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高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果  作者: ケンノジ


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見られたくないものもある


 昨夜、DVDの忘れ物をした俺は、日曜日の朝早くから柊木ちゃんちにやってきた。


 どうしてわざわざ朝早くやってきたのかっていうと、持っていったけど結局その映画は見なかったのだ。

 それだけならいいけど、パッケージを開けなかったことで、一抹の不安が残った。


 中身、ちゃんとパッケージ通りだったか? って。


 俺が適当な性格のせいで、DVDやらAVやらがシャッフルされまくって、どれに何が収まってるのかさっぱりわからないのだ。


「今度取りにくればいいよー」と柊木ちゃんは言っていたけど、早いに越したことはない。


 チャイムをピンポンと鳴らす。


 朝の八時。柊木ちゃん、起きてそうだなぁ。


 待っていると、扉のむこうでカチャンと鍵を開ける音がした。


「……はぁい……」


 めっちゃ眠そうな声だ。

 ちょびっと扉が開くと、俺は見えるようにその隙間に顔を出した。


「春香さん、おはよう」

「えっ! せ、誠治君っ!?」


 バタン! と扉が閉められた。


「え、ちょ、何で!?」


 おかしい。思っていた反応と違う!

 常にウェルカム感満載で出迎えてくれるのに。


「きょ、今日はバイトの日でしょー? ど、どうしたの?」


 何をそんなに慌ててるんだ?

 俺に見られちゃマズイものでも……。あ。ま、まさか、違う男がいるとか……!?


 そんなわけ……そんなわけない……。


「どうしたって、こっちのセリフだけど! 何でいきなり閉めるの!」

「そ、それは……」


 言いにくそうに口ごもってしまった。


 お、おい……嘘だろ、柊木ちゃん。


「よ、用件を聞かせて!」


 カチャカチャ、とドアチェーンをかける音がした。

 そんなに俺を入れたくないのか……。


「忘れたDVDを取りに来たんだけど」

「わ、わかった、ソファのところにあるから、取ってくるね。待ってて」

「部屋に上がらせてほしいです」

「何で敬語?」

「うちの彼女が不貞を働いていることもなくはないので」

「そ、そんなことしてないから! てか敬語やめてっ」

「じゃあ何でチェーンをしたり、俺を廊下に立たせっぱなしなの」

「うぅぅ……じゃ、じゃあ、三〇秒、三〇秒だけ待って! チェーン外すから」


 何の時間だ? 間男をクローゼットに収納する時間じゃあ……。


 あぁぁぁぁ……バイトどころじゃなくなってきたぁぁぁぁ。


 もやもやしているうちに、ようやく扉を開けてくれた。


「お待たせ」

「春香さん、それどうしたの」

「何でもないの、何でも。えへへ」


 柊木ちゃんは、トンボみたいなでっかいサングラスとマスクをしていた。

 風邪気味? 昨日はそんな感じしなかったけど。それと、部屋の中でサングラス……?

 さっきはどっちもしてなかったような。


「ささ、上がって上がって。朝ごはんまだ? じゃあバイトまで時間あるから作ってあげるね」


 なんかいきなりいつも通りになった。

 サングラスとマスクをしているから、いつも通りではないと言えばそうなんだけど。


 首をかしげながら、部屋へ上がる。

 念のため、トイレ、風呂、寝室、そのクローゼット。人一人が入れそうなところを調べたけど、何もなかった。


「じゃあさっきのは一体……」


 ちなみにDVDは、珍しくパッケージ通りの映画のディスクが入っていた。


「風邪気味?」

「え? ああ、うん! そうなの、けほけほ」


 咳がわざとらしい。


「サングラスは?」

「この部屋、朝日が眩しから」


 いや、カーテンが日光シャットアウトしてるんだけど。


 怪しい……。風貌もそうだけど、いいわけが的を外している。


 待つこと一五分。

 トースト二枚とオムレツとサラダが出てきた。それが二人分。


「待っててね」


 ケチャップを逆手に持った柊木ちゃんが、俺のオムレツに「しゅき♡」と書いた。


「こういうの、一回やってみたかったんだぁ」


 むふふと笑ってご満悦っぽいけど、表情がさっぱりわからない。


 いただきますと言って、食べはじめる。

 さすがにマスクが邪魔だったのか、それを取った。


「うん。オムレツおいし♪」


 自画自賛のできらしく、満足そうだった。

 その隙に、ひょい、とサングラスを拝借した。


「やっ、ちょ、何するのっ!?」

「何するのって……」


 両手で顔を覆っている柊木ちゃん。


「何で顔隠すの?」

「か、隠すよ、そりゃぁ。……す、スッピンなんだもん……」


 あー。そういうことか。ようやく腑に落ちた。

 いきなり扉を締めたり、俺に入れさせないようにしたり、三〇秒待ってサングラスとマスクを装備したりしたのも、全部、それを俺に見せたくないための行動らしかった。


 思い返せば、俺は常に柊木ちゃんより先に寝て、あとに起きる。

 だから、今までスッピンを見たことはない。


「大丈夫、大丈夫。きっと可愛いから」

「そんなこと言ったって、ダメなんだから。早くサングラス返して」


 く。おだててもダメか。


 かくなる上は――。


 ぐいっと両手を引っ張って、顔に貼りついた手の平を剥がす。


「ふぎゃあ!?」

「ああー。なるほど」


 隠すからどんなもんかと思いきや、あんまり変わらない。


「やめてぇぇぇ、見ないでぇぇぇぇ」


 イヤイヤと首を振って柊木ちゃんは椅子の上でジタバタする。

 まあ、眉や目元、あとはリップがないから唇あたりは、メイク後に比べれば素朴というか、そっけないというか。


「肌もキレイだし、可愛いと思うけど」

「は、肌キレイ? ほ、ほんと?」


 この誉め言葉はクリティカルヒットしたらしい。イヤイヤをやめて、まじまじとこっちを見つめた。


「うん。本当。あと、隠されると余計に好奇心が刺激されるんだよ、スッピンの先生」

「先生じゃなくて今はスッピンの春香さんだから」


「隠すような素顔でもないと思うけど」

「誠治君には、最高のあたしを見てほしいから、スッピンはダメ、絶対」

「あんまり変わらないような」


 スッピンもメイク後と同じくらい可愛いと遠回しに伝えたかったけど、これは逆効果だったらしい。


「いや、変わるから」


 低い声で真顔。そしてスッピン。迫真の表情だった。


「は、はい。すみません……」


 俺が謝っている隙に、柊木ちゃんは光の速さでサングラスを奪還して、すぐに装備する。


「サプライズで来てくれたことは嬉しいんだけど、女の子は準備があるんだから。めっ」


 つん、と鼻をつつかれる。


「了解」

「わかったのなら、よし」


 こうして、俺はバイトに出かけるまでの時間、朝食を柊木ちゃん食べながら、まったりと過ごした。


「誠治君が見たいって言うんなら、見せてあげなくもないんだからね」


 と、ツンデレみたいな発言をしていた。

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