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 朝日がすっかり昇ってしまい、普通ならば、太陽と呼ばれる時間のころに、ミルティスは目を覚ました。

 体を起こして、目を擦る。カーテンを閉めているにもかかわらず、部屋は明るい。

 いい空気を入れるためにカーテンと窓を開けると風が吹き込んで、木々の葉とミルティスの髪を揺らした。

「おはよう」

 ティアラがベッドの薄いふとんの上から顔を上げてあいさつをする。

「……おはよ」

 ミルティスもあいさつを返した。まだ、覚めきってない目を擦っているとティアラが話し掛けてきた。

「まだ、眠いの?」

「寝過ぎた……」

 ティアラがくすりと笑う。

「もう、朝食食べちゃったわよ」

「早いな」

「それは、私が早いんじゃなくて、あなたが遅いんじゃない?」

「そりゃ、もっともだ」

 ミルティスは少し寝癖のついた髪を軽く束ねた。

「顔、洗ってくる」

「いってらっしゃい」

 ティアラはまた頭を下ろすと目をつぶった。

 昨日の夜はゆっくり眠れなかった。祭りの所為でもあったが、なかなか計画が立てられなかったのもある。アドニスからパンフレットに書いてない博物館の細かい所も聞いていたが、はじめてきた町だ。今日、詳しく町のことも知る必要があった。部屋の壁に立てかけてある時計を見ると、朝の十時を過ぎたところだった。

 ミルティスは洗面所に行くと、まず、部屋に備え付けの櫛で髪を梳いた。そして、いつもの髪ゴムで髪を束ねた。髪は長いが量が少ないため少し束ねにくい。束ねたところで長さはあまり変わらず、腰のあたりでゆらゆらなびく。次に乾いた口に水を含んでうがいをする。最後に顔を洗ってトイレに行く。

 戻ってきたミルティスが薄手のコートを着る音でティアラは目を開けて、床に降りた。ドアを開けて階段を使って下へ降りた。

 食堂へ足を向けると、二、三人しか居らず、ミルティスとティアラは二人用のテーブルに座った。

「おはよう。ミルティス、ティアラ」

 アッシュがメニューを持ってあいさつをしてきた。

「おはよう、アッシュ」

 ティアラが言った。

「おはよ」

 ミルティスもあいさつをして、アッシュからメニューを受け取った。

「何にする?」

「……トーストとコーヒー。あと、コーヒーに砂糖一杯入れといて」

「もしかして、ミルティスって甘党?」

「少しな」

「そっか。あと、トーストに何か付ける?」

「マーガリンと……あれば、はちみつも」

「了解」

 アッシュはミルティスからメニューを受け取って厨房に入っていった。その間、まわりを見渡す。それほど広いとも言えない広さだったが、宿が木で出来ているため和むことが出来た。それに、観葉植物やテーブルの上に置いてある小さな花、窓から差し込む光が待っている間の時間を楽しませた。

 数分経って、頼んだトーストとコーヒーを盆に乗せてアッシュが出てきた。少し焼けたトーストとコーヒーの香りが食堂に漂う。

――――何しろ、香りを断ち切ってしまう要素(人)が少ないのだから。

「どうぞ、ごゆっくり」

「ありがとう」

 アッシュはトーストとコーヒー、そして、マーガリンとはちみつを置いて奥へ引き返していった。トーストをかじりながら前に座っているティアラを見る。相変わらず体を丸めて目を閉じている。何度か猫になってみたいと思ったことはある。自由気ままにどこへでも行って生きてゆく。そんな猫に憧れもしたが、今、自分がその状況だからもう、その考えはなくなった。ティアラに会う前は一人で、ちょっと気取って怪盗をやっていたりもしたが、ティアラに会って本当に良かったと思っている。そんないい相棒だ。

「何、ヒトのことジロジロ見てるのよ」

「いや。いい相棒を持って幸せだなと思ってね」

「気持ち悪いこと言わないでよ。食べたんだったらさっさと行くわよ」

「はいよ」

 ティアラが先を歩く。あんなことを言ったのは照れ隠しなのかもしれない。

 おっと。

 また思いに浸っているとティアラに言われそうだ。早くしなさい、と。

 ミルティスはティアラの後ろで顔に笑みを浮かべて、部屋のドアを開け、ティアラが入った後、ミルティスも入ってドアを閉めた。

 洗面所に行って歯を磨いて、荷物を持って部屋を出た。カウンターでチェックアウトをしてから玄関に行くと、アッシュに会った。

「もう行くの?」

「あぁ。まだ、いろいろまわりたい所があるからな」

「……そっか。また、会えるといいね」

「そうだな」

「また、来る時があったら会いましょ。アッシュ」

「うん。バイバイ」

 アッシュが手を振ったのでミルティスも軽く手を振った。気休めにしかならない『また』という言葉。例え、この町に再び来たとしてもアッシュには会えない。オレは怪盗だから。

 宿から出たとたんに日が差し込んできて、ミルティスは手をかざした。ティアラが肩に乗って、ミルティスは足を進めた。

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