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高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果  作者: ケンノジ


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突破の鍵

書籍版4巻が3月15日、漫画版1巻が3月13日発売です!

どちらもよろしくお願いします!


「何でだ……?」


 おっかしいな……。あれで正解だと思ったんだけどな……。


「先輩~。眉間、眉間に皴、できてますよ~?」


 うりうり、と隣に座る怜ちゃんが、俺の眉間を触る。

 ちびっ子怜ちゃんじゃなくて、ハタチの怜ちゃんだ。


 ……というわけで現代。

 どういうわけかは察してほしい。


 HRG社内の会議室に、俺と怜ちゃんはいた。


 ふうむ、と俺がでっかいため息をつくと、怜ちゃんが俺の手を取る。


「ボクの太もも、触ります? そうしたら元気出ます?」

「そういう問題じゃねえんだよ……」


 思わず、怜ちゃんの太ももにちらっと視線が行ってしまった。

 バイトだから私服でオッケーの怜ちゃんは、短いスカートを今日は穿いていた。

 綺麗な脚しやがって……!


「わっ。すごくボクの脚見てる……くふ。先輩のえっち♡」


 そうだよ、えっちだよ。悪かったな。


「先輩、真面目で律儀だから誘っても全然ノってこないし……ボクは、先輩が誰を好きでも、構わないのに。シたくなったら言ってくださいね……?」


 こそっと耳打ちをするな。ドキッとするわ。

 ずいぶん大人なことを言うなーと思ったけど、今ハタチなら、精神年齢は三〇だ。


 まだ小難しい顔をする俺に、怜ちゃんがつまらなさそうに唇を尖らせた。


「んもう、据え膳食わぬは男の恥って、教わらなかったですか?」

「教わった。ただ、毒が盛られているお膳を食えとは教わらなかったな」

「きゃ♪ 薬にならないならいっそ毒になろうっていう、ボクの志を理解してくれてるんですね♪」


 チューをしてこようとするポイズン怜ちゃんの顔を掴んで遠ざける。


 前回、前々回では、現代で柊木ちゃんと別れていた。


 怜ちゃんが、「手を出さないなら出さないで女の子は不安になる」的なことを言ってたから、俺は何もしないのが原因だと思っていた。


 でも違った。

 今回の現代も、俺は柊木ちゃんと別れていた。


「俺なりに思い切ったんだけどなぁ……何でなんだ? そこは無関係なのか……」

「あ、先輩。そろそろ会議のお時間なので、ボク、フロアに戻りますね」


 ちゃお、と言って、怜ちゃんは会議室を出ていった。それと入れ替わりに書類とノートPCを小脇に抱えた夏海ちゃんがやってきた。


 大人バージョンの夏海ちゃんは、黒ぶちの眼鏡をかけていて、雰囲気がお母さんの愛理さんによく似ていた。

 立ち去った怜ちゃんのほうをちらっと振り返ってから言った。


「仕事中に、変なことしてないでしょうね」

「してないよ」

「高校のときから、何だかんだで、ずううううっと誠治さんのそばにいるもんね」


 夏海ちゃんが持っている書類を一部俺に渡してくれた。


『モバイルコンテンツ事業部について』


 この現代では、課じゃなくて部になってる。

 さっき、怜ちゃんに状況を確認したところ、今俺は夏海ちゃんの部下だそうだ。


 ちなみに、婚約状態ではなく、俺は今まで通り真田誠治のままだった。

 夏海ちゃんは、新規事業の若手部長。俺が部長補佐。ていっても、事業部には、俺を含めあと数人しかいないらしいけど。


 会議室にある電話が鳴った。夏海ちゃんがすぐに出る。


「ああ、はい。わかりました。六階の会議室までご案内してください」


 内線らしく、それだけ言って受話器を置いた。

 夏海ちゃんにも状況確認をしていくと、アクティ・ソフトワークス――前回買収企画がまとまった開発会社は、すでにHRG社の傘下にあるという。


 話を聞いていると、会議室の扉が開いた。


「……失礼します」


 ぺこり、と律儀に頭を下げ、顔を上げた。

 そのASW(アクティ・ソフトワークス)の担当者、井伊さんこと奏多のご登場だ。

 大人になっても奏多は何にも変わらないな……。


 スーツが全然似合ってなくて、スーツに着られている感がすごい。


