零 13
零 の第十三話です。
「昨日、B地区で『男性が頭から血を流して倒れている』と通報がありました。男性は病院に搬送されましたが、搬送先で死亡が確認されました。男性は手に拳銃を握っており、警察は、自殺と見て調査を進めています。___」
愛を撃った男が自殺した。どうやって牢に拳銃を持ち込んだのか、どうやって愛の情報を手に入れたのか、分からずじまいだった。
愛はとても悔しそうにしていたが、すぐに立ち直った。
「私達のやるべきことはあいつのことを考えることじゃない。この戦争の真相を暴くことだよ」
そう言った直後、ベッドの柵で小指を強打して叫んでいた。
_途中まではかっこよかったよ。
「そういえば零って私のこと前の名前……愛衣音って呼ばないんだね」
ようやく痛みがおさまったらしい愛が話しかけてくる。
「ああ。お前がけじめをつけるために改名したって言うんならそれを邪魔する訳にはいかないからな」
「そっか」
「なんだよ。その引いた反応」
「引いてないし」
「なら良かった」
……………。
気まずい空気を突き破るように俺の携帯の通知音が鳴った。
「おっと、すまん」
携帯の画面を確認する。
「はぁ?」
思わず声が漏れた。
俺の携帯に届いたメールの内容はこうだった。
『前略
愛殿が銃によって撃たれたという事件についてお話がございます。
つきましては、以下の場所へお越しいただくよう、お願いいたします。
草々
記
B地区 15番地 1-13502』
B地区15番地1-13502というと、この辺りでは珍しい高層ビルの13階か。
…なぜ愛の名前と俺のメアドを知っているのだろう。
「どしたの?」
愛が俺の携帯の画面を眺める。
「ふうん」
「このメアドに覚えはあるか?」
「ううん」
「そうか。じゃあ誤送信かイタズラである可能性が高いな」
「う~ん。なんか違う気がする。…ねえ零、ためしにこの場所へ行ってみない?」
「は?」
「もしかしたら、今回の件について何か分かるかも!」
「そんな危険な…!」
「危険かどうかは、行ってみないとわかんないじゃん!」
「それはそうだが、もしも…」
「そんなこと言ってたらきりないじゃん! そんな風に考えすぎて機会を逃すなんて、私は嫌なの!」
愛の話には熱が感じられた。絶対に行くという意思を感じる。
熱量に押されて、結局、メールの場所へ行くことになった。
次回もお楽しみに。