一人目:歪んだ正義【中編】
----なおや(主人公)視点----
地震は被害も少なく一週間ほど経ったが何事もない。
だが俺は今だになぜか胸騒ぎを感じていた。
俺の勘は良く当たった嫌なことに悪いことばかりにだ。
そして俺の違和感がピークを迎えたのは街に謎の鉄の支柱が建ち始めたあたりだった。
支柱というより鉄製のアンテナのようなものだ。
先端には金色の玉のようなものが付いていた。
いや、下ネタではないんだよ?
俺はその支柱がきになり一回市の局に電話をしたところ震災で電線が不安定なので補助装置を付けたと言っていた。
それ以上は何を聞いても教えてくれなかった。
俺は不安に思いながら家に帰る途中だった。
街中で一人の女性が右足を引きずりながら歩いているのが見えた。
俺はなぜかその女性から目が離せられずにいた。
別にタイプだったわけではない。
具合のわるそうで髪の毛はボサボサだ。
でも、具合が悪いからってあんなにも顔は青白くなるものだろうかっと思った瞬間だった。
その女性は視界から一瞬で消えた。
「え?」
俺は衝撃的な状況を見て間抜けな声をだした。
え?顔が真っ青で髪はボサボサで消えるってお化けでもみたのか!?
俺はゾワッと立つ鳥肌感じた。
だがそれはもっと恐ろしいものだった。
次の瞬間爆音が響いた。
まるで爆弾でも爆発したかのような爆音だ。
俺は瞬発的に目と耳をふさいだ。
そしてその閉じた目を開くと驚くべき光景が見えた。
さっきの女性が一瞬で30mほど移動し何かを銜えているのだ。
目を凝らすと俺は腰を抜かした。
銜えていたのは腕だった。
骨ごとむしり取ったように切れ目は荒く大量の血を吹きだしていた。
そして中間にいるサラリーマン風の男性は腕を失っていた。
そして断末魔のように叫びながら悶え始めた。
一瞬の光景だった、そして人々が悲鳴を上げながらその場から走り去ろうとした。
俺は衝撃的な光景を目にして停止した、人々が俺を通り過ぎて走っていく。
その瞬間腕を銜えた女性は口から腕をを落とすとこちらを向いた。
目があった。
その時俺は”死”という単語が頭に浮かんだ。
そして一瞬のことだった、スローモーションと化した世界で女性がこちらに足をもげる勢いで飛んできたのだ。
としてあっという間に数センチのところまで移動してきた。
そして俺は目をつぶった、死を覚悟したのだ。
俺は死んでも天国に行けるかな?
そんな意識の中で走馬灯のような物を見た。
妹との思いで中学時代に仲良くしていた友人優しい父と母。
悪い人生じゃなかった。
俺は幸せ者だ。
最後に家族の安全を祈って死のう。
そして数秒後俺は生きていた。
どうやらマンホールにつまずいて尻餅をついたようだった。
そいて後ろを見ると女性が肩をもがれていた。
どうやら俺は転んだことで間一髪助かったようだ。
そんな時だった。
化け物のような女はまたこちらを向いてきた。
そして今度こそは死んだだろうと思いながら奇跡を願うと奇跡は起きた。
凄い勢いで走っている車が女性を跳ねたのだ。
女性は数メートル吹き飛んで俺は口を金魚の様にパクつかせた。
どうやらこのパニックで事故が起きたらしい。
どうやら自分は悪運が強いようだ。
俺は抜けた腰を支えながらその場を去った。
3kmは走っただろうか、もう追って来なかった。
日頃の運動が功を成してか早く移動できた。
だが目的も無く走ったので行くあても無いのだ。
そして一抹の不安が頭をよぎった。
妹だ、必死で忘れていた。
俺はシスコン失格だ!
拳を握りしめながら気持ちの悪いことを考えていた時だった。
後ろに気配を感じ距離を取って振り返った。
そしてそこに居たのは小太りでニキビ肌の男だった。
その男は言うほど年は取ってなさそうで同じ年ぐらいだろうか?
「杉田くん・・・・。」
男は俺の名前を知っていた。
俺は頭で今までのあった人を照らし合わせていった。
すると重なった。
「影森くん!?」
彼は影森 英雄だ。
中学生の時一度いじめにあっていた時助けたのだ。
どうやら彼も避難しているようで汗びっしょりだった。
「君も避難しているところかい?」
俺がそう聞くと彼は首を振った。
そして深刻な顔をして喋りだした。
「逃げ場なんてないよ・・・」
逃げ場がない!?
