ブラックパーティー
「なあ、しないか」
俺に言ってきたのは、彼女がいない連中ばかりだ。
もうリア充の祭典であるクリスマスから数カ月が経っていて、すぐそこには春が来ているような時期だ。
「なんで今頃なんだよ」
俺が友人にいった。
「いいじゃないかよ。知ってるか、韓国には4月14日にはブラックデーという日があって、黒い物を食べるっていう風習があるそうだ」
「それってボッチ同士が合コン兼ねてする日でもあるんだぜ。俺らにはそんな奴らがいるか」
「いないからこそ、俺らでやるんだよ」
高校も3年生になって、受験で忙しい時期にも関わらず、こんなことを言ってきている友人の気がしれない。
もっとも、勉強ばかり根詰めても仕方ないから、2時間ぐらいならいいだろうと思ったのが、運のつき。
「かんぱーい!」
コーラで乾杯して、黒かりんとう、黒ゴマのスープ、そして黒ラーメンをたべることになった。
なにせ黒一色だ。
部屋も黒くしようかという話もあったが、それはさすがにやめた。
「彼女がいつできるかって言うこと、賭けてみないか」
「やめてくれ、いうと寂しくなる」
「誰もが生涯独身ってのに賭けるだろ」
誰かが笑いながら言った。
「それでもいいかなって思いだしてる自分がいるのが怖いよ」
「よく思うようになってきたことだな。なにせ、周りはリア充ばかり、俺らはボッチ。しかたないさ」
コーラが半分ほど入ったコップを一気飲みしようとしてむせていた。
「じゃあな、お前ら」
「おう」
「また明日な」
友達は、飯を食うだけ食ってから、バラバラと帰って行った。
残されたのは、黒々とした器の数々だ。
ため息をついて、来年こそは彼女ができるようにと祈りながら掃除を始めた。