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高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果  作者: ケンノジ


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未解決


「ううーん……」


 俺は頭を抱えていた。

 おなじみの現代。

 またまたタイムリープが解除されて、戻ってきていた。


 毎度毎度のことなので、朝目が覚めて「うわっ、タイムリープが解除(ry」のくだりは割愛する。


「先輩、どうしたんです?」


 コーヒーを淹れて来てくれた怜ちゃん(20歳)が俺のデスクの端に湯気が出ているカップを置いてくれた。


「ゆるふわガールの怜ちゃんだ……まだ愛人志望なの?」

「まだって……ずうーっとですっ。第一志望が愛人なら、誰とも被りませんし♡」


 いいのか、それで。


「あ、この感じ……もしかして、先輩、またタイムリープしてきたんですか?」

「よくわかったね、怜ちゃん」


 がやがや、と騒がしいフロアでする話でもないだろう、と俺はカップを持って怜ちゃんと室内を出ていき、会議室に行く。


 タイムリープのことを知っていて、先生と俺のことをフランクに相談できる唯一の存在が怜ちゃんだ。


「それで、何を唸ってたんです? ボクが、聞いてあげます」

「高二の学祭が終わって今朝戻ったんだけど……」


 前回からの流れを俺は怜ちゃんに説明する。


「ふうむ……。ボクも先輩から先生と付き合ってるってことは聞きましたよ? でも今は夏海お嬢様と――」

「そうなんだよ……それなんだよ……だから悩んでるんだ」


 変わってなかった。

 俺は現代では、夏海ちゃんと付き合っていて、現在婚約者。我が名は柊木誠治。

 HRG社の所属は前と一緒だけど、階級は一つ上がっていて、フロアマネージャーという役職になっている。


 普通の会社でいうと、課長、もしくは課長補佐くらいだ。

 典型的な中間管理職。部下と上司の板挟み真っ最中。


「夏海お嬢様のことは、好きじゃないの? 溌剌で、デキる女って感じで、とっても社内でも評判いいんですよ? ボクも、夏海お嬢様、好きだし」

「いや、ライクの好きではあるよ。どうなって夏海ちゃんと婚約関係になったのかは戻ってきた俺にはわからないけど……」


 学際後の俺と柊木ちゃんの関係に大きな進展はなかった。

 ただ……俺との肉体関係についての本音は聞けた。


「それか……? それなのか? 別れの原因」


 でも、学祭前の段階では、心の準備が、って言ってるからな……。難しいな……。これについては焦ってもダメだし。


「先輩、しっかり。HRGの出世頭がしょぼくれちゃダメですよ!」


 ファイト♡ ファイト♡ と、怜ちゃんがどこから出したのか、ポンポンを振りながら応援してくれる。


 出社してから書類見たけど、業績はちょっと悪いくらい。ゆるやかに下降線を辿っている。


 前回と変化があるのは、俺の階級が上がったこと。それと業績がマシになったこと。

 前回はヤバみが深いらしかったから、それについては改善されたようだ。


「けどなー。柊木ちゃんと一緒じゃないと意味ないんだけど――」


 以前のタイムリープが解除されて柊木ちゃんと同棲していたとき。あのときの俺たちの最初のセックスはいつだったんだろう。

 俺が大学生のときとか?

 そのときは、高二時点では絶対にダメって言われていて、それは不可侵なものだとして下心を抑え込んでいた。

 けど、あれから俺は過去を細かく変えてきている。

 それで、今の状態でそうしていると、高三までに別れる――。


「先輩、ウジウジしてると、童貞こじらせますよ?」

「う、うっさいわ」

「それはきっと、先生もそうだったんじゃないですか、こじらせてるの」

「え? 柊木ちゃんも?」


 二三、四歳で未経験は、別に珍しくないような……。

 でも、こくこく、と怜ちゃんはうなずいている。


「体のスキンシップがゼロだと、不安になっちゃうんです。本当に好きなのかな、とか。何で手を出さないんだろう、とか。そういうのがどんどん膨らんで、悪いほうに考えちゃうこともあるんですよ」


 イマドキ女子の怜ちゃん、さすがだな……。


「って、雑誌に書いてありました」

「雑誌かよ」


 けど、一理ある気がする。


「先輩の話からして、一応はオッケーってことになったんでしょ? じゃ、心の準備がどうこうなんて関係なく、ガブっといっちゃえばいいんですよ」

「いいんだよって、言われてもな……」


「んもぉぉぉぉ! だから先輩は童貞なんですよっ」


 むちゅううううううう、と怜ちゃんにキスされた。


「何で!? 何でいきなり!?」


 パニック!


