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高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果  作者: ケンノジ


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クリスマス5



「本当は、って何だよ」


 俺が嘘ついたみたいじゃねえか。

 ……まあ、藤本と遊んでいたっていうのは、完全に嘘なんだけど。


「イブだからってわけじゃないのよ」


「……」


「金曜や土曜は夜遅くに出かけたり、朝早くから家を出たり、家を空けることが多いじゃない」

「……そうだな」


 勘づいたのか……?

 彼女(ひいらぎちゃん)の存在に。

 どこかへ行くとわざわざ教えることはないけど、インドアな俺が毎週末どこかで過ごしているっていうのは、紗菜からすると不思議で不自然に映ったんだろう。


「だから……誰と出かけてるんだろうって、ちょっと、思っただけ」


「何だよ、おまえ、兄さんが誰と遊んでるとか気になるって、ブラコンじゃねえか」

「ち、ち、違うわよっ!」

「人のことを、さんざんシスコン呼ばわりして……まったく」


 やれやれ、と俺は頭を振ってみせる。

 けど、紗菜は確信があるんだろう。

 はっきりと口にしないけど、雰囲気がそうだと言っている。


「……もし、俺に恋人がいたとして――」


 俺の語りかけに、一度紗菜がうなずく。


「どんな人なら、嬉しい?」


 真面目なトーンの質問に、紗菜は手元のコーヒーに目線を下げる。


「嬉しいっていうか、『まあいいんじゃない?』くらいに思えるっていうか」


 補足をいくつかして、紗菜の発言を待つ。


 手慰みのように、カップをティースプーンで一周だけかき回す。


「わからないわよ、そんなの」

「わからないって……」


「に、兄さんは、どうせ結婚もしないし、できないんだから恋人なんていなくってもいいのよ」

「すげー暴論……。……まあ、将来的な話っていうか、もしもの話だからな」


 口をへの字にして、何かに耐えるように紗菜はテーブルだけをずっと見つめている。


 待っても待っても、返答はなかった。


 いつの間にか窓の外に見える通りも人が増えてきて、カップルが目立つようになった。


「出よう」


 何も言わない紗菜を促して、俺たちは店を出る。


 柊木ちゃんとのことを、紗菜に打ち明けていいのか、わからなかった。


 夏海ちゃんみたいに、物分かりのよさそうな子が妹なら、俺もそうしたかもしれないけど、さっきの反応を見る限りでは、まだ様子を見たほうがいいのかもしれない。


 ……全員に背中を押してもらえるくらいの結婚、か。


 柊木母娘の不仲問題のときに、自分で言ったことが、今は少し重い。


 もし、打ち明けて反対でもされたら、それこそ現代で発生している不仲問題のきっかけになりかねない。反対されたからって、俺は柊木ちゃんと別れたりはしないし。


 でも、来年に別れるんだよなぁ……。


「ソフト買ったら、昼飯食べよう。何食いたい?」

「……いい。サナ、帰るから」


「あ……そう?」


 それから、よく行くゲームショップまで足を運んだ。

 クリスマスセール中ということもあって、店内には人が多く、狭い通路を人とすれ違うだけでも、一苦労だった。


 紗菜が選んできた三本を俺に渡す。

 さっきの話にあった通りのものだ。


 いつもなら、他にも目移りして、あれこれと時間が長引くけど、今日はもういいらしい。


 レジに並び、支払いを済ませる。

 どうにか足りた。マジで危なかった。昼飯食うか? なんて言っておごる気でいたけど、帰りの電車賃もなくなるところだった。


「ほい、これ。メリクリ」

「うん」


 ゲームショップのロゴが入ったレジ袋を渡すと


「サナ、帰るから。ここで解散しましょ」


 そう言って、てくてく、と足早に紗菜は歩き出した。


 昼飯よりも、早く帰ってゲームしたいんだな。くらいに、俺は思っていた。


 せっかくだし、柊木ちゃんにプレゼントを買って、学校に顔出してみるかな。



◆真田紗菜◆


『……誠治君、何て言ってた?』

「サナもはっきりと訊かなかったから……」

『……そか』


 一人で誰もいない家に帰り、カナちゃんに電話をした。

 昨日のお礼も兼ねて、今日のことを伝えた。


 家庭科部のクリスマス会のことを昨日話すと、「実際のところどうなんだろうね」とカナちゃんは言った。


「兄さんはどうしてサナには腹を割ってくれないのかしら」

『……一番味方になってほしい人だから、じゃないのかな』

「一番、味方に?」


 うん、と言ってカナちゃんは続ける。


『……RPGでも、選択肢次第で仲間になったりならなかったりするキャラいるでしょ。仲間にすれば心強くて、敵に回すと手強い。対応を間違えると敵になっちゃう。そのリスクを考えると、まだ接触は避けておこう、みたいな』


「なるほど……」


 わかりやすい。

 カナちゃんが言う通りなのかどうかはわからないけど、もしそうなら、兄さんは、サナに味方についてほしい、ってことになる。


 ――どんな人なら、嬉しい?


 あの一言が、探りの言葉だったんじゃ……。


『……さーちゃん、心の準備はもういい?』

「半年以上かけてしてきたから……。だからといって大丈夫ってわけじゃないけど……」

『……ふふ。大人になったね。偉い偉い』

「子供扱いして……もう」


 口ではそう言ってみせたけど、やっぱりまだ胸の内がズキズキと痛い。


 モヤモヤするし、ズキズキするし、気分は最悪。


 隠すなら、きちんと隠しなさいよね。本当に……。

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