なんだそれ!?冗談にしても趣味が悪い!
俺は勢い余って大きな声を出してしまった。
「どういう事だ!」
彼は俺の声に驚きビックっと体をのけぞらした。
そして携帯で一本の動画を見せてきた。
車が道路を走っていると急に何かにぶつかったようにつぶれた。
そして動画を取っている人間がぶつかった先を通ろうとすると見えない壁のような物にぶつかり必死に叩いていた。
そして動画が終わると彼は喋りだした。
「これはネットの友人が送ってきた動画だ、どうやら僕らは見えない壁で隔離されたみたいだ。今までネットでいろいろな動画を見てきたけどこれはCGじゃない・・。僕はそう断言できる。」
自信のなさそうな立ち振る舞いだが目だけは真剣で本気の瞳だった。
見えない壁?そんなのどうやって作ったんだよ?
そんなSFチックな物が存在するのかよ。
俺が自問自答を繰り返していると彼はひとりでにまた喋りだした。
「どうやらあのアンテナのようなものが壁を作っている装置らしい。」
「じゃあそれを壊せば!」
俺が目を見開き彼を見ると残念そうに首を振った。
そして申し訳なさそうに喋りだした。
「ダメだ、どうやらあの装置は頑丈で車を衝突させても壊れなかった。それにこれは莫大な量があるこれを壊すことができても莫大な時間がかかるその間にアイツらにころされちゃうよ。」
確かにな、彼のいう事は正論でその通りだろう。
だが試す価値はあると思った。
やらないで死ぬならやって死のう!
俺が口を開こうとした瞬間彼は俺の心をねじ伏せた。
「それに、この装置を壊してしまえばここだけじゃ済まない。もっと大きな被害を被る事になるんだ!日本滅亡だってありうる!」
そう、俺は自分のために日本を壊しかねない事を口走ったのだ。
俺はいつも誰よりも正しくあろうとしてきたのに一人の男に正義を正されてしまった、納得してしまった。
俺は不甲斐なさを感じつつ口を開いた。
「そうだな、じゃあ俺は妹を探して助けようとおもう影森くんも頑張ってな!」
俺が走り出そうとすると彼が待ってっと叫んだ。
「僕も付いていっちゃダメ・・・かな・・?」
彼は申し訳なさそうにうつむきながら言った。
きっと足で纏いになるだろうと思っているのだろう。
俺はゆっくりと彼のほうを向いて言った。
「君は自分が足で纏いになるんじゃないかと思っているんじゃないのかい?それなのに僕にそんなお願いしようと思っているのかい?」
彼は俯いてしまった。
「影森くんは正直すぎるよ、もっと自分のいいところを宣伝しないとね、影森君には状況判断能力もあるし色々知ってそうだそれをもっと宣伝しないと。それに俺は誰だろうと見捨てたりしないよ。もっと自信を持ちなよ!」
彼は顔を上げて目を輝かせて杉田くん!っと言って明るい顔になった。
そして彼はありがとうと抱き付いて来た。
正直むさ苦しいが感謝されるのは悪くない。
彼はするとゴソゴソとバックを漁りだした。
そして一つのものを取り出した。
木の筒のようなものだ。
それを渡してきた。
「これ君が持ってた方が役立つと思うから。」
渡された木の筒のような物を受け取りよく見ると脇差のようなものだ。
アウトレ○ジとかでしか見たことないな、本物か・・。
彼はなにに使う気だったのだろうか・・?
まあコレクションとしての価値もあるだろうし趣味の一つだったのだろう。
俺は都合のいい解釈をして彼にお礼を言った。
「ありがとう、心強いよ。」
俺がそういうと彼は汗まみれの頭をかきながら恥ずかしそうにうなずいた。
今回も見ていただいてありがとうございます。
もともとの文章がとんでもなかった為短くするのに時間がかかってしまいました。
今後もなるべく早めに投稿するので評価とブックマークして頂けたらと思っています。
次回はこの話を終わらせ次の人物に移ろうと思います。
今後もよろしくお願いいたします。最後までありがとうございました!