零 14
零 の第十四話です。
「ここか…」
高層ビルを前に二人して呟く。
メールに書かれていた場所は以外と近所で、すぐにたどり着くことができた。
インターホンを押すと、返事はなかったがすぐにエントランスの扉のロックが解除された。
13階に着き、ドアをノックする。なんでインターホンが押せなくなってるんだ…。
すぐにドアが開き、背の高い男が出てきた。
「ようこそお越しくださいました。さあ、上がって」
そう言って、男はリビングへ歩いていく。
俺達はそれに着いていきつつ、少し安心していた。
部屋はきれいだし、信用できるかもしれない。
「どうぞお掛けください」
勧められて俺達はいかにも高級そうなソファに腰かけた。
男はお茶を淹れてくれた。
茶葉の香りが綺麗な部屋に立ち込める。先に口を開いたのは俺だった。
「愛が撃たれた件についてお話があるそうですね。」
「ええ。私であれば真実の解明に役立てるかもしれません」
「詳しくお願いします。」
少し早口で言うと、彼は微かに笑って言った。
「まあ焦らずに。お茶が冷めてしまいますよ。これは冷めると味が変わってしまう種類でねえ。それとも、あえて冷まして飲みますか?ええ、毒味はお好きな方で?」
なんだコイツ。
「あいにく、毒味は好まないのですよ。ですのでお茶が冷めてしまう前に話を終えられたらと。」
「そうですね。一つ聞きますが、愛さん。犯人とは面識が?」
「わかりません。逆光で顔が見えませんでした。」
「そうですか。では、本題に入らせていただきましょう」
男の声のトーンが少し低くなる。
「私は犯人の親友だったのです。彼があなた方に捕まる直前までね。彼の家は貧乏でした。元は金持ちの家だったのですが、第三次世界大戦の時に騙されて、一気に落ちてしまいましてね。_よくあることです。
彼はそんな大変な時に生まれたんです。長男だったこともあり、彼は物心がついた頃から働いて、家族を養っておりました」
「それで?」
「しばらくそんな生活を送っていたら第四次世界大戦が始まりまして、彼は戦地へ行くことを余儀なくされました。軍隊というのは給与があまり良いものではなくてねぇ。彼は寮で暮らしているから良いものの、家族の暮らしが悪化していった。そのようなあまり良くない状況の時に、あなた方お二人が軍から逃げたした。_なんでも、責任から逃れるため、らしいですね。いいえ、それには言及致しません」
「…続きを。」
「軍は必死になってあなた方を捕まえようとした。捕まえたら昇級…給与が増えるという条件まで付けて。でも、あなた方はここにいる。_捕まえられなかったのですよ。彼は元々昇級が決まっていた。なのに、捕まえられなかったせいで昇級がなしになった。元はと言えばあなた方のせいです」
「で、我々を恨んだ犯人はたまたま愛を見つけて銃で撃ったと。」
「ええ」
「おかしいな。あなたの話には不可解な点があるみたいです。」
次回もお楽しみに。