零 17
零 の第十七話です。
「今度は私の話をしましょう。_私の身の上話は関係がありませんので致しませんが。
あなた方はこの戦争の全貌を暴くという働きをしておられるそうですね」
「ええ。」
「その中で、驚異的な兵器の存在を発見されませんでしたか? 例えば、極超音速ミサイルと同じ速さで飛ぶ核ミサイルだとかを」
「ええ、発見しました。どこの記録にも無い、新たな、恐ろしい兵器を。」
男は不適な笑みを浮かべた。
「やはり、そうですか。その兵器はまだ未公開、まだ軍事機密なのです。つまり、今の段階では外部に知られてはならない情報です」
男は俺に銃口を向けた。
「さて、どうしますか。口封じのためにこのまま腹部を撃ち抜かれるか、一生ここで暮らすか」
「それがお前の目的か。俺が死ぬと言ったら愛も死ぬのか?」
「いいえ。愛さんには一生こちらで過ごしていただきます。_レディを傷つけることを、私は致しません」
「そうか。_では好きにすればいい。」
俺がそう言うと愛が必死に叫んだ。
「零!ダメだよ。この人は無事に生きてられる選択肢もくれたんだよ!?一緒にここにいようよ」
「妹であるお前をこんなことに巻き込んだのは俺だ。責任を取らなきゃならない」
「じゃあ責任持って私と一緒に居てよ!!?」
「もうそれじゃ無理なんだ。それに、これはお前が無事でいるための手段なんだ。分かってくれ。」
「…シスコン兄貴」
「はは、光栄だよ」
待ちくたびれた男が会話に入ってきた。
「では、零さんはここで死ぬ、ということでよろしいですか?」
「ああ。それで構わない。」
「そうですか」
男は引き金を引いた。
うわ、痛ってえ。すぐにでも意識が飛んでいきそうだ。
見れば、愛が俺に向かって必死に何か叫んでいる。
何て言ってるかは分からない。
俺は声にならない声で言った。
「愛…逃げろ」
そのまま目を瞑った。
神様。妹と再開できて、幸せでした。
「零!零!馬鹿なお兄ちゃん!!! 目ぇ開けて!! ねえ!!!」
零の口が微かに動いた。
「愛…逃げろ」
自分は死んでおいて逃げろですって?なんて無責任。
その内零は息をしなくなった。
零の死体にすがって泣いていると、男が話しかけてきた。
「さあ、泣いても零さんは生き返りませんよ。あなたにはあの兵器のことをどこで知ったのかお聞かせ願いたい」
今はこの男の言っていることなどどうでもよかった。
何より、零を殺したこの男…いや、ロボットを壊さなければ。
次回もお楽しみに。