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 ぽかぽか陽気に誘われて、ミルティスは眠ってしまった。日陰から日向になった場所はミルティスの体を暖かくし、目を覚ました。

 時計を見ると、一時間ぐらい経っていた。よほど、気持ちよかったのだろう。

「目が覚めた?」

「あぁ」

 その時すでにティアラは起きていた。

「寝るの、好きね」

「気持ちいいからな。そろそろ戻るか」

「そうね」

 ミルティスは立ち上がって、また、背伸びをして、ティアラを肩に乗せて、小川のある裏手から表通りに出た。

 ちょうど、出たところで財布を持ったアッシュと会った。

「買い物か?」

 ミルティスはアッシュに聞いた。

「うん、買い出し頼まれちゃって」

 と、財布を手前に示した。

「それにしても、さっきより人多くなってないか?」

「うん。今日からオータムフェスタ――つまり、秋祭りがあるんだ。だから、早めに買い出し行かないと大変なんだ」

「なるほどね」

 ミルティスはアッシュを見送ろうと思ったが、町を見るために引き止めた。

「アッシュ、一緒に行っていいか?」

「うん、いいよ」


 


 二人が向かったのは隣通りの市場だった。屋台感覚で野菜はもちろん、果物などの食べ物類から、アクセサリーなどの小物類も売っていた。

「ミルティス、その辺見てきたら?その間に買ってくるからさ」

「そうするよ」

「一時間後、ここに集合ね」

「了解」

 アッシュと別れたミルティスはティアラと共に市場を見てまわることにした。


 


「どうするの?」と、ティアラ。

「何が?」と、ミルティスが聞き返す。

「一時間、どうする気なの?」

「観光する気。――別に急いでるわけでもないんだしさ。宿に帰ってからでも遅くはないんじゃないか?計画立てるの」

「あなたが言うんだったらいいけど、明日、忙しくなるわよ?」

「承知の上」

「なら、いいけど」

「あ」

「どうしたの?」

「おなか空いてきた」

 シリアスな話をしていたというのに台無しだ。

「なら、何か買えば?」

「そうする」

 ミルティスはいろんな店の中から、手軽に買って食べられる果物を売っている店を見つけた。

 目についたのは、真っ赤に燃える赤いリンゴだった。

「おねーさん、リンゴ一つね」

「はーい」

 ミルティスはリンゴを持って眺めていた。

「綺麗な赤いリンゴだな、ミルティス」

 そう呼びかけられて、ミルティスは横を見た。そこには同じりんごを持った人物がいた。

「あぁ。―――って、アド☆〇……!!」

 ミルティスは、アドニスに口を塞がれた。

「お前なー、人の名前を叫ぶんじゃねーよ」

「わりィ」

 ミルティスは顔の前でごめんと手を示した。ここで、人の名前を叫ばれては元も公もない。バレては困る。それは、ミルティスも同じである。

 アドニスというのはミルティスと同じ怪盗であり、今回、『束縛されぬ者への幸福フリーダム・ハピネス』という香水を狙っているとの情報もある。

 赤紫の髪で赤色が強い。ミルティスと違って髪が短く、顔も整っていた。

「おねーさん。やっぱ、三つね」

 ミルティスがアドニスを見ると不思議そうな顔をしていた。

「奢り」

「いや、そういうことじゃなくて、いつも、ぎゃーぎゃー言ってるお嬢さんが静かなんでね」

 アドニスはティアラを指した。

 すると、ティアラはその指を噛んだ。

「いってーなー」

 噛まれた指を見ると血が滲んでいた。その指を口に含んだ。鉄の味がした。

「ぎゃーぎゃーなんて言ってないわよ。ただ、あんたと話したくないだけよ」

「俺も嫌われたものだな」

「ミルティスもミルティスよ。同業者と和んでんじゃないわよ」

「まーまー、そう言わずに、な」

 ミルティスはティアラの頭を撫でた。

「あれ?アドニス帰ってたんだ!」

 とアドニスの後ろからやって来たのは、買い物を終えて袋を抱えたアッシュだった。

「帰ってきてたんだね」

「今日な」

「ミルティスと知り合いだったの?」

「……いや、偶然、買うものが一緒で、話してるうちに息があってな」

 アッシュには二人が知り合いであることは隠さなければならない。そして、怪盗であることも。

「そうか。……もう宿に帰るんだけど、ミルティスたちどうする?」

「そうだな。まだ、いろいろ話したいことがあるし、先に帰っててもらえるか?」

「うん、分かった」

「夕食は宿の食堂で食べるから」

 ミルティスは言った。

「分かった。親に言っておくよ」

 アッシュは買い物袋を抱え直すと宿へ帰ろうとしたが、ティアラに呼び止められた。

「アッシュ、私も一緒に帰るわ」

「え、いいの?」

「いいのよ。ミルティス、先帰ってるから。後はよろしくね」

「分かった」

 ミルティスはティアラの頭を撫でるとティアラの体を抱えて、地面に下ろした。

「アッシュ、お嬢様をよろしく」

「了解」

 アッシュはティアラを横に宿に戻っていった。

 それを見送ったミルティスとアドニスは苦笑いをした。

「ホントに嫌われてるのかもな」

 ミルティスは言った。

「うるせぇ」

 と、アドニスは言い返した。

 今度は笑顔だった。

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