第14話 ぜんぶ夏のせい、だ
今年の夏は、なんか微妙だ。
梅雨がかなり長かったのと、あと8月に入ってからも天気のわるい日が多い。ずっと天気がわるいような気がする。
かと言って灼熱のドッピーカン光線を放射されても、それはそれでツラかったりする。
そんな太陽の照りつける日も幾日かはあった。そんな日は店へ行くのも億劫になる。まあ、行くけどね。
以前にオレの立ち回りについて話した(第3話参照)。
ハマリ台を求めて複数店舗を歩いて回る、と。それを億劫がっているようじゃパチスロで勝てませんよ、と。
あれ、ウソです。いやウソじゃないけれど、夏場の炎天下ではムリです。熱中症になるから、本当に。
夏場に収支が悪化するのは、お盆と重なる(*註1)こともあるけど、ふだんの立ち回りができていないことが原因なんじゃないかな、なんて密かに思ったり思わなかったり……。
ええ、そんなわけで悪化しておりますよ収支が。6、7月はよかったんだがね。
つまりハナと出会ったころが、いちばん絶好調だったわけですよ。ああ、オレの幸運の女神よいずこへ!
最近、とんと彼女を店で見かけない。
いまさら言うのもアレだが、オレだって年がら年中パチスロを打っているわけじゃあ、ないんです。
マイブームみたいなものがあって、今年は春先から無性にパチスロが打ちたくなった。花粉症みたいなものか。
ちなみに去年おととしは、まったくパチスロを打っていない。店に足を運んですらいない。
オレのパチスロにかける情熱とは、そんなものである。それくらいで丁度いい。むかし、そのときはパチンコだったが、あまりに熱中しすぎて破産しかけたことがある。
いまは、いい感じの距離でパチスロと付き合えている。そう思いたい。
ということは、ですよ。
このブームも秋口とは言わないまでも、いつかは去り行くのではないか。いや、ほぼ確定しているんじゃなかろうか……。
オレ個人の熱量とはべつに、業界もまた岐路に立たされている。
業界はいま、出玉を減らすための新基準適応に躍起になっている。この運動は10年に一度くらいの割合で起きるらしい。
パチスロについて言えば、9年まえの2007年にも4号機から5号機への移行がなされ、お客がわんさと離れた。
そのときとおなじ動きを、いままさにしている。またお客がわんさと飛ぶだろう。オレも来年以降もパチスロをするか何とも言えない。
じゃあ……じゃあ、ですよ。オレやピーターさんがやっていることは、いったい何なのだろう?
ハナは何のために仲間を募っているのだろう。さっきも言ったが、最近では彼女自身を店で見かけないのである。
元彼を捜すのをヤメてしまったのか。飽きちゃったとか? そもそも、ユウトがハナの元カレであるかさえ、あやしい。
ピーターさんの推論では、ユウトの捜索にはヤ○ザが絡んでいるかもしれない、とのことだった。
もしかしたら、すでにユウトは東京湾の底に沈められているかもしれない。それはハナについても言えることだ……。
すると、つぎに沈められるのはオレか? あるいはピーターさんか。
考えたくない。考えすぎかもしれない。放っておくとすぐネガティヴ・シンキングの虫が顔を出すオレです。
だが、しかし。
じつはハナについて……彼女の一連の行動について、オレなりの解釈みたいなものはある。
それをお話するのは次回ってことで。次回、最終回ってことで。
*註1……盆、暮、正月あとGWはパチンコ屋さんにとっての回収どきなのれす。太古の昔からそう、きまっているのれす。




