21. 失われた命
金城さんからの連絡をうけて、新宿で起きた大規模な魔物発生の対応に向かった。
街はひどい有様になっていた。
魔物が街中に散らばり、建物を破壊し、人々を追い立てていた。
魔物の数が一番多いエリアで戦っていたら、鬼のおじさんと金髪のお兄さんに会った。
「よう、嬢ちゃんもきてたのか。そこらじゅう魔物だらけであいつに会えねえんだよ。居場所しらねえか?」
おじさんはわたしとの約束を律儀にまもって、兄の手助けにきてくれたようだ。驚きの後、こんな危険な場所に来させることになったことに申し分けなさを感じた。
「……送る」
「お、そうか。わりいな助かるぜ」
鬼のおじさんたちは気負った様子もなく、空間のひずみをくぐっていった。
おじさんたちと別れた後、逃げているひとたちを横目に魔物と戦っていると、自衛隊とは毛色の違う人たちを見かけた。服装をみるとどうやらギルド局の勇者のようだった。
「くそ、水無瀬、草薙のカバーたのむ。こっちは俺が抑える」
魔物たちに包囲されかけた状態で、必死の形相で押しとどめようとしていた。
魔物たちに能力をかけて拘束し切断すると、勇者たちは驚いた表情をしたあと、残った魔物に果敢に攻めかかり状況を持ち直した。
勇者たちは一息ついたあとこちらに気づいたようで、黒髪で短髪の男の人が緊張した面持ちで近づいてきた。
「協力感謝する。これまでも、何度かうちのものが助けられたと聞いている。よければ、手を貸してくれないか」
「……いいよ」
「オレはギルド局勇者小隊01所属の金剛という。よろしく頼む」
勇者たちと一緒にたたかう形で、住民の避難を手伝った。
押し寄せる魔物たちを撃退し、住民の避難を完了させたところで、金剛と名乗った男の人が話しかけてきた。
「まだ戦っている仲間がいる。軍人でもギルド局にいるわけでもない君に頼むのは筋違いだとおもうが、君の能力を必要なんだ。頼む」
どっちにしろ、兄のことも心配だったので一緒にいくことにした。
空間のゆらぎをくぐり、他の勇者小隊と合流した先には、巨大な魔物がいた。
巨大な魔物との戦闘がはじまり、そして
鬼のおじさんが死んだ。
魔物の攻撃から子供をかばって死んだ鬼のおじさんをみて、あの日みた血みどろの両親の姿とダブってみえた。
耳鳴りがし、視界がゆがんだ。
気づくと、足が前にでて、目の前の魔物を消すということだけを考えて能力をつかった。
空間の揺らぎを魔物の体全体を覆うように展開し、入口と出口をつなげることで閉鎖空間を作り出した。
空間を徐々に狭めていくと、魔物はもとの形状がわからないほどつぶれて肉塊と化した。
直後、能力の使いすぎによる反動が体に現れ、呼吸が乱れ、猛烈な倦怠感に襲われた。
息も絶え絶えに、兄にトドメを頼み魔物は討伐された。
なんとか、この場をはなれて宿舎の自室に戻ったが、セキはおさまらず、口のなかに鉄サビの味が広がった。
そして、体がグラリと崩れる感覚とともに意識を失った。




