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第3話 立ち回り

 いまさらだがオレの、パチスロへの基本スタンスを言っておく。この芯がブレると、たいへんなことになる。


【大前提】

1.パチスロは、あくまで趣味。

2.立ち回りは基本、天井狙い。そのためにあしをつかうことを、いとわない。


 である。あっさりしているようで意外と奥が深いからね?

 1については、まあプロではないということだ。プロになる方法などしらないし、プロだからといって、かならず勝てるわけではない。

 勝つことはたしかに重要だ。ってゆうか、パチスロをつづけるために負けないことが重要なのだ。

 2の立ち回りについては、これ(天井狙い)が自分に合った方法論だと考えている。勝率もわるくない。

 繰り返すがパチスロに必勝は、ありえない。まあ、それはどんなギャンブルでもそうだと思うが。


 パチスロというギャンブルはお店(胴元)、パチスロ(マシン)、そしてお客という3つの要素から成り立っている。

 お客が胴元に勝つことはできない。これはギャンブルの鉄則ともいえる。そんな戦いを挑んでも意味がない。

 じゃあパチスロ台に勝つことはできるだろうか? このマシンは女神の微笑と悪魔の冷笑の、どちらも容赦なく叩きつけてくる。よって、これと競い合っても無意味だ。しょせんマシンはマシンである。

 ゆえに、オレらお客は、おなじお客同士で骨肉の争いを繰り広げることになる。これがまた楽しいんだ。パチスロの醍醐味といっても、いい。


 パチスロで勝つとはすなわち、ほかのお客に勝つことであり、ほかのお客をうまく利用するということだ。

 汚ないと思われるかもしれないが、これは事実である。そして自分自身もまた彼らの餌食となる可能性がある。そういう意味ではフェアといえるんじゃなかろうか。

 天井狙いとは、まさにほかのお客の力を利用すること、漁夫の利を得る作戦である。

 これを揶揄する意味で「ハイエナ作戦」と呼んだりもする。

 だいたい想像はつくと思うが、いちおう説明しておく。退屈かもしれないが、ちょっとだけガマンしてね。もうすこしでハナちゃん、出てきますからね。


 たとえば1000回転(ゲーム)という天井(*註1)があるとする。

 そこへ到達するために0回転から打ちはじめるのと、500回転からスタートするの、どっちが近道かは火を見るより明らかである。

 誰だって後者を選びたい。だが500回転(ゲーム)ハマっている(*註2)台というのは、そうそう落ちている(*註3)ものじゃない。

 誰も自分がせっせと投資した台を手放したくない。だが、どこかで見切りをつけなければならない。お財布との兼ね合いもある。

 そうして、他人の血と汗と涙の結晶としてハマリ台は生まれるのだ。


 そんな貴重な台の情報を彼女、紫田(むらさきた)ハナはどこからか探してきてはメモにしたため、惜しげもなくオレに渡してくれる。

 ありえない。これは、なにかの罠じゃなかろうかとも思った。

 まあ情報は情報として、おしえてくれた台をかならずオレがゲットできるとはかぎらないし、かりにゲットできても、何度も言うようにかならず勝てるとはかぎらない。

 情報は情報だ。問題はなぜ、オレなのかということだ。なぜ彼女はオレに情報をくれる……。


 彼女はオレのことが好きなのだろうか?

 いやあ、それはないでしょう。自慢じゃないが、ひと目惚れされるような顔の造形(つくり)じゃない。

 顔じゃないの人柄がよければ……って、オレ、なにもしてないからね? パチスロ打ってただけだからね?

 謎だった。が、きっと理由があるはずだ。それをつきとめるまで、彼女に話しかけるのは()そうと思った。

 その判断が結果的によかったと、あとでわかった。




*註1……第2話の【*註2】を参照。

*註2……その回転数まで大当たりをしていないこと。ハマリ台ともいう。

*註3……遊戯されない状態で放置されている。

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