表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果  作者: ケンノジ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

157/173

教室でこっそり


 再びタイムリープで一〇年前にやってきた。

 日時は、ゲームを買って紗菜と解散してから二時間ほどしか経っていない。


 クリスマスプレゼントを買うため、デパートに立ち寄り、柊木ちゃんが仕事をしているであろう学校へとむかった。


 プレゼントの費用は、ATMで引き出した虎の子の三〇〇〇円で工面した。

 これでついに底を突いてしまった。

 喜んでくれるのかどうか自信はないけど、喜んでくれたらいいなと思う。




 最寄り駅に着くと、自転車で学校を目指し一五分ほどで到着した。


「正面の昇降口は閉まってるのか……」


 部活の生徒がいるから開いているかと思ったら、そうじゃなかった。

 今日は校内で活動する部活はないのか?


 仕方ないので職員用の駐車場に回ると、見慣れた柊木ちゃんの愛車を発見。


 そこから職員室が見える。窓から覗いてみると中はがらんとしていた。


「あれ?」


 柊木ちゃん、どこ行ったんだ?

 車があるから、学校にいるにはいるんだろうけど。


 勝手口が開いていたので、そこからお邪魔する。

 柊木ちゃんのデスクには、開かれたノートPCが青白い光を放っていた。画面には作成中の文書が映っている。


 トイレで席を立ったのかと思って待ったけど、戻ってくる様子がない。


「?」


 本当にどこ行ったんだろう。

 しん、とする校舎内を歩き回り、もしやと思って教室へやってくる。


 物音がするので扉を開けて見てみると、柊木ちゃんがいた。


 ……何してんだ? …………俺の席で。


「誠治君……いっぱい教科書やノート置いて帰って……冬休み勉強する気ないのかな」


 引き出しの中を覗いて、楽しそうにつぶやく柊木ちゃん。

 やれやれ、と入ろうと思った瞬間だった。


 ぺちゃん、と机に突っ伏した。


「ふふ。誠治君の机……」


 ……。


「ロッカー、ロッカー……あ。体育のジャージも持って帰ってないー!」


 ……。


「仕方ないなぁ。春香さんが持って帰ってお洗濯しちゃお♪」


 ……それはいいけど。


「すんすん。…………誠治君ちの洗剤のにおいする。……ふふっ。あんまり着てないな、さては。冬場だから汗かかないのかな」


 これは、あれか?

 放課後、好きな子のリコーダーをこっそり舐めちゃう的な?


 俺が様子を観察していると、気配らしき何かを感じ取ったのか、柊木ちゃんがおもむろに後ろを振り返った。


「え……や、やだ――い、いやぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?」


「叫びたいのはこっちのほうだ!」


 思わず俺のジャージを抱きしめる柊木ちゃん。


「何で、ナンデ!? 今日は紗菜ちゃんと遊ぶんじゃ――? 何でここに誠治君がっ!? い、いつからここに――」

「早めに解散したんだよ。仕事頑張ってるかなーと思って様子を見にきたら……生徒の机を漁って……俺のジャージをクンクンして」

「し、してない! してないから!」


 はっと抱きしめてしまったジャージに気づいた。


「こ、これは畳んであげようと思って!」


 などと供述をしており。


「もう……見つけたのが俺でよかったよ。先生、それ、マジで逮捕だからね」

「う、うう……っ。だ、だって今日は他に先生は来ないって話だし、校内でやる部活は休みだし」


 だからってやっていい理由にはならないぞ?


「――って、今は先生じゃなくて春香さんでしょー?」


 おなじみのセリフも、今日は説得力がいまいち欠けていた。

 やれやれ、とため息をひとつついた俺は、藤本の席に座る。


「ひ、ひいた?」

「大丈夫。ちょっとだけだから」

「ひいちゃってる!」


 ガガーン、とショックを受けていた。


「仕事の応援に来たのに」

「ご、ごめんなさい」


 俺は買ってきたプレゼントを渡した。


「……ベタだけど、これ」


 デパートの花屋さんで買ってきた、プレゼント用にラッピングされた一輪の薔薇。


「え? あたしに?」


 メッセージカードつき。メッセージは電車の中で書いた。何が書いてあるかは内緒。


「もちろん」

「あ、ありがとう! 嬉しい! 花瓶で大事に活けておくね!」


 ぱぁぁぁ、と柊木ちゃんは目を輝かせている。


「どこに花瓶置こうかなぁ。あ、でもあんまり可愛くないから、帰りにイイ感じの花瓶買おうかな……?」


 ううん、と唸る柊木ちゃん。でもどこか楽しそうだった。

 喜んでもらえたみたいで何よりだ。


「こうしてると同級生みたい。席が隣同士の柊木さんと真田君。……今日クリスマスの誰もいない教室に呼び出された柊木さんは、真田君からお花のプレゼントを渡されて、愛の告白をされるんです」


 えへへ、ロマンチックぅー。と妄想大爆発の柊木ちゃんだった。


「っていう現実逃避はいいから。職員室帰って仕事しよ?」


「ノーモア! 現実主義! 妄想の余地を現実で塗り潰すな!」


 ストライキ中の労働者みたいにプラカードを掲げて反論してきた。

 どこでそんなプラカード作ったんだ。


「他に誰かいないとも限らないから。早く行こう」


 プラカードをポイさせて、強引に手を引いて教室を出る。


「真面目な誠治君は、鬼みたいに厳しいんだから……」

「やることはちゃんとやる。大人でしょ」

「はぁい……」


 職員室に戻ってくると、二人分のコーヒーを淹れてくれた。


 お礼を言って受け取る。


 キーボードを叩きながら柊木ちゃんといくつか雑談をした。

 それが途切れたところで、本題に入った。


「春香さん。たぶん、紗菜が俺たちのことに気づいたみたい」

「……え? どうして?」

「デジカメの中にあるデータ、あれ、入れたままだったでしょ?」

「あ」


 ようやく柊木ちゃんは気づいた。


「ごめん! あたし、いつも別のパソコンにデータは移してるのに、忘れてて――」

「ううん。俺も気づかなかったから」


 中に入っているデータは、過去三、四回分のデートの写真だと柊木ちゃんは言った。


「全部見たわけじゃないにせよ、紗菜は確信的な言い方をしたから」


 柊木ちゃんが個人的に持っているデジカメに、プライベート感ばっちりな俺が映っていれば、誰だって勘繰るだろう。


「だから、俺たちのことを、紗菜にも打ち明けようと思う」

「……誠治君は、それでいいの?」

「うん」


 信じてって言われたからな。どうにかするから、って。

 俺は、俺の妹を信じる。


 それから二人で、いつどうやって打ち明けるかの話し合いをした。


 ……これで、別れるのは回避できるんだよな?

 紗菜に打ち明ければ、夏海ちゃんみたいに味方になってくれて、バッドエンドにはならないんだよな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作 好評連載中! ↓↓ こちらも応援いただけると嬉しいです!

https://ncode.syosetu.com/n2551ik/
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