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 さっきからずっと何やら、アドニスはブツブツ、ブツブツ言っている。

 ミルティスはそれに見飽きて文句を言った。

「おまえなー、何を考えてるか知らないが、はっきり言ったらどうだ?」

「なら、聞くが、お前心当たりがあるって言ってたが本当なのか?」

「ああ。でも、オレというよりはティアラの方だがな」

「この小娘が?」

 アドニスがあざ笑うように言うと、ティアラは身を乗り出して言った。

「体は小さくても、あなたよりは容量は豊富だと思うけど?――あなたには負けてないわよ?」

 ティアラは意味ありげな笑顔でアドニスを見た。

「で、どこにあるんだ、香水は。知ってるんだろ?」

「そんなに焦らないで」

 ティアラはミルティスの肩から下りて、立ち止まった。二人もそれを見習って立ち止まってティアラを見た。

「あなたは、この町の人だから分かるかしら?リッチ・クイーンのことを……」

「……リッチ・クイーンと言ったら、あの骨董コレクターの娘、リビアさんのことか?」

「えぇ」

「リッチ・クイーンって何だ?」

 ミルティスが問う。

「リッチ・クイーン。そのまま、お金持ちの女王って意味ね。リビアに付けられた名称。しかも、何もしないでお金が入ってくるといういわく付きよ」

 また、意味ありげな顔をして、ティアラの目が輝いた。

「それが何だって言うんだ?」

 アドニスに苛つきの表情が見える。

「おかしいと思わない?ただの骨董コレクターの父を持つ娘が、あんな裕福に暮らせるとは思えるかしら?私はどうもそうは思えなくてね。その父も、会社の社長とかでもないしね」

「どこかに収入源があると……?」

 ミルティスは何となく分かってきたみたいだ。

「そうね……」

 ティアラは一度、目線を上げた。

 今夜は満月だ。目線を上げたティアラの金色の目が光り輝く。

 いつ見てもキレイな目だとミルティスは思った。

「結局、どうなんだ?」

「まー、結論を言うと香水はその家にあるってこと」

「マジかよ?!」

 アドニスは驚いた。しかし、話の進み方からして、予想できないことでもなかったが。

「実話よ」

「ウソだろ?」

「ウソなんて言ってないわよ。今日、その家にお呼ばれして、実際、この目で見たもの」

 ティアラの意味ありげな顔の真実が開花する。

「本当なんだな?」

「えぇ」

「……もっとくわしい話が聞きたい」

「物分かりが早い人でよかったわ」

 ティアラはにこやかに笑った。そして、リビアたちと出会い、家に行ったことをアドニスにすべて話した。


 


 アドニスは腕を組んでうなって言った。

「そこまで言うんなら本当なんだろうな。しかし、よく、自分のことをさらっと言うよな」

「どういうこと?」

 ティアラが逆に聞いた。

「言ってたんだろ?リビアさんが香水を誰かに盗まれったって」

「ええ、言ってたわ」

束縛されぬ者への幸福フリーダム・ハピネスの方割れは女怪盗シルビアに盗まれたそうだ。知らなかったのか?」

「それは、知ってたわ」

「ということは、あの人は同業者か。リビア=女怪盗シルビア」

 ミルティスが結論を言う。

「……なるほど、これで一本に繋がったわね。これからが大変よ、ミルティス。相手さん、簡単に転がってくれるとは思わないけど?」

「やるしかないだろ?絶対、持って帰るって言ったんだから」

「そうね」

 ミルティスが駆け出した。そのあとからアドニスとティアラが追う。

「相当、信頼してんだな。あいつのこと」

「あら、やきもち?」

 くすっとティアラが笑う。

「なんでだよ。……ちょっと羨ましい……だけだ」

「付き合い方が違うのよ。私達は……」

 そう言ってティアラはミルティスに追いついて、肩に乗った。そして、ミルティスはティアラの頭を軽く撫でる。俺もあんたを信頼してんだぜとでも言うように――


 


 リビアの家に着いたミルティスとティアラ、アドニスは門を右へと横切り、ある一角へと辿り着いた。

「ここだけなんだ。防犯カメラの死角は」

 ミルティスがアドニスに言う。

「この家の全体も調べていたのか?」

「役にたっただろ?」

「まーな。しかし、この塀を飛び越えるのか?四メートル近くあるぞ」

「四メートルぐらいならいけるだろ?」

 一瞬の沈黙。そして、アドニスは深いため息をついた。

 本当は目の前の奴に叫んでやりたかったが、ここはもう敵地だ。無駄なことはしたくない。

「お前の標準で考えるなよ。こんな高さ、俺は飛べない」

「そうだな」

 冷静に答えるミルティス。

「手を貸そう。ティアラ、先、行っててくれ」

「分かったわ」

 ティアラは少し後ろに下がり、弾みをつけて塀の上に登ぼり、ミルティスを見て頷いて、塀の中に入った。

 ミルティスはティアラの合図で行動に移した。塀に手をつけて右足を少し後ろにさげて、馬跳びのように背を曲げた。

 それを確認したアドニスは一メートルほど後ろに下がってミルティス目がけて走った。左足を軸に右足をミルティスの背に置いて飛んだ。塀の上に着地したアドニスは下に誰もいないことを確認して、下りた。

 ミルティスは背中に付いた土ぼこりを払って、ちょっと下がって、反動をつけて飛び上がって、塀に左手を添えて、またぎ越えた。

 先頭にティアラ。そして、ミルティス、アドニスと続いて、庭を駆けていく。

 アドニスはミルティスに近づいた。

「ミルティス」

「ん?」

「お前、よく『お人好し』って言われないか?」

「言われる。それが?」

「別に。……いいんじゃないか」

「あんまり無駄口叩いてると、本当に見つかるわよ」

 ティアラが小声で制す。

 二人は鼻で笑って、静かにティアラについていった。香水の場所はティアラしか知らないから。

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