるよ?」

「……」


 す、とタオルを渡された。ご理解いただけたようで何よりだ。

 一通り洗い終えると、柊木ちゃんがシャワーで湯加減を調整してくれる。


 タオルを巻いてかがんでるせいで、こぼれそう……。

 しかもタオル、濡れて体に貼りついててエロい……。


 ざざざ、と柊木ちゃんに洗われて攻守交替。


「べ、別に誠治君が面倒だって言うなら、あたしのは洗わなくてもいいんだよ?」

「俺があんだけ嫌だって言ったのに、自分だけ逃げようってのは、ちょっとズルくないですかねえ、先生」


 タオルをほどいて、背中を見せてもらう。

 真っ白でとても綺麗な背中だった。


「失礼しゃーす」

「ひゃう」


 ごしごし、ごしごし。


「どう?」

「結構気持ちいいかも」


 柊木ちゃんは、体を包んだバスタオルを抱きしめるようにしている。

 

「こことかどう?」


 肘を持って上げる。


「脇はダメぇえっ」


「二の腕柔らかっ」

「もおおお、ぷにぷにしないでええええええ」


 耳まで真っ赤にする柊木ちゃんが可愛くて、ついからかいたくなってしまう。


 先行ってて、と促され、露天風呂で待っていると、ちゃぷん、と柊木ちゃんもやってきた。


 タオルは置いてきているようで、腕で胸を抱いていた。


 見入ってしまったけど、慌てて目をそらす。


「本当にすごい旅館を予約したんだね、春香さん」

「せっかくだからねー。気に入ってくれた?」

「うん。それもこれも、先生が仕事を頑張ったからだよ」


「二人のときは先生じゃなくて春香さんでしょー? もう、わざとでしょ」


 ついにバレた。

 怒ったフリをしながら、柊木ちゃんは俺のほっぺを掴んで軽く引っ張る。


「あたしが頑張ったんじゃないよ?」

「ん? じゃあ誰が?」


 するり、とお湯の中で腕を組んで、俺の肩に頭をのせる。


「誠治君が、あたしを頑張らせたんだよ」

「ていっても、俺、なんもしてないよ?」


「いいの、いいの。一緒にいてくれるだけで、十分なんだから」

「物は言いようだなぁ」

「そんなこと言わないの♪」


 そんなふうに他愛ない会話をひそひそと繰り返す。

 空には月も出て、雰囲気は抜群だった。


「のぼせるから、そろそろ出よう?」

「柊木春香は、もう、のぼせてます……」

「え、大丈夫?」


 柊木ちゃんははにかみながら、ぼそぼそと小声で言った。


「誠治君にのぼせています……もう、お熱です……全然大丈夫じゃない……。誠治君は?」


 頬を染めながら、そんなことを言う柊木ちゃんは、やっぱりズルいと思う。


「俺もお熱です」


 目をつむって唇を差し出してくる柊木ちゃん。

 リクエストに応えて、キスをする。


「もう一回……」


 ちゅ。


「もっと、して。足りない……」


 甘い声に理性が吹っ飛びそうになる。


 このあと、イチャつきすぎたせいで本当にのぼせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作 好評連載中! ↓↓ こちらも応援いただけると嬉しいです!

https://ncode.syosetu.com/n2551ik/
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