「お疲れ様。ささ、座ってどうぞ」

「……はい」


 夏海ちゃんに勧められるがまま、奏多は席についてノートPCを取り出す。

 事務員さんが人数分のお茶を運んで来てくれたところで、会議がはじまった。


 難しい単語が飛び交い、ほとんど今の俺には何を言っているのか半分も理解できなかったので割愛しておく。

 今新しいソシャゲを作る企画段階だけど、問題がいくつかある――ってのはわかった。


「……ASW(うち)のエースが……この提携自体にあまり乗り気じゃなくて、最悪他社に移籍するかも。気まぐれというか……困ってる……」


 ちらっと奏多が一度俺を見る。


「あー……その話は、なんとなく噂で聞いてるよ。原因というか……」


 ちらっと夏海ちゃんが一度俺を見る。


「え? 何で二人とも俺を見るの?」

「ASWさんには、それはそれは綺麗でモデルみたいに細い、新進気鋭の人気キャラクターデザイナー様がいるんだよ。貧乳のね」


「……そう。うちとしては、売上は彼女頼みなところがある……抜けられると、非常に厳しい」


 もうわかるでしょ、みたいな顔を夏海ちゃんにされた。


「もう、何で喧嘩してるの? それが原因でしょ、どうせ。あんなに超ド級ブラコンだったのに。喜びそうな話だと思ったら、そうじゃなかったみたいだし……」

「……誠治君、早く仲直りして。絶対に、ネックになっているのはそこだから」


 喧嘩……? 超ド級ブラコン? 『超ド級ブラコン』ってなんか怪獣みたいだな。


「その口ぶりからして……ま、まさか、うちの妹のことか……!?」


 二人が同時にうなずいた。

 うちのさーちゃんが……? 人気キャラクターデザイナー??

 想定外過ぎて、頭がこんがらがってきた。


 ん、待てよ。

 俺が貸したゲームソフトを失くしたとき、紗菜の部屋のクローゼットの中を漁った。

 そのとき、スケッチブックが出てきた。中は見せてくれなかったけど。


 あの頃か、それよりも前か――イラストとかキャラクターデザインに目覚めたのは。


 あぁぁぁ……言いそうにねえ……陰でこっそりやるタイプだ、あいつは。

 そういや元々、ゲーム会社に勤めて奏多の後輩になるっていうのは……規定路線だったな。

 どんな仕事なのかまでは教えてもらったことがない。


 で、その紗菜と俺が喧嘩? してる……。


「何で俺、紗菜と喧嘩してるの?」

「「……知らないよ」」


 二人の声が揃った。


「……結構長いよ。喧嘩っていうか、もう、不仲っていうか。私が知っている限りだと、高三の夏くらいからだから」

「長ぇな」


 一回一緒に暮らしてるってのがあったけど、あれから過去を何度も変えているから、この現代で俺と紗菜の関係にも変化があるのは不思議じゃない。


「……家庭科部も、私と誠治君が受験生ってことで、抜けて廃部になったけど……それは表向きの理由だから」


 三人しかいない部員のうち二人が険悪だったら、廃部状態にもなるわな……。

 おまけに、その一人は顧問の先生と付き合って別れてるんだから。


「紗菜ちゃんと、元通りとは言わなくても平均的な兄妹に戻ってくれれば……あの子のことだから頑張ってくれそうなんだだけどねぇ」


 これは柊木ちゃん側じゃなくて、俺側の問題だ。

 過去と現代を行き来して、はじめて起きた、俺側の問題。


 はじめてのパターン。


 別れたことやその原因は気になるけど、きっとこれは前進。……してると思いたい。


 今まで説明が面倒だからって、紗菜にはいっぱい隠し事をしてきた。

 理解を得たり納得したりしてもらう必要はないと思っていた。

 だから、俺たちの関係から、意図的に遠ざけていた。


 でも、そうじゃなかったとしたら――?


 唐突にタイムリープの感覚が全身を包んだ。




 次に目が覚めたときは、家のベッドの上。

 日付は、あの夜から二日後の日曜日の朝。


「兄さんっ! いつまで寝てるの? 『ブレイグ』のDVD見るんだから」


 俺と紗菜が、喧嘩……?

 この時点ではまだ信じられないけど、じきにそうなる……らしい。


 俺と柊木ちゃんをハッピーエンドに導いてくれるのは――


「もうっ、起きてるんなら返事しなさいよ!」


 もしかして……紗菜、おまえなのか――?

この話で4章完結です。

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