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孤独な三人と星屑の街  作者: なとりうむ
プロローグ
1/5

始まりの日

風の吹き抜ける草原の空。

雲の上のお家の中で、一人の竜人が頭を抱えています。

竜人の仕事は、世界の竜に「物語」を食べさせること。

戦いの物語、恋の物語、陰謀の物語、旅の物語。

物語を食べることで、世界の竜は成長していくのです。

「どうしよう」

竜人がポツリと呟きます。

「いくらなんでも、こんな旅人は予想外だ」

人は一生に一度、誰もが心踊る旅に出ます。

その旅人を影から支えたり、時にはアクシデントを起こして、竜人は物語を作ります。

どうやら、この竜人「なとりうむ」が選んだ旅人は、ずいぶんハチャメチャな旅人たちだったみたいです。

「まあ、それはそれで有りか」

諦めたような、開き直ったようなため息を吐いて、なとりうむは物語を書き始めます。

星屑の降る街「ダーウメ」で出会った、三人の旅人の物語を。





星の街ダーウメの中央広場。

普段は大道芸人や司祭様、街人たちが集まる憩いの場として利用される大きな広間。

今日も今日とて喧騒に包まれているが、どうやらいつもとは毛色の違う騒がしさ。

役人や店員、野次馬など。色々な人が言葉を交わしているのは、広場の真ん中に立った看板について。

『冒険者募集!』

大きくそう書かれた文字の下には、たくさんの旅人たち。

街で起きた困ったこと、ちょっとしたお使い、頼み事。

旅人たちはそうした『クエスト』を解決することで冒険に必要な路銀を稼ぐ。

普段なら酒場や宿屋に貼りだされるクエストだが、広間で発表されているあたり、どうにも大きな問題のようだ。

とにかく沢山の人手を集めたい。

大々的な募集が功を奏して、その目的は達成できた。

旅慣れた2人組、人の良さそうな5人組、コネコゴブリンと男女のパーティ。

そして、街についたばかりの旅人が1人×3。

集まった人達の視線を一身に受け、細身の男が説明を始める。

「この度は、集まっていただきありがとうございます」

手元の資料を凝視しながら、慌ただしく喋る気弱な男性。

その男性が言うには、街の存続に係る問題が発生したとのこと。

ダーウメが星屑の街と呼ばれる所以、その星屑に問題が起きた。

聖夜に空から降ってくるはずの星屑が、今年は街の周りに散り散りになってしまった。

「我々の生活は星屑を加工し、販売することで成り立っているため、これは由々しき問題です。

幸い星屑はこの街の上空付近で飛散したようなので、街の周囲に散在していると考えられます。

あなた方にはこの星屑を集めていただきたい、これが今回の依頼です」

ひと通り説明を終え、安堵の息を漏らす男。

その男に金髪のマーチャントが質問を投げる。

腰に差した2つのそろばんが特徴的な男だ。

「それで、成功報酬はどうなっていますか?」

「はい、えーっとですね、報酬の方は出来高制としてまして、具体的にはですね、えーと、集めた星屑の数×10Pとして考えております」

資料をめくりながらたどたどしく喋る男。

10Pとは、この世界の共通通貨ペリカのことだ。

「なるほどなるほど。それで、どれくらいの星屑が散った感じですか?」

「えーっとですね、大体例年100個程の星屑が街に降りますので、おそらく今年も同程度だと考えております」

その言葉を受け、大柄な男がポツリとこぼす。

「となると、よくて300Pといったところか」

その声音には明らかに不満の色が聞き取れた。

「う、うぅ、えーっとですね、そのー……」

「代わりましょう」

重く響く声が、しどろもどろの男にかかる。

「私がこの街の代表者です。

えー報酬に不満がある方もいらっしゃるようですが、最大で1000P程度になると考えると妥当でしょう。

とは言え、確かにこの場の人数で争うとなると、ロクに報酬が得られず終わる方も居るかもしれません。

そこで、皆様の滞在費は我々が負担します。食事と寝る場所の用意はこちらで行いましょう。

また,旅に出る際には一回につき最大で3日分の食料と水を支給します。

それでも納得がいかないというならば、仕方ありません。この度はご縁がなかったということで。

以上です、何か質問はありませんかな?」

威圧的な声。言外に「代わりは居る」という宣言。

その声を受け、3つのパーティは方々に散っていく。

残ったのは、孤独な三人。

「これはー、なかなか、大きな仕事になりそうですね」

金髪のマーチャントが独り言ちる。

商人としての思考が、脳内のそろばんを軽快に弾く。

「こんにちは、お二方も、お一人ですか?」

「………なんだ?」

「んー?」

損得勘定に従って、彼は2人の男に声をかけた。

1人は大柄な男。体も顔も人一倍大きく、燃えるような赤髪の男。

もう一人は小柄な男。ぶかぶかな服に透き通った緑髪の男。

金髪のマーチャントは、笑顔を貼り付けたまま語りかける。

「私は商人の町から来たリョウと言うものです。

私の町では成人すると行商に出る仕来りが有りまして、その旅に出たところなんですよ。

どうも今回の依頼、協力して行ったほうが効率が良いとは思いませんか?」

ベルトにさした2つのそろばんを見せながら、リョウは自分の境遇を語る。

「どうです、一時的でも構いませんので、パーティを組みましょう。

他の方々と対抗するためにも」

笑顔の奥に金勘定と、損益計算、そしてあらゆる手段を押し隠し、リョウは交渉を続ける。

不自然さを感じさせない会話術に、大小両方の男が賛同を返した。

「………オレはハンターのくすもと(´・ω・`)だ」

大柄な男が自己紹介をする。

「Aridaというところから来た。この斧は、まあ、気にしないでくれ」

「それよりも(´・ω・`)の部分が気になるのですが」

「こいつは、あー、無理して発音しなくていい」

「分かりました」

続けて小柄な男が自己紹介を行う。

「俺はハジだ。ど田舎グリーンランドから来た」

「グリーンランドというと確か……」

「ああ、最近天災に見舞われてさ、もうボロボロなんだよねー

んで、腕の良い大工を探しに来たんだ。あとそいつを雇うための金稼ぎだな」

「なるほど、ちなみに職業は?」

「ファーマー。農耕民族だぜ。よろしく頼むわ」

「はい、よろしくお願いします」

ハジが右手を差し出し、リョウがその手を握る。

その上に、くすもとの手が重なる。

「よろしく頼む」

「楽しく行こうぜ」

「ええ、そうですね、よろしくお願いします」

ここに、1つのパーティが生まれた。

まだまだ1+1+1のパーティが。





キャラクターデータ

竜人(GM):なとりうむ

レイス:緑竜

アーティファクト:六分儀

特徴:

日々なんとなくで生きており,その皺寄せに悩む日々.


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