零 9
零 の第九話です。
「実は君と零は兄妹である、とか。」
「………。」
「図星だろう?」
この男が言ったことは当たっていた。しかし、なぜこいつは知っているのだろう。
「どうやって知った」
「お、これにはあんたでも本性を現さずにいられないか」
「どうやって知ったか聞いている。問に答えろ」
明らかに男はこの状況を楽しんでいる。それがなんとなく、嫌だった。
「どうやって知ったか、は教えられないな。あんたも秘密は人に話さないだろう?」
こいつ……。
「…そうですね。ですが、その秘密を暴いたのもあなたですよ。」
「うんうん、いいねぇ、君の様な人の瞳が冷たく凍りつくの、嫌いじゃない」
話にならない。こいつには言葉がが通じないらしい。
「それはさておき」
男はニヤリと笑った。ハイライトのない、底無しに真っ黒な瞳でこちらを見つめてくる。
「零はどこだ?」
やはり、これが目的か。
「死にました。あの人は優しいから、人殺しの罪悪感で自殺しました。」
私はためらいなくすぐに答えた。これ以上零に迷惑はかけられない。
「自殺、ねぇ」
男は府に落ちなさそうに繰り返す。
しばらく経ってから男は言った。
「死んだなら仕方ない。あんたはもう帰ると良い。これがあんたの荷物」
男はどこからか私の荷物を取り出し、渡してきた。
帰り際、男はこんなことを言ってきた。
「また会おう」
正直、こんな奴とまた会うのはもう嫌である。
「運命の女神があなたに微笑んだなら、きっと」
女神よ、この男を思いっきり睨みつけてくれ。
家を出てから一時間後、愛から着信があった。
「零ぃ~!!久しぶり~!!!!今から家帰るわ~!!!!!!」
馬鹿に明るいこの声を聞いて、心の底からほっとした。
「何してたんだ、愛。心配したぞ。てっきり軍に捕まってたのかと」
「そぉんな訳ないじゃん!こう見えてもしっかりしてるんだから、私」
「説得力の欠片もない。」
「なぁんでよぉ!!!」
ひとまず、軍に見つかった訳ではなさそうか。安心した。
「実はね、零に言わなきゃいけなことがあるの」
「何だ?」
「…いや、やっぱなんでもない」
「変な奴だ。」
「変でもいいよ。零の傍にいられれば」
愛は手を握ってきた。
「…そうだな。」
今の俺の心拍数は多分とんでもないことになっている。
次回もお楽しみに。