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【第三章始まりました】「死んだ娘」と捨てられて――皿洗いから始まる逆転人生  作者: 風谷 華
第三章

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第11話 暗殺者の影

 朝の光が執務室に差し込んでいた。

 机の上には、大きな地図が広げられている。七つの王国が描かれた、古い地図だ。

 私は、その地図を見つめながら、深く息をついた。

 

 アルメリア王国。

 私の故郷。

 でも、戻りたくない場所。

 あの国で受けた仕打ちを思い出すと、胸が苦しくなる。


「リディア」

 扉が開き、レオ様が入ってくる。

 私は顔を上げた。

「レオ様」


 レオ様が地図を見て、そして私の隣に立つ。

「まずは、カルナード王国から行こう」

 私は驚いて、レオ様を見上げた。

「え? でも、アルメリアの方が近いのに……」


 レオ様が優しく、私の手を取る。

「君が……あの国で苦しんだことを、俺は知っている」

 私の目に、涙が浮かぶ。

 レオ様は、全部知っているのだ。

 私が、あの国で、どれだけ辛い思いをしたのか。


「無理に、すぐに行く必要はない」

 レオ様の優しさが、胸に沁みる。

「レオ様……」

 

 その時――

 バリィン!

 窓ガラスが割れる音がした!


「リディア!」

 レオ様が私を抱えて、床に倒れ込む。

 何かが、私たちの頭上を飛んでいく。

 ドスッ!

 壁に何かが刺さる音。

 私は呆然と、壁を見た。

 矢だ。

 黒い矢が、壁に深々と刺さっている。


「リディア!」

 扉が勢いよく開いて、アラン兄様が駆け込んでくる。

 剣を抜いている。

「大丈夫か!?」

「はい……レオ様が……」

 レオ様が私を抱きしめたまま、周囲を警戒している。


 サリアも駆け込んできた。

 剣を抜いて、窓の外を見ている。

「誰もいません……!」

 

 その時――

 白い影が窓から飛び出していった。

 ニーヴだ。

「待ちやがれ!」

 ニーヴの怒った声が聞こえる。


 私は、レオ様に支えられながら立ち上がった。

 窓の外を見ると――

 屋根の上に、黒い影が。

 人間……じゃない。

 あの動き方は、人間のものじゃない。


 ニーヴが屋根に飛び乗る。

 でも――

 黒い影は、霧のように消えた。

 文字通り、消えたのだ。


「くそっ……!」

 ニーヴが悔しそうに戻ってくる。

 窓から飛び込んできて、床に着地する。

「逃げやがった! あの野郎、俺様より速えとか生意気だぞ!」


 アラン兄様が壁に刺さった矢を抜いた。

 その瞬間、アラン兄様の顔色が変わった。

「これは……」

 私も、レオ様も、矢を見る。

 矢の羽根に、紋章が描かれている。

 砂漠の太陽――カルナード王国の紋章。


 でも。

 矢全体から、黒い瘴気が漂っている。

 この瘴気……

 私、レオ様、ニーヴが、顔を見合わせる。

(これは……魔王の……!)

 でも、言えない。

 秘密は、私たち三人だけのもの。


「リディア!」

 エリシア母様が駆け込んでくる。

 私に駆け寄って、抱きしめてくれる。

「大丈夫!? 怪我は!?」

「はい……レオ様が守ってくださって……」


 エリシア母様が矢を見て、

 表情が曇った。

「この黒い瘴気……不吉な気配……」

 母様も、何か感じているのだ。


 その時、使者が駆け込んでくる。

「女王陛下! これが……矢と一緒に……」

 使者が、手紙を差し出す。

 私は、震える手で受け取った。


 封を開く。

 そこには――

『新女王よ、二度と我が国に近づくな――ファリード』

 私の手が、震える。

 レオ様も手紙を読んだ。

「これは……罠だ」


 アラン兄様が返事をした。

「罠?」


「誰かが、ファリード様の名を騙っている」

 レオ様の声は、冷静だ。


「本当にファリード様が殺すつもりなら、こんな手紙を送らない」

 アラン兄様が拳を握りしめる。

「では……誰が……何のために……」


 ニーヴがふてくされた顔で

「まあ、悪い奴に決まってるだろ! 俺様が全員ぶっ飛ばしてやるから安心しろ!」

 アラン兄様が、真顔でニーヴを見る。

「……お前、さっきのやつも取り逃してただろ?」


 ニーヴが怒る。

「うるせえ! あれは不意打ちだったんだよ! 俺様は本気出してなかったんだからな!」

 私は、思わず笑ってしまった。

 こんな状況なのに。

 

 でも、ニーヴのおかげで、緊張が少し和らいだ。

 私は、決意を新たにする。

「それでも……行きます」

 全員が私を見る。

「カルナード王国に……行きます」


「リディア……」

 アラン兄様が心配そうだ。

「でも、危険すぎる」

「だからこそ……行かなければ」

 私は、地図を見る。

「誰かが……カルナード王国の名を騙って……私を脅している」

「なら……真実を確かめに行かないと」


 レオ様が頷く。

「わかった。でも、護衛を増やす」


 その時、カトリーナが入ってきた。

「リディア様……私も、同行させてください」

 私はカトリーナは残ると思っていたので、驚いた。

「カトリーナ……でも……」

 カトリーナがぼそっと。

「危険だからこそ、です」

 

 みんな……私のために……

「ありがとう……みんな……」


 

 その日の夜。

 私の部屋の窓が、そっと開いた。

 レオ様だ。

 ニーヴも一緒に入ってくる。

 私は、窓の外を見つめていた。


「レオ様……」

 レオ様が、私を抱きしめてくれる。

「怖かっただろう」

 私は、頷いた。

「魔王の手下が……動き始めている……」

 レオ様が、私の髪を優しく撫でる。

「ああ……でも、大丈夫だ。俺が守る」


 ニーヴがドヤ顔で言った。

「当たり前だろ! お嬢には俺様がついてる! 魔王の手下なんか、俺様の爪で一撃だ!」


「……お前、さっき逃げられてただろ」

 ニーヴが、尻尾を膨らませる。

「次は絶対捕まえる! 俺様は本気出してなかっただけだからな!」


 私は、笑ってしまった。

「ニーヴ……ありがとう」

 ニーヴが、私の膝に飛び乗る。

 ゴロゴロと喉を鳴らす。


「当たり前だろ。お嬢を笑顔にするのが俺様の仕事だからな」

 私は、ニーヴの頭を撫でる。

 レオ様が、私を優しく見つめる。

「リディア……俺たちが、必ず守る」

 私は、頷いた。

「はい……」


 三人で、窓の外を見た。

 月が、美しく輝いている。

 でも――

 その月の向こうに、何かが潜んでいる気がした。


 魔王の手下かもしれない。

 私たちを、狙っているのだろうか。

 

 でも。

 私は、一人じゃない。

 レオ様がいる。

 ニーヴがいる。

 アラン兄様も、サリアも、カトリーナも、みんながいる。

 

 だから。

 大丈夫。

 私は、必ず……世界を救ってみせる。

 

 

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