 動揺しまくりの俺の目を、怜ちゃんがじっと見つめる。


「これくらい強引でちょうどいいんです。女の子からは難しいんだよ。とくに未経験ならなおさら」


 ……そうなのか。


「もしダメだったら、ボクが慰めてあげます。だから、頑張って、先輩」

「慰めるつっても、一〇年前の怜ちゃん、小四だからなぁ……」

「いいーんです、細かいことはどうでも! 中身はハタチだからセーフ!」

「アウトだろ」


 くすっと怜ちゃんが笑うので、俺も釣られて笑った。


 お礼を言おうとすると、スマホが鳴った。夏海ちゃんからだ。


「もしもし」

『お疲れ様。企画、ようやく通ったよ! ウチと空き巣く……誠治さんで何度も修正したあれ』

「あー……企画? ……って何?」

『えぇぇ……ちょっとぉ。とぼけないでよぅ。通信事業部の中に、モバイルコンテツ課を作るってやつだよ』

「え、てことは……スマホゲームの部署作るの? 無謀じゃね? ゲームナメ過ぎじゃね?」

『ふふ、それ、パパとかに言われたセリフまんまじゃん。それはまだ現実的じゃないから、一緒に企画修正したじゃん。で、最終的な目標はそれってことで、現状は、関連会社の買収。その話がまとまったんだ』


 ……なるほど。

 いきなり新事業立ち上げて、中途で技術者やらプロデューサーを雇うより、チーム丸ごと買っちゃおうってほうが、現場としてもやりやすいだろう。


 現代の俺は俺で、きちんと動いていたのか。よくやった俺。

 それがようやく現実になりつつあるんだな。


『その会社の情報も、メールで送っておいたから確認してね。ウチはあんまりゲーム知らないからわからないんだけど、前は有名だったみたいで、今は苦戦しているっぽい。これがまたちょっと面白いんだけどねぇ~。ふふふ』


「? 何がおかしいの?」


『今夜また詳しく話し合おう』


 そう言って、夏海ちゃんは電話を切った。


 俺へのメールは、プライベート用のフリーメールに転送するようにしているようで、すぐに夏海ちゃんからのメールが転送されてきた。


『アクティ・ソフトワークスの子会社化について』


 高二以前では、名作をいくつか作った会社だ。名前を見てわかる程度には名が通っている。


「ねえ、先輩、どうしたんです?」

「……」


 ごちゃごちゃ、と小難しいビジネス用語がメールに並べられている。

 要約すると子会社化が決まって、俺がHRG社の担当者で、先方と打合せをするってことになったようだ。添付されたファイルには、会社概要から売上高の細かいデータが載っていた。


 ASW(アクティ・ソフトワークス)はゲーム製作。その資金をHRGが出す――。

 シンプルだけど、先方と折衝するのには骨が折れそうだ。


「ねえ、ねえってば?」


 覗き込もうとする怜ちゃんの顔を、ぎゅむっと手で掴んで遠ざける。


「ふぎゃ!? ちょっとぉ」

「これまだ秘密のやつだから。……ん?」


 さらに読んでいくと、下のほうに担当者の名前があった。


 ASW担当 井伊奏多


「んんんんんんんんんんん?」


 同姓同名……の他人?

 いや、夏海ちゃんがクスクス笑ってたから、あの奏多で間違いないんだろう。


 どんな打合せになるんだろう。


 とか思っていると、タイムリープのあの感覚が全身を包んだ。


 え――。このタイミング!? 夏海ちゃんに話色々聞きたいんだけど――!


 あの、これから面白くなりそうなのに――ちょっとぉぉぉぉぉおお!




 で、気づいたら、部屋のベッドで目が覚めた。日付は、高二の学際が終わった翌日。まだ俺は柊木ちゃんと付き合っている段階だ。


 でも、夢じゃねえんだよな、あの感じ……。


 傾きつつあるHRGをどうにかするために、俺も俺で動いていたんだ。


 待てよ。柊木ちゃんと別れたあとなのに、HRGで俺は頑張ってる……?

 いや、仕事を頑張っているのはいいことだから、疑問に思うことでもないけど……なんか引っかかるな……。


 ともかく、奏多にひと言メールしよ。


『俺とおまえで、なんとかしような!!』

『寝ぼけてる? 学祭、終わったよ』


 ……まあ、そうなるよな。


 一瞬で目が覚めた俺だった。

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