因縁の対決1
学祭も終わって年の瀬も迫ろうかという頃。
『第一回蓮森高校ミスコンテスト開催決定!』というチラシが掲示板に貼ってあるのを見かけた。
「な、なんでこの時期に……」
こういうのって学祭のときにやるもんなんじゃないのか?
俺が首をかしげていると、
「基本的に一、二年生が出るコンテストみたいだよ?」
振り返ると、柊木ちゃんがいた。世界史の教科書と出席簿を持って、ポスターを見つめている。
三年は受験だもんなぁ。
あ、でも、受験組だけか、忙しいのは。
俺が三年のとき、クラスの四割くらいは専門学校や短大に進学っていう人だった。
推薦で大学進学組も含め、そういう人たちはすでに進路が決まっている場合もある。
だから進路が決まっている人からすると、大した迷惑でもないんだろう。
「先生も出るの?」
「……出てほしい?」
複雑。
俺の柊木ちゃんはスゲーんだぞ! ってドヤ顔ができるけど、色んな男子の視線を集めることになる。
「各クラス最低一人が必要みたいだね。ミスコンだけど、ほらこれ」
柊木ちゃんが指さした先には、『性別不問』とあった。
いや、問えよ! それ一番大事だろ!
「男子でも可愛く仕上げるんなら、それはミスコン出場資格有りってことみたい」
どうせこんなのに出たがる女子はほとんどいないから、最悪、ネタ枠として男子が出てもオッケーですよってことか。
「学校側はよくオッケーしたね。こんな時期に」
「学祭みたいに外部の人も入れるようにするらしいの。それで、まあ、受験前の中学生に『うちにはこんな生徒いますよ?』ってアピールをしたいみたい」
ははーん。なるほど。そういう下心もあるってことか。
けどまあ、そんな人柱になりたい生徒はいないだろうなー。
その日のロングホームルームでは、代表を誰にするかで揉めに揉めたけど、最終的に、若田部さんという女子に決まった。
「大道グループで一番可愛いからな、タベちゃんは」
有識者(?)藤本も納得の選出だった。
大道グループっていうのは、クラスの中心的な女子五、六人のグループで、タベちゃんってのは若田部さんの愛称だ。
まあ、確かに若田部さんは可愛い。学年でトップ5には入るだろう。
「おまえんとこのチャンサナも出るんじゃねえの?」
「出ねえだろ。引っ込み思案オブザイヤー受賞級なんだぞ?」
「どうかねー」
まあ、どのクラスもこんな感じで代表を決めてるんなら、嫌々引き受けるってこともなくないのか?
でも、紗菜は本当に嫌なら、何が何でも回避するってタイプでもある。当日になって学校休んだり失踪したり余裕でしそうだな。
放課後帰っていると、後ろから走ってきた紗菜が追いついた。
「よ。お疲れ」
「お、お疲れ? 何が?」
「あ、わりい。大人の挨拶しちまったぁー。おまえにはまだ早かったわー」
「たった一歳違いなのに大人アピールがウザいんだけど」
呆れたように半目をする紗菜に、俺は小さく肩をすくめた。
外見は一歳違いだけど、中身はそうじゃないんでね。
紗菜が放課後直前にあったミスコンの代表の話をさっそく振ってきた。
「兄さん、ミスコン出るの?」
「出ねえよ。こちとら日本男児だぞ」
ふーん、ととくに興味なさそうに鼻を鳴らした紗菜。
「もしかして、紗菜、代表に……?」
「なりかけたけど、なったら自殺するって言ったら、みんなドン引きして違う人になったわ」
「だろうな! そりゃみんな何にも言えねえよ。でも、それ盾にするってズルくね?」
「それくらい嫌ってことよ」
そんなこともわかんないの? と言って、フンと顔を背けた。
「……兄さんは、もしサナが出たら…………お、おう……し……る?」
よく聞き取れなかった。
「え? 何って言った?」
「だからぁ……」
そのとき、携帯がメールの受信を告げた。
柊木ちゃんからだった。
『色んな先生方に拝み倒されて、柊木先生は……ミスコンに不本意ながら出場することになってしまいました(><;)』
……先生も代表が一人必要なのか。
そうなってくると、選択肢はリーサルウェポンの柊木ちゃん一択になるのは想像に難くない。
「なんか、柊木ちゃんがミスコン出るらしい」
「へえー。ふうん」
唇を尖らせる紗菜は、どこか不満げだった。
審査内容は、カラオケ、コスプレ、私服、特技の四つ。水着はコスプレの中に含むらしい。
やりたい人は水着でもオッケーってことのようだ。
柊木ちゃんの水着姿は見たいけど、他の男には見せたくないという、複雑な男心。
そういや、カラオケはデートでも行ったことがない。
柊木ちゃんって、歌えるのか……!?
「兄さん、柊木先生のこと応援するの?」
「そりゃ顧問だし、仲のいい先生なら応援するよ。先生じゃなくても、仲いい女子とかでもそうだよ」
テクテク、と歩いていると、紗菜が立ち止まっていることにようやく気づいた。
「どうかした?」
きゅっと紗菜が拳を握った。
「サナ……で……」
「え、何?」
「ひ、柊木先生が出るんなら――」
紗菜は決意を大声で叫んだ。
「さ、サナも出る――――っ!」
ま、マジかよ。……でも……ナンデ? どうした、いきなり。
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