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第2話 天井

 それは名刺サイズの、ってゆうか印字のされていない無地の名刺そのものだった。

 こんなのも、あるいは100均ショップで売っているのかもしれない。1ケースに100枚とか入ってそうなやつだ。

 その名刺には印字はされていなかったが、かわりにボールペンらしきものでメモ書きがされていた。


【BIA ガルパン 654G】


 そういうメモだった。パチスロをやらない人には、たぶん意味がわからないだろう。

 だがそういう人はパチンコ屋さんには来ない。ここはパチンコ屋さんで、それを承知で彼女はオレにメモを渡したのだ。

 彼女はいったい何者だろう。なぜ、すぐどこかへ消えたのだろう……。

 非常に気になった。気になったら調べずには()れない性分だ。さっそく行動を開始した。


 とりあえず遊戯中だったが、そこはパチスロのいいところ、好きなタイミングで席を立つことができる。

 パチンコも基本的には同様だが、大当たり中と保留玉消化中は離席できないという難点がある。

 大当たり中はハンドルを持っていないといけないし、保留玉消化中は結果を見届けないといけないからだ。保留内で連チャンすると15分から30分くらいトイレを我慢することも、たまにある。

 オレはメダル少々とタバコを下皿(*註1)に残して、自分の打っていた台をいったん離れた。


 メモにあったBIAは隣りの隣りの店だ。

 オレの地元M田にはたくさんパチンコ屋さんがあるが、なかでもここは3店舗が軒を連ねている。

 BIA、フラッシュ、アークと通りを挟んでパチンコ屋さんが向かい合っているのだ。オレはいまいるアークを出て、フラッシュの店内を抜けてBIAに向かった。徒歩でおよそ40秒。


 メモにあったガルパンはパチスロの機種名だ。わりと最近の台で人気機種でもある。

 最後に書かれていた654Gは、おそらくゲーム数のことだろう。その台が何回大当たりしているかは、まだわからないが、とりあえず654回転(ゲーム)ハマっているものと予想される。

 ハマリ台は大好物だ。それはオレにかぎったことじゃないだろう。

 現地についてガルパンの島を覗いてみると、654Gで捨てられている台は見当たらなかった。

 が、大当たり回数2回、現在900G超えで天井(*註2)目指して頑張っていらっしゃる先客(若い兄ちゃん)がいた。

 彼女がメモでおしえてくれた台はたぶんこれで、つまり、オレが到着するまえにほかのお客に取られてしまったということだ。


 これで、はっきりした。彼女はオレに良さげな台をおしえてくれたのだ。

 その台をオレが打つ気になるか、またはじっさいにゲットできるかはべつとしても、ありがたい情報である。

 だが、なに(ゆえ)そんなことを? そして彼女は何者? 新手の商売(サービス)だろうか。それともボランティア?

 ……こればかりは考えてもラチがあかなかった。この1度きりで、もう会うことはないのかもしれない。

 その可能性のほうが、ぜんぜん高かった。だってパチンコ・パチスロ暦10年以上になるが、いままでこんな経験はなかったのだから。


 しかーし! 今年の鳳男(とりお)ちゃんのヒキは半端じゃなかった。あ、鳳男ちゃんてオレのことね。

 それからも、ちょくちょく彼女はオレのまえにあらわれて、例のメモを渡してくれた。

 名前もしらない、しゃべったこともない相手から、幾度となくメモを受け取った。なんだか背徳感めいたものがあってゾクゾクした。



*註1……パチスロ台に備え付けられている、メダルを溜めるためのお皿。ここにメダルやタバコなどの私物を置くことで、この台はオレが遊戯中だぜ! というキープの意思表示となる。


*註2……そこまで到達すれば大当たりが確定しますよ、ってゆうゲーム数。ガルパンだと1280回転(ゲーム)

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