表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/16

第10話 あいにくの天気で

 M田アークは一風変わったパチンコ屋さんだ。

 5スロ1パチといった低貸玉をメインとし、それに加えて10スロ2パチという変則的な貸玉(レート)も取り扱っている。M田で10スロが打てるのは、ここだけだ。

 が、なかなかに繁盛している。

 じつはこの場所、オレがしっているだけで2回パチンコ屋さんが潰れている。アークは3店舗目だが、まあ頑張っているほうだろう。


 (ホール)も生き残るのがたいへんなご時勢だから、それぞれ特徴みたいなものを打ち出して行かねばならない。

 アークのように低貸玉メインで、バラエティに富んだ機種陣(ラインアップ)で勝負するのもひとつの手だと思う。

 大型店などはその逆の手をつかう。人気のある数機種を大量導入してお客を呼ぶ。レートはもちろん高貸玉(20スロ、4パチ)だ。

 べつにどっちが優れているというわけじゃない。それぞれに良さがあり、またリスクもある。いまさらですが。


 日曜日の店内はやはり活気があった。いつも見慣れているここM田アークだが、日曜日にくるのはオレにとってひさびさである。

 どうだろう……けっこうお客さんで埋まっているので、台を選べるかどうか微妙だった。

 店内を1周してあまり良さげな台が見つからなければ移動しよう。そう思いながら台を物色しているとき、ひとりの男性客と目が合った。


 ってゆうか、あきらかに彼はオレをガン見していた。べつに睨んでいるわけじゃない。興味ありげな、あの目。

 たぶん彼はオレのことをしっている、直感的にそう思った。いや経験的にか。ハナとの出会いがあったからこそ、そう思えたのだ。

 ちなみに、オレは彼をまったくしらない。写真で見たユウトとも、ちがった。

 誰やねんこいつ、と思いつつ、とりあえず台のほうに視線をそらした。そしたら彼が近づいてきた。それを横目で確認した。

 彼はおもむろにスマホを取り出すと、なにも言わずその画面をオレに見せた。まあ店内はパチスロ台の音で(やかま)しいので、こうするのが最良と考えたんじゃなかろうか。


 スマホに映し出された画像を見て、オレは目玉が飛び出しそうになった。ユウトの写真だった。ハナがオレにメールしてくれたのと、おなじ顔写真だ。

 頭が混乱した。いま目のまえにいるこの男は何者だろう。ユウトの顔写真を持っているということはハナの仲間バディか。

 つまりオレの仲間バディでもあるわけで……。

 いや待てよ。なぜ彼はオレにユウトの写真を見せる。見せる必要がある。もしかして、もうユウトを見つけちゃったとか?


 考えることわずか数秒。とりあえず、目のまえの男と話す必要があると判断した。轟音鳴り響く店内で会話はムリなので、彼を店外に誘った。そういうジェスチャーをしてみせた。

 彼はにっこりと笑いオレについてきた。

生憎あいにくの天気ですね。ボクは飛田といいます」

 7月も終わろうかというのに、まだ梅雨がつづいていた。気温も低い。彼にならってオレも名乗った。

「火野です。あなたはハナちゃんつながりの、かたですか?」

 ええ、まあと彼は言い、また笑顔を見せた。なんか途轍もなくチャーミングな笑顔だった。


 正直、飛田さんはゲイっぽかった。彼のイントネーションだとか所作からそう感じた。もちろん初対面なので、いきなりゲイですかとは聞かなかったが。

 飛田さんとお茶する流れになった。場所はイタリアン・ポマトだ。

 日曜の昼時ということもあり、ファーストフード系は激混みであると予想された。イタポマはわりとガチな喫茶店で、まあ混んではいたが座ることができた。

 オレはブレンドコーヒーを、飛田さんはアイス・ミルクティーを注文した。午後のカフェテラスに男ふたり。

 これから、なにが巻き起こるのだろうか……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