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30. 望まれぬ再会

今日は勇者小隊03が能力者狩りの担当となったため、二人一組にわかれて街中を周った。

 

  今日は赤井と組んで街の大通りを歩いていた。

 

 「ねぇ、葉月はまだもどってこないの?」

  

  むっつりと黙っていた赤井が話しかけてきた。

  

 「ああ…… 学園の教師にきいたがもどってないってきくし、あたりで聞き込んでもさっぱりだ」

  

 「なにがあったのよ、あの葉月が突発的に家出するなんて」

  

 「それは……」

  

  口ごもるオレを赤井が横目でにらんでいた。

  

 「あー、もう!! 最近のアンタいつものテキトーさがなくて調子狂うのよ。この前の戦闘でも、全然気がはいってなくてあぶなかったじゃない」

  

  おととい出動した現場で、周りへの注意をおこたって背後から襲われそうになり、敷島隊長に助けられた。

  

「すまん……」

 

「ハァ~、もういいわよ」

 

 赤井はため息をつきそれっきりだまり、横をあるいていた。

 30分ほど歩いていると、連絡がはいった。

 

『緊急連絡。通りで能力者があばれているという通報がはいった。能力者狩りの可能性がある。至急現場に向かい状況の確認をせよ』

 

『了解、現場に向かう』

 

 赤井と目配せすると、現場にむかって走り出した。

 

 現場に到着すると、そこには道路の上に数人の人間が倒れこみ、犯人らしき男の周囲を警官が囲んでいた。

 

 倒れている人間のからだには鍾乳洞でみるような石筍がつきささり、血をながしていた。

 

「おれは悪くない、こいつらが襲い掛かってきたから反撃しただけだ。これは正当防衛だ!!」

 

 追い詰められた表情で必死に叫んでいるのは、この前ギルドに駆け込んできたサラリーマン風の背広姿の男だった。

 その姿は、依然とは異なり無精ひげをはやしやつれていた。

 

「おい、おっさん何してんだよ!!」

 

「ああ、きみは、あのときの……」

 

 オレの声に反応した男がこちらをむき、どうやらオレの顔を覚えていたのか、すこし緊張を和らげた。

 

「きいてくれ、こいつらはオレの職場まで乗り込むようになり、そのせいで仕事をクビになった。住んでいたアパートの前にも居座りはじめて、アパートの管理人からおいだされるし、こいつらのせいで何もかも失ったよ!!」

 

 男はゆがんだ笑みを浮かべながら、吐き出すように話した。

 

「こいつらが、こいつらさえいなきゃ、オレは普通の生活をおくれたんだ……」

 

 男は憎悪を浮かべた目で倒れている男たちに目をむけると、男の手のひらの上に周囲の土が集まり始めた。

 男の手のひらの上に先端のとがった石筍があらわれた。

 

「ははっ、みろよ。すごいだろ。ただの粘土でもこうして形を整えて、硬化させてやるといい武器になるんだ」

 

「おい、やめろ!!」

 

 そして、石筍が手のひらから放たれ、地面に転がる男の体を貫いた。

 貫かれた男はグエッいう声をあげ血を吐き、動かなくなった。その様子をみていた、警官隊が目に剣呑な光を浮かべた。

 

「対象の攻撃意思を確認。総員、発砲を始めろ」

 

「ひ、ひぃぃぃ」

 

 包囲していた警官隊が構えていた銃の発砲を開始した。

 しかし、悲鳴をあげる男の前に土の壁が現れて銃弾はすべて防がれた。

 

「なんだ、とっさに壁を作ったら銃弾を防いでしまった。ハハハッ、なにを我慢してたんだろうか、この力があれば怖いものなんてないじゃないか」

 

 男は自分の手のひらをみながら、得意げな笑顔を浮かべていた。

 

「はいはーい、調子に乗るのはそこまでにしておけよー」

 

 そこに、人を馬鹿にするような口調の声が後ろから聞こえた。

 そこにいたのは、スーツを着て皮肉げに口元をゆがめた榎本だった。

 

「てめぇは…… 榎本、なにしにきやがった」

 

「あ゛? なんで、ギルド局の連中がいるんだよ。まあいいや、仕事の邪魔するんじゃねーぞ」

 

 榎本はこっちに不審げな顔をむけたが、警官隊に声をかけた。

 警官隊は敬礼した後道を譲ると、榎本はずんずんと男の方に近づいていった。

 

「ほほう、土を操る能力か。いいね~、なかなか面白そうな能力じゃんよ」

 

「なんだおまえ、ちかづくなぁ!!」

 

 男は、榎本を怖がるように土壁をつくりだし進路をふさいだ。

 

「あー、はいはい、邪魔邪魔」

 

「な、なんで……」

 

 榎本が土壁に向かって腕を振るうと、触れた部分から崩れて砂の山となった。

 

「はい、確保っと」

 

 懐から取り出したスタンガンを男の首筋に当てると、男はぐったりと倒れた。

 

「おっし、んじゃ運ぶのめんどいから、結城たのむわ~」

 

 (結城って、なんであいつがオレのことを呼んでんだ?)

