薬学士
「ボスリン、取り敢えず捕まえた人間を解放してくれないか?」
「わかりました。おい、お前達人間さん方を解放してやりなさい。しっかり謝るんだぞ」
ボスリンに言われて子分ゴブリン達はすぐに動いた。
「ところでボスリンさん、病気の症状はどういったものですか?」
フレアがボスリンに尋ねた。
「熱が上がったり下がったりと波のように出たり、目眩が起きたりなどですかね。」
ボスリンが答えた。
「なるほど、それはタイタス病の症状ね」
フレアが腕を組み言う。
「なんだ?フレア。病気とか詳しいのか?」
「詳しいもなにも私の家系は代々薬を作っているから大抵の病気のことなら分かるし、薬も作れるわ。」
俺は始めてフレアを尊敬の眼差しというもので見た。
「認めたく無いけどキルーシュ家は知らない者はいないとまで言われた天才薬学士なのよ」
なんとあのミルアも認める程であったことに俺は驚いた。
「なぁ、フレア。ボスリンの病気を治す薬を作ることって出来るか?」
俺がフレアに尋ねるとフレアは余裕綽々と言った顔をして頷いた。
「ホントか!?よかったなボスリン病気が治るぞ!」
「ご迷惑をかけた上に薬まで。なんと御礼を申し上げたら」
ボスリンは申し訳なさ半面、嬉しさ半面と言った感じだった。
「フレア、早速薬を調合してくれ!」
俺がフレアに頼むとフレアはため息をつき直ぐに調合の準備を始めた。
ミルアはフレアが活躍するのが面白くないようで顔を顰めていた。
「駄目ね作れない」
「作れない?なんでだ!?」
俺は思わず大きな声を出してしまった。
「材料が足りないの、風鈴草の葉が足りないわ」
「だったら俺がその風鈴草ってのを採りに行ってやる」
俺は威勢良く名乗りを上げた。
「ケンタが行くなら私も行くわ」
ミルアも俺に続いて名乗りを上げた。
俺はミルアが一緒に来てくれると言ってくれて嬉しかった。
正直、一人だと心細かったのだ。
「それじゃあ二人とも、風鈴草は風龍の崖に生息しているわ。風龍の崖はここから東へ行くと着くわ」
「わかった、サンキューなフレア」
俺が御礼を言うとフレアは少し照れた顔をして直ぐにいつも通りのお嬢様顏に戻った。
「私はボスリンさんの具合を見なきゃだから行けないけど気を付けていくのよ」
フレアが俺らに激励を掛けて、俺とミルアはそれに頷いた。
「それじゃ、ここは頼んだぞ!フレア」
そう言って来た道を戻った。
道中崩れていた天井の岩は子分ゴブリン達によって処理されており子分ゴブリン達に礼を言って洞窟の外まで出た。
洞窟入り口では丁度先生達が洞窟の中へ生徒達の捜索へ向かう所だった。
ミルアは一連の流れと生徒達の安否を先生に伝えた。
そしてゴブリン達には手を出さないでくださいと頼んだ。
先生達は生徒達の安否を聞くと先程までの険しい顔から一変、安心した顔になった。
用件を伝えると俺とミルアはとっとと風龍の崖へと向かった。