風龍
「なあ、ミルア。風龍の崖ってどうゆう場所なんだ?」
俺はふと訊いてみた
「風龍の崖は一年中強風が吹いていて近づく者を突風で吹き飛ばすのよ」
「その突風って自然現象なのか?」
俺が訊くとミルアが顔を少し曇らせた
「それが、よくわらないのよ。噂では七大自然龍の風の龍、風龍が住んでいるとか」
「マジかよ!龍が居るかもかよ、七大自然龍とかすげぇな!」
俺は龍とかドラゴンとかその手の類が大好きなのだ
「なんでそんなに嬉しそうなのよ?」
ミルアは少し変な奴を見る目で俺を見た
だが俺は気にしなかった、これから龍が見れるかもという期待に胸アツなのだ
ニヤニヤしている俺を見てミルアは溜息を溢した
そんな会話をしていると風龍の崖の近くまで辿り着いた
ミルアの話通り強風が絶え間無く吹き荒れていた
「うわ、想像以上の強風だな」
余りの強風に目を開けると直ぐ様ドライアイになりそうだ
そんなこの強風の中、ミルアが何か呟いていた
呟き終わったと思ったらさっきまでの強風が嘘のように感じなくなった
「すげぇな、あの強風を止めたのか?」
「止めたんじゃなくてある程度の風を受け付けなくしたのよ」
俺はミルアに拍手をした
「さんきゅうな、ミルア。んじゃ、先に進むか」
風の影響を受けなくなったので苦なく先に進むことができた
暫く歩くとかなりの高さのある崖が見えた
「おっ、あれが風龍の崖か!」
俺は崖を見ると走って向かった
ービューン
刹那、突然の強風により俺の体は空を飛び、崖とは反対方向へと倒れた
「なに!?今の風」
ミルアが驚いて崖の方を見ると、風を纏った鮮やかな緑色の神々しい龍がいた
俺は急いで崖へと近寄り龍を目視した
「すげぇー!本当に龍がいた!チョーかっこいい!」
俺は初めて龍を見て、余りの嬉しさに土下座した
「ありがとうございます!」
勿論、隣でドン引きしているミルアなどお構いなし
『人間の子よ、我が住処になに用だ。事と次第によっては生きて帰れぬと思え』
風龍の強風のような怒涛の声が鳴り響く
「風龍!あたし達は…」
「うぉー!鱗光ってるぅ!かっこいぃ!」
「うるさい!ケンタあんた少し黙ってなさい」
ーゴンッ
ミルアの拳が俺の頭にクリティカルヒットした
「痛ぇ!」
俺は頭に出来たコブを摩った
『はっはっは、お主ら愉快じゃの。はっはっは!こんなに笑ったのは100年ぶりじや』
風龍の突然の笑いに俺達はポカーンとしていた
『ふぅ〜、すまんすまん、お主ら悪い人間ではなさそうじゃの』
「えーっと、どゆこと?」
俺とミルアは未だに状況を理解できずにポカーンとしていた
「えーっと、風龍さん?」
「おお、そうじゃよ。わしがこの崖の主、風龍のウェルヴじゃ」
やっと呼吸を整え終わった風龍は二人に自己紹介をした
「風龍!この崖に生息している風鈴草を分けて欲しいの、友達の病気を治す為には風鈴草が必要なの!」
ミルアが風龍に頼んでみると風龍は少しばかり顔を顰めた
俺は悟った、これは一筋縄にはいかないなと
「実はのぉ…風鈴草はもうこの崖にはないんじゃよ」
風龍の予想外の言葉に二人は困惑した
「え、風鈴草ないの!?」
俺が驚き尋ねると風龍は暫く考え、口を開いた
「実はな…風鈴草はある盗賊団によって盗まれてしまったのじゃ」
「盗賊団?」
「あぁ、わしが少しこの崖を離れた時に根こそぎ盗って行きおった…。気づいた時には奴らは転移魔法陣の中じゃった」
「んで、逃げられちゃった訳だ」
「ちょっと!ケンタ失礼よ」
ミルアが注意した
「いいんじゃ、その者の言うとおりだからの」
風龍は俯き言った
「んー、じゃあ俺がその盗賊団から取り返しに行くよ!」
「いいの?」
風龍は期待の目で俺を見た
「ん、べつにいいよ」
「済まぬな人の子よ」
風龍はうれしそうに礼を言った
よっぽどうれしかったのか少し口元が緩んでいた
「ちょっと、ケンタ!取り返すって言ったって、相手がどこにいるかわかってるの?」
ミルアは勝手に話を進められて少しばかり不機嫌なようだった
「賊の名はパンプキン、珍品を盗んでは貴族など金持ちに売りさばいておる。アジトは港町プワールのどこかにあるらしいぞ」
「そんなに詳しく知ってるのになんで自分で行かなかったんだ?」
俺は風龍に訊いた
が、なぜかミルアが答えた
「馬鹿ねぇ、こんなに大きな龍が港町なんかに現れたら町中がパニックになるじゃないの」
「あ、そっか」
俺は風龍の体を改めて見てみた
鮮やかな美しい薄緑の鱗に覆われたその体は有に50mはあるだろう
ミルアの言った通りこんなに巨大な龍が町に現れたら唯では済まないだろう
「よし、じゃあ風龍さんはここで待っててくれ!俺たちがパンプキンの連中から取り返してくるからよ!」
「ちょっと待ちなさい、ケンタ!行くにしても先に洞窟に戻って事情を話してからにしましょ」
確かに相手の詳しい人数もわかってないし二人だけで行くのは無謀だと考え、ミルアの提案に賛成した
一先ず風龍に別れを告げ、ゴブリンの洞窟へと戻った