 

「……了解」

 

 同姓のヤツがあいつの部下にいるのかとおもっていぶかしんでると、ぼそぼそとした声で返事をしたやつがいた。

 

「な、なんで、おまえがいるんだよ。葉月ぃぃ!!」

 

「葉月!?」

 

 そこには、どこかでみた黒いローブのような服をきた葉月がいた。

 

「アん? なんだ、おまえ、こいつらと知り合いだったのかよ」

 

「……兄です」

 

「ははっ、そうかそうか。お兄ちゃんよぉ、ちょっとこいつ借りとくから、よろしくな~」

 

 葉月が無表情のまま淡々とつげて、榎本が心底おかしそうに話しかけてきた。

 

「ふっざけんな!! おい、テメエ、葉月になにしやがった」

 

「おいおい、やめてくれよ、まるでおれが誘拐犯みたいじゃねえか。結城は自分の意思で協力してるんだぜ」

 

「うるせえぇぇ!! どうせ、脅迫か洗脳でもしたんだろ」

 

 オレは怒りにまかせて榎本に向かって六角棒を振り下ろした。

 

「やめなさい!!」

 

 しかし、目の前に飛び込んできた中学生ぐらいの女の前に現れた半透明な膜によって攻撃がはじかれた。

 

「ぐっ、なんて重い攻撃なの…… 榎本二等陸尉、おケガはないですか」

 

「ああ、問題ない。あー、めんどくっせえな、さっさと撤収するぞ」

 

「待ちやがれ!! まだ、話しはおわってねえぞ」

 

 榎本がきびすを返し、葉月が手をかざすと空間のゆらぎができた。

 

「なんで、その能力は、フード野郎の……。おい、葉月、まてよ!!」

 

 そこに男を背負った榎本と、攻撃を防いだ女、そして葉月が入っていき姿を消した。

 姿をけすまで、葉月はこちらを見ることは一度もなかった。

 

「どういうことだよ、一体なにがおきてんだよ!!」

 

「葉月、どうして……」

 

 混乱するオレのとなりで、同じように困惑して立ち尽くす赤井の姿があった。

 

 

 

 ギルド局にもどり、局長室のドアを押し開けた。

 

 局長室には革張りのイスに腰掛けた局長と、その前に立っていた敷島隊長がいた。

 

「神埼局長、すぐに自衛隊の榎本と連絡をとってください!!」

 

「なんだい、そんなにあわてて、彼に何の用だね」

 

 ノックもせずに乱暴にはいってきたオレを、局長はいぶかしげな目で見てきた。

 

「葉月が、妹が、やつに誘拐されました」

 

「それはおだやかじゃないねえ、話をきこうか」

 

 オレはさっきみたことを、能力者が暴れているところから、葉月たちがいなくなるところまでを早口で説明した。

 

「ふーん、なるほどねぇ。結城くん、それは、君の妹である葉月くんが自分の意思でついていったとみていいんじゃなのかねぇ」

 

「そんなことあるわけないです!! あいつは榎本にだまされているんです!!」

 

 どこか気乗りしない様子の局長にいら立ちを隠せないまま、局長とオレの間にある机を拳に叩くと、机にひびが入った。

 

「あー、その机たかかったんだよねぇ」

 

「くそっ、もういいです。こうなったら、直接乗り込んで話をつけてきます」

 

「おい、結城、おちつけ」

 

 敷島隊長がオレの肩に手をおいてなだめようとしてきた。

 

「おれは、十分おちついています……」

 

 肩におかれた手をふりはらい、扉に向かって進もうとしたところで局長が声をかけてきた。

 

「まったく、しょうがないねぇ。よいせっと」

 

 局長はイスから立ち上がり、机を飛び越えてオレの前に立ちはだかった。

 

「邪魔をするな!!」

 

「あー、若さっていいねぇ。その無鉄砲さがうらやましいよ」

 

 局長につかみかかろうとしたが、手首をとられてしまい振り払おうとした。だが、自分の中から力が消えるような感覚とともに、いつもどおりの力を発揮できなかった。

 

「グハッ」

 

 握られた手首をひっぱられて一本背負いをきめられ、床に叩きつけられた。倒れたところに首を絞められて、意識を失った。

 

 意識を取り戻したときは医務室のベッドの上だった。

 

「くそっ、おもいっきりぶん投げやがって……」

 

「あら、きがついたみたいね」

 

 ベッドから身をおこしたオレをみて、白衣姿の金城さんがこちらをみていた。

 

「くそっ、こうしちゃいらんねえ」

 

「どこにいくつもり?」

 

「そんなの、榎本がいる自衛隊の駐屯地にきまってんだろ」

 

「いってどうするの、妹さんには拒否されたんでしょ」

 

「それは……」

 

「榎本くんを殴っても解決するとはおもえないんだけど、なにか方法でもあるのかしら」

 

「ぐ……」

 

 冷静な態度の金城さんに淡々とつげられ、なにも言い返せなかった。

 

「でも、葉月はおれがいなきゃ……」

 

「いいかげんにしなさい。妹さんだって一人の人間なんだから彼女にも考えがあるでしょうに」

 

 ピシャリといわれ、おれはうなだれた。

 

「はぁ~、今あの子は市ヶ谷駐屯地にいるらしいから。ちゃんと会って話してきなさいな」

 

「そこにいるんですね。わかりました。すぐに会ってきます!!」

 

「ちゃんと、むこうの許可取るのよ~」

 

 医務室から飛び出す俺の背後から、金城さんの声が聞こえた。

 

 

